プロローグ
そこは戦場だった。
血の匂いが充満し怒号が飛び交っている……そんな光景を見るのはもう何度目だろうか。
生まれた時から俺は奴隷で、親の顔も知らずに薄暗い地下室で育った。
俺たちは他の奴隷とは少し違った役割があり、常に戦場に駆り出されていた。
当時は戦時中だったこともあって深刻な兵士不足に悩まされていたイングレイス王国はある戦術を考案した。
それは死んでも困らない奴隷をボロ布一枚と鉄の剣一本だけロクな装備も持たせずに、最前線へと送り込むというもの。
「がはっ!! ノエル……すまない……俺はここまでのようだ……お前は生き残れ……! なにがあっても!」
死んだ、今日まで数々の戦場を共にし同じ場所で飯を食い暮らしてきた、俺たちの兄貴分が。
「うっ!! ここまでみたいね……ノエル……ロクでもない人生だったけど今まで楽しかったわ……私たちの中で一番強い貴方ならきっと生き残れる…………」
死んだ、怪我をした時にいつも手当てをしてくれた姉御肌のエルフが。
倒れた仲間の顔も見れないまま俺は剣を振るう、相手はフルプレートの騎士たち……相手国の精鋭部隊。
鎧の隙間に剣を差し込み殺す、地面に押し倒し喉元にダガーを突き刺し殺す、相手が持っていたメイスで鎧の上から殺す。
「な、なんだ!!? このガキ!! 奴隷のくせに!!? ヒィ!!」
それをただ永遠と繰り返すだけ、仲間の悲鳴が敵の悲鳴に塗りつぶされる。
いつ戦いが終わっていたのかも分からない、ただ俺は死体の山の上に立っていた。
数多の敵を屠ったはずの剣は、刃こぼれこそしていたものの折れることはなかった。
「みんな……? どこだ? 誰もいないのか? 俺だけしか……」
返事はない、みんないなくなった……俺だけを残して。
「…………っ!! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
なぜ叫んだのは分からない、悲しかったのか、怒っていたのか、虚しかったのか。
ただ俺の頬には血ではない何かが流れていた。
スキルが発現したのはきっとこの時だ……戦っている最中か叫んだ直後かは分からないが……。
「強さが……欲しい……もうなにも失わないように……もうこんな思いをしないように……」
これをを最後に長い戦いは終わった。
その後、戦いの戦績を鑑みて、俺は奴隷という立場から解放され自由となった。
それから俺はスキルの効果を知り、強くなるために聖剣を集める旅に出て様々な場所に行った。
高難易度ダンジョンから秘境に至るまで。
「聖剣もかなり集まったな!」
旅に出て数年が経った頃には、この世の聖剣や魔剣を大量に集め新しい夢もできた。
「今まで、聖剣集めに集中していたからな……そろそろ仲間でも作って田舎でのんびり暮らしたいところだが」
薄暗い地下室と戦場しか知らなかった俺がのんびり暮らしたい、と思うのはおかしなことではないだろう。
だがそんな矢先に勇者にスカウトされほぼ強制的に旅に出ることになってしまう。
これはのんびり暮らしたいだけの少年がクセの強い仲間と出会い、全然のんびり暮らせないというだけの物語。
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