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桃髪の暗殺者  作者: 村山龍香
#20 殺し屋の美学
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54.辻斬り

某日、如月神社。

普段は神職としての務めを果たすはずの如月姉妹は、社務所…それどころか地下室からも出てこずに神妙な面持ちで話し合いをしていた。

「ここ数日のうちの刀で斬られた死体が転がってるって話だけど、龍香じゃねえよなぁ?」

「龍香があんな雑な仕事するわけないだろうよ。そもそもあんな辻斬りみたいな真似する奴に私が刀売ると思うか?刀もバッタものだ、誰が何の目的でやってるのかはわからないがな」

「だよなぁ。うちらの刀のブランド下げる行為はやめてもらいたいもんだぜ。しかし犯人探そうったってうちらの調査力じゃあ鬼さん現行犯で捕まえねえ限りは時間の無駄だし…」

「…悩んでも仕方ないだろう。桜花、龍香に連絡しろ。この手の仕事はあいつに頼むしかない。」

「やってくれるのか?」

「あいつほどの腕ある知り合いが他にいるか?」


「はい、村山警備~んあ?桜花か?」

『龍二かい?悪いが今日はあんたじゃ話にならんのだわ、龍香に変わってくれい』

「あ~?例の辻斬りの話?」

『そうだから変われっつってんだよあんたじゃ話にならねえんだ』

その後、龍二が龍香に声をかけるのも待たず電話は龍香に変わる。すさまじい拳骨の音が響いたことは電話越しにもわかり、思わず桜花は吹き出す。

「痛ぇ~」

「はい、代わりました村山です。失礼いたしました。」

『お前ホント客相手だと態度変わるんだな。』

「要件を率直にお伝えください。」

『あーまあわかったよ。犯人探しとキルだ。』

「…承知しました。本日午後10時以降に事務所に舞花と二人でお越しください。」


夜10時。舞花と桜花の二人は龍香達の事務所に着いた。

「お待ちしておりました。まずは銃は預かるように…って銃持ってないですよね」

「ああ。あんなもんうちらが仕事もなく持ち歩くものじゃないからな。」

「一応ボディチェックもな」

と龍二が口を挟むが、その場にいた三人全員に蹴りか拳骨を入れられ蹲る。

「何してるの!やるにしても私がやるからいいの!」

「触るな馬鹿者が」

「おめぇ触る必要ねえだろうが変態か!?」

「真希、そこの馬鹿はとりあえずそこ置いといていいから上げてやってくれ。武器持ってないことは信用する。」

事務所の奥から龍香の声が届き、促された通りに舞花と桜花を事務所の応接机に通す。薄暗い部屋の中に一人座っていた。桜花は、龍香とは付き合いが長くありながら実際に人を斬る龍香の姿は見たことがあっても殺し屋として仕事を受ける龍香の姿を見たことはなかった。

「…こいつ本当に龍香か?」

「龍香だよ、安心しろ。悪いね忙しい中。ところで煙草吸いたいんだけど部屋どこだっけ?」

「…社交辞令は結構ですので奥で話は伺います。こちらへ」

親指で殺害依頼を受ける際の奥の部屋へと舞花達を案内する。刀を握っているわけでもないのに見せる龍香の鋭く冷徹な目つきを初めて目の当たりにする桜花は、別人に触れているかのような違和感をぬぐえなかった。

「マジで別人みたいだな」

「要件を伺います。事情もできるだけ詳細にお願いいたします」

桜花を制し、舞花が喋りだす。

「お前の事だろうから把握してるかもしれんがこの街で私の刀を使ってるらしい辻斬りがいる。そんな奴に私は刀を作る訳がないし迷惑極まりない。率直に言うとそいつを殺してもらいたい。私達の能力では犯人の特定が難しくてな。」

「承知しました。受けるつもりでこちらは準備していたので契約書は用意しています。こちらの額で承ります。」


「随分すぐ話纏めましたね」

「あんな事しといて私が知らねえわけねえだろう。依頼なんか来なくても最初から探し出して殺す気だったからな。シェリル!辻斬りの発生場所は纏まったか?」

最初から龍香にこき使われてたらしいシェリルがパソコンから目を離す。結構な長い間調べていたらしく、その目には隈ができていた。

「徹夜してるんだけど寝ていいかしら?完全に辻斬りね、身元はみんなバラバラ、怪我はみんな刀傷。日本刀を使ってるのは間違いないけど…」

「ほいよ。とりあえず被害者の所属とかまとめて舞花に見てもらってくれ。見せるのは私がやるから纏まったら寝ていいぞ。」

「はーい。残業代は出ないのかしら?」

「うちに労働基準法が適用されてると思ってんじゃねえよ。代わりにオフは仕事が手薄なら好きな時にくれてやってんだろ」

「冗談よ。終わったら寝させてもらうわ」

そう言うとシェリルはすぐさま寝室に向かう。その一方で、龍香はまとめた資料に向けて鋭い目を向ける。

「辻斬り野郎が。必ず始末してやるからな」

「姐さん?」

「何度も言わせるな。人斬りってのは人間捨てた奴以外にはやっちゃいけねえんだよ。例えそれがヤクザであってもな。」

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