第12話 セレナ……遺伝は絶対じゃないんだ……
「どうしてお前は私を助けてくれたんだ? お前にはなんの利益もないだろう?」
「答えてやってもいいがここで聞いたことはすぐに忘れると約束できるか?」
レーウィンは真面目なトーンで話す俺の言葉にコクリと頷く。
はぁ、こういう事を言うのは柄じゃないんだけどたまにはいいか……。
「困っていただろう? それにお前は今にも泣きそうな顔をしていた……行く宛もなく故郷を追い出されこのままひとりで死んでしまうのかという不安や恐怖もあっただろう?」
「っ!!!?」
「だから助けてやりたいと思った、まあ半分は俺のせいだしな……そんなところだ」
驚いたような顔をしたレーウィンはクスリと笑い。
「そうか、お前は優しいんだな……まるで勇……」
「さあ、もういいだろ? 子守唄はおしまいだ、明日はセレナに叩き起こされるぞ? 早く寝ろ」
レーウィンは何が面白いのかクスクスと笑いながら。
「ああ、わかったよ、おやすみノエル……」
「おやすみ…………」
明日は何のクエストを受けようか考えていたらいつの間にか意識が飛んでいた、また明日も忙しくなるな……。
「どうやら寝たようだな……まったく、この男は普段からこうならいい男なんだけどな」
「なんだ、起きていたのか? 私もこの男のことが少しだけ分かったよ……改めて明日からよろしくな」
「言っておくがお前と私はライバルだ、コイツは私のだからな? まあその前に、一応パーティーメンバーだしよろしくな」
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「おーい! 起きろ! もう朝だぞ!」
「おはよう、セレナ、レーウィン……今日も騒がしい朝だな」
「ノエルの言った通りだ、ここまでとは……」
俺は毎朝セレナの目覚ましコール聞いている内に、だんだん慣れてきてしまった。
耳栓をしたり筆で瞼に目を描いてみたりしたが、全てセレナ看破され叩き起こされて今に至る。
いつも通り元気が有り余っているセレナに起こされて、朝食を散々奢らされる。
「は〜! 食った食った! これで今日も一日やっていけるな!」
自分で年頃の乙女とか言っていたくせに慎ましさの欠片もないしぐさで、腹をポンポンと叩くセレナはまるでおっさんだ。
「よく食べるな……私より食べているじゃないか」
若干引いているレーウィンを気にせずに言葉を続けるセレナ。
「育ち盛りだからな! 母上はあんなにスタイルがいいんだ! 私もそうなるに違いない!!」
胸の前に腹が膨らみそうな生活を送っているセレナに、注意の一つでもしてやった方がいいのだろうか?。
いや、また殴られそうだからやめておこう……。
「さあ! 食べ終わったら今日受けるクエストを探しに行くぞ! 今日はどんな依頼があるんだろうな」
「分かったよ、すぐ食べ終わるから少し待ってろ」
真っ先に食べ終わったセレナに急かされながら俺たちは食事を終わらせ、そそくさとギルドへ向かった。
まったく……セレナの元気というか生き生きとしているのはとてもいいと思うが、こう毎日毎日叩き起こされると流石にツライ。
でも、それを拒否していないあたり、俺も相当毒されているのかもしれないが……。
しかし今日はなんだか街の雰囲気が少し違うような気がする。
何かあったか? いや、ここは魔界から一番離れた街だし、滅多に厄介ごとは起きないはずだ。
などと、これから何か起きるかのような事を考えていたのが悪かった。
ギルドに着くと慌てた様子でギルドマスターが駆け寄り。
「ノエル君!! いいところに来てくれた! 実は魔獣の群れがこの街に向かっていると報告があった」
開口一番にとんでもないことを言うギルドマスター。
「だがそれだけじゃない、群れを率いているのは魔族らしい……」
もうここまで聞いたら面倒な予感しかしない。
この次に言われる事なんて考えるまでもなかった。
「君も一緒に戦ってくれないか? この街の戦力ではとてもじゃないが対処しきれない!」
ほらな、やっぱりこうなった。
だがギルドマスターは予想外のことを言う。
「と、ここまではギルドマスターとしての言葉だ、もちろんこの街には私の家族もいるし君が守ってくれるならこれ以上のことはない」
でもね……とギルドマスターは言葉を続けた。
「君の夢は知っている、邪魔しようとは思わない……ここの戦力では良くて撃退、失敗すればこの街は消えるだろう」
「……少し考えさせてくれ」
そう言い俺は宿屋に戻るためにギルドを後にし、来た道はを戻る。
「どうするつもりだ? なんで考える必要があるんだ?」
「ノエル……」
「決まってんだろ? この街はもうダメだ、だから今のうちに隣の街に逃げるぞ」
俺の言葉が予想外だったのかセレナは一瞬だけ驚いた顔をした後、すぐに目元を釣り上げる。
逆にレーウィンは驚くこともなく少しだけ俯いて少し悲しそうな顔をしていた。
俺がすぐ答えを返さなかったことで俺の意思に気づいていたんだろう。
ギルドマスターも同じだ、あの場で即答しないということは戦う気はないと言っているようなものなのだから。
あの場で唯一セレナだけかこう思っていた、俺がこの街を救うために戦うのだろうと。
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