追放サイドストーリー1
俺たちは気分がよかった、なぜならお荷物でいつも俺に偉そうな口を聞いてくる奴がいなくなったからだ。
でも、ダンジョンの入り口まで戻ろうとするとあり得ないことが起こり始めた。
「何なんだよ! このダンジョンは!? こんな場所にトラップなんてなかったぞ!!? ぐっ……それにさっきから力が入らねぇ……!」
俺がそんなことを言うとカーリアとグランバルドは、情けない声で同じようなことを言ってきた。
「私も何だか魔法の調子が……来るときに魔法を使いすぎたかもしれませんわ……」
「勇者様、俺も身体に力が入りませんいつもはこんなことないのですが……」
クソっ!! 全部あの野郎が悪い! いなくなった後でも俺たちの足を引っ張りやがって!!
結局俺たちはダンジョンを逃げまわり、どうにか入り口の手前まで辿り着いた。
「ハァ……ゲホッ! クソッ!! どうして俺たちがこんなしょぼいダンジョンなんかに……」
来る時はあんなに簡単に来れたじゃねぇかよ!! クソ、クソ、クソ!!。
俺は未だに原因不明のだるさに襲われていた、あの野郎がいなくなってから身体が妙に重く、まるで泥に浸かっているかのように剣が重い。
「勇者様! ご無事ですか!? 我々が付いていながら申し訳ありません!」
「わたくし、もしかしたら杖の調子が悪いのかもしれません……そ、そうですわウィル様! わたくし今度、杖を新調しようと思っていますの! その時に剣も新調してはいかがでしょう!!」
「カーリア殿! 名案です! きっと剣が悪いのです!! そのオリハルコン製の剣は設計ミスなのだと思います!!」
予備に持ってきた剣はここに来る途中で使い果たした……だからとっておきのオリハルコン製の剣を使っている。
そうだ……この剣は重すぎる! 鍛治師の設計ミスだ! 帰ったら父さんに言って鍛治師に文句をつけてやろう!。
「そうだよな? この剣が重すぎる粗悪品だから悪いんだ、物資も使い切ったしとりあえず王都に帰るぞ」
やっと入り口に到達すると俺たちを待っていたのは黒いローブを被ったアサシンだった。
またアサシンかよ、よくもまあ懲りずに何回も来るもんだ、役立たずがいた時も何度も襲ってきやがったが、全て返り討ちにしてやった。
今度はアイツを守りながら戦う必要はない、アイツが死んだら預けたアイテムまで無くなっちまうからな。
「なんだ貴様ら! 勇者様に何度負ければ気が済むのだ!! いい加減しつこいぞ!」
まあいい、ムシャクシャしてたところだ、アイツらをぶっ殺せば少しは落ち着くだろう。
「そうですわ! あなた達! いい加減し……ゴッ!!!」
「ククク、まずは一人だな、あの厄介な荷物持ちはいないようだな? あやつはいつも我らの包囲を崩す絶妙な位置にいたからな!」
なに!! ゴーレムだと!? 地面から……!!。
「カーリア!!」
「……………………」
クソ!! 気を失ってんのか!? ふざけやがって!。
それに厄介な荷物持ちだと? アイツに包囲を崩す能力なんてあるわけねぇだろ! この勘違い野郎どもが!。
「そんな、オモチャで俺たちに敵うと思っているのか! ゴーレム一体ぐらいで勝ち誇ってんじゃねぇ!!」
俺がそう言うとボコボコと周りの地面が盛り上がり複数のゴーレムが出現した。
「勘違いしてもらっては困るな? ゴーレムが一体だけなんて誰が言ったんだ? それに存外、役に立つオモチャだぞ?」
「くそっ!! 勇者様!! 退きましょう!! 今の我々では…………」
グランバルドはさっきまでの余裕な態度はどこに行ったのか、焦った顔で撤退を促してくる。
腑抜けが!! でかい図体で何言ってやがる! この俺がこんな奴ら相手に撤退なんてありえねぇ!!
どうしてこんなタイミングが悪いんだよ! 今まで不意打ちなんて散々見破ってきたのになんで今日に限って……。
「馬鹿にしてんじゃねぇぞ!! この程度のモンスター今まで散々倒してきたんだよ!! オラァ!!」
離れた場所で薄ら笑いを浮かべている黒ローブにイラつきながらゴーレムに切り掛かる。
俺の力とこのオリハルコン製の剣があれば、ゴーレムなんぞいくらでも破壊できる!!。
「!!なっ、なにっ!!? 硬ぇ!! 」
“ガギン”と音が鳴り今まで散々モンスターを切り刻んできた剣が、ビリビリと振動し剣を落としてしまった。
その隙を突かれガラ空きになった俺の身体に“ドゴッ”と音を立ててゴーレムの拳が突き刺さり、地面をえぐりながら遥か後方へ吹き飛ばされた。
「ガハッ!! ゴホッ、ゴホッ!! うっ! ふざけんな……なんでこんなダメージがっ…………!!」
ありえない!! ゴーレムの攻撃で何でこんなダメージを負っているんだ? この前オーガの攻撃を喰らった時だってなんてこと無かったのに!!
グランバルドは何やってやがる!! あのノロマが!!。
「グランバルドッ!! ボサっとしてんじゃねぇ!! はやくゴーレムを何とかしろ!!」
「は、はい!! 勇者様に抗う不届者め!! 消えろ!! ハアッ!!!」
グランバルドが巨大なウォーハンマーを上段に構えながら突進すると。
“ピシッ”という音とともに、ゴーレムの右足に亀裂が走るが破壊するまでには至らなかった。
「何!? 俺の渾身の一撃だったんだぞ!? いつもならゴーレムごと破壊できるのに!!?」
「攻撃の寸前で防護魔法を掛けさせてもらった、こうなってはご自慢の筋肉も意味がないな?」
ちっ、グランバルドの奴、腰がひけてやがる!! じゃなきゃ防護魔法が掛かっていようが掛かっていまいが、ゴーレムを完全に破壊してたはず!!。
クソ!! グランバルドの言う通りここは撤退するしかねぇ! こんな雑魚どもにカーリアがいれば広範囲魔法で一掃できたのに……。
「グランバルド!! カーリアを回収しろ! 撤退するぞ!」
「分かりました!! 勇者様! 」
「簡単に逃げられると思うなよ?」
俺たちは必死で逃げた、迫り来るゴーレムに怯えながら、勇者にあるまじき敗走を。
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