第5話 セレナは仲間になりたそうにこちらを見ている!!
「改めて、ようこそお客人、私は“静謐“の魔女アルウィ……この森の管理者をしております、ごゆっくりとしていってくださいね」
アルウィがお辞儀をするとそれを見たセレナが慌てて母親の真似をする。
二つ名持ち……ということはかなりの位の高い魔女だったのか、戦闘向きではなさそうだが。
「ああ、お言葉に甘えさせてもらう、色々と話を聞きたい」
その後、アルウィの家に1日だけ泊まらせてもらう事になった、どうやら魔道具を作るのが得意な魔女のようで結界やら魔術やらは苦手らしい。
野盗にお願いされたのは、隠れているどんな敵の位置でもわかる魔道具を作れという無茶なお願いだったらしい、野盗が使うわけでも無さそうだし……。
まったく、そんな魔道具を頼んだ奴の顔が見てみたいな。
「そうか……そんな事もあったんだな」
「ええ……あら、もう夜遅くなってしまいましたね、そろそろお眠りになりますか?」
もうそんな時間か、口惜しいが今日はもう寝るか、今日は色々な事があったんだしアルウィにも休息が必要だろう。
俺は案内された部屋に着くとベットにダイブし今日あったことを考えている間に寝てしまった。
目が覚めると朝になっていた。
「ん……もう朝か……昨日は色々あったからな」
「おーい!! ノエル!! 朝だぞ!! 早く降りてこい!!」
まだ覚醒しきっていない頭にセレナの無駄に大きい声が響き渡る、子供は朝から元気だな……。
セレナに返事を返し荷物をまとめて下に降りると、質素ではあったが温かいスープが用意されていた。
「おはよう! いつまで寝ているんだ? ご飯が冷めてしまうだろ!」
「ああ、おはよう、朝から元気で何よりだ」
「おはようございます、昨日はよくお休みになれましたか? 質素ですが朝ご飯を用意しておきましたので、よければご一緒にいかがでしょう?」
「ぜひ、ご一緒させていただくよ」
ご飯を食べ、ついに別れの時間がやってきた。
「では、世話になった、結界も無事に強化できたようだしそろそろお暇させてもらうよ」
朝食を済ませた後アルウィが結界を張り直すと言うのでその手伝いをした、森の各所に魔道具を設置することで結界を強化したのだという。
一応“魔力の聖剣”を使い結界を張る際にアルウィも強化したのでもう結界が破られるなんてことはないはずだ。
「もう行ってしまうのか……? もう少しここに居てもいいんだぞ?」
セレナが俺のマントを掴みながら顔を赤くしそんな事を言ってくる、フッ、可愛いところもあるじゃないか!
ちょっとからかってやろうかどうか迷っているとセレナはとんでもない事を言い出した。
「母上! 私……ノエルに付いていきたいです! 」
…………チョットマテ、セレナは何を言っているんだ!? 冗談じゃないぞ!。
のんびり暮らしたいのに魔女の子供を預かるなんて! 面倒なことにしかならないじゃないか……。
「!!…………そう、あなたもそんな歳なのね……いいわ、あなたが決めた事なら私は応援する」
顔を赤くして俺のマントを離さないセレナの言葉に、何かを察したように穏やかな顔になるアルウィ。
だが、俺の頭の中とは未だに混乱している。
マズイ、この流れはうちの娘をよろしく的な流れだ……何とか阻止しなくては!
「お、おい早まるな、冒険者は危険がいっぱいで…………」
「そ、そんなこと分かっている! それでも私はお前と一緒に旅をしたいんだ! …………だめ…………なのか?」
「ノエルさん…………」
泣きそうなセレナとアルウィが上目遣いでこちらをみてくる。
女の武器をここぞとばかりに使ってきやがったっ!!。
俺はその眼差しに耐えきれなくなり、目を逸らすといつの間にか……。
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「おおー!! これが人間の街か!! この食べ物は何だ!? あ! あっちにも見た事のない食べ物があるぞ!!」
どうしてこうなった…………? なぜかあの後の記憶がない、いやこの状況だ、単純に俺が女の武器に敗北したのだろう。
セレナは街に着くや否や屋台をあちこち見てまわり、見た事がない食べ物に興味を示している、挙げ句の果てには。
「おーい? ノエルどうした? あっちにある屋台の串焼きが美味しそうなんだが…………」
「ああ、美味しそうだな、それよりギルドに報告したいことがあるんだけど?」
俺はとにかく屋台から張り付いて動かない食いしん坊な魔女を、どうにか動かそうと強引に話題を変えようとするが。
「買ってくれないか?」
とうとう直に言いやがった。
「ダメだ、夕食前に…………」
「………………」
強固な意志のもと俺が断ろうとするとセレナは泣きそうにこちらを見つめてきた。
残念だったな!! 俺はもう絶対に女の武器には屈さない!!
「もぐもぐ、やっぱりお前いい奴だな!! この串焼き美味しいぞ! ごちそうさまです」
なんで俺はなぜ、こんなにも意志が弱いのだろうか……この日、女の武器に完全敗北した俺は考えるのを止めた。
落ち込んだ俺は上機嫌のセレナを連れながらギルドへ向かうと。
「兄貴!! アイツです! 俺をやったのは!」
どうやら今日は厄日のようだ、俺はただのんびり暮らしたいだけなのにどうしてこんなことに…………。
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