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桃髪の暗殺者  作者: 村山龍香
#18 火野凛
49/54

48.立ち回り

某日深夜、村山警備裏事務所。

「...なるほど」

「終わった後の後始末はこちらで請け負う、しかしそれを専門にしてる人間がいない」

「そこは私共の方から優秀な掃除屋を出しましょう。その分の依頼金は追加でいただきますが」

「それならありがたい。指南だけでもできる人間がいれば違う」

この日に舞い込んできた依頼は、店舗ぐるみで上納金に手をつけたキャバクラの経営陣及び便乗して同様に上納金の横領を行ったコンパニオンの粛清であった。店ごと切り捨て、残った人間は働き口の消失を理由に他店に案内。店にいる人間は龍香に始末してもらいその他散り散りになった残党は自分の組員に向かわせ別個始末するという内容だった。


一方、宝星街警察。

「桐島くん、ちょっといいかな?」

「はい」

「C号のこの店がきな臭いという情報が入ってな、潜入して調べてもらえんかな。新しい相棒も一緒に付けていく」

相棒、という言葉に誠一は顔を歪ませる。彼が組織犯罪対策部に入ってからはじめてついた相棒、そして後輩は1度存在を家族ごと消されている。

証拠は何も無いし死体すら見つからないような状態ではあるが、普段顔を合わせる人間によって跡形もなく。

「...気持ちはわかるがここで働く上での心構えがわかってる人間は君しかいないんだ。来てくれ」

そう呼ばれると、ここ数日で新しくこの署に配属されたというスポーティーな短髪に凛とした目を持つ美しい女性警察官が誠一の元に歩みよる。

「桐島誠一警部補。本日より貴方と共にこちらの組織犯罪対策部で公務にあたらせていただきます火野凛と申します。」

「...よろしく。俺から言うことは一つだ」

その台詞は、この街の堅気の人間で誰よりも長く密接にこの街の暴力団の人間に触れ続けてきた者として新しくここに来る人間にも共に職務に当たる人間にも必ず送る台詞。

住む世界の違う人間の法に深く触れるな、と。


日を跨いで場所は戻り村山警備裏事務所。

久しぶりの龍香と真希の2人だけの仕事ということもあり、真希の気合いは証拠隠滅の指南だけではありつつかなり違っていた。一方龍香はそこまでの意識はなく、普段通りの調子で仕事の算段を立てる。1人暇な龍二は事務所の普段龍香が行っている表裏両方の帳簿の精算を代行で行っており、シェリルが目標(ターゲット)の店の内情を潜入して調査している。

「久しぶりですね、2人で一緒に仕事するの」

「まぁお前は面白くもねえだろうが証拠隠滅の指南だけだな。...シェリル、お相手さんの内情はどうだ」

「これは確かに貴女が一人で頑張った方がよさそうねえ。シノギちょろまかしてるの追求されるの避けたいのか自分のツテで集められる護衛の組員集結させてるみたい。多分貴女からしたら」

「まぁ問題ねえだろう。そんな下っ端の用心棒何人いたって変わりゃしねえ」

「そう言うと思った。まぁ私の仕事は目標の調査よね?」

「ああ。目の下見る辺りにどうせまた徹夜だろ、ちゃんと寝とけ。私らだって夜出張った時は翌日は殆ど寝てんだ」

「そういうところちゃんと管理してくれるのありがたいわ。おやすみ」

かなり眠たそうにノートパソコンを叩いていたシェリルは調査内容の報告が終わるとすぐ様自室に向けて歩みを進める。鍵をかけると服を着替えることすらせずベッドに身を沈め眠りに落ちた。

龍香が先を行き、真希がクライアントの組員と共にその後の後始末を行う。先立つ龍香は英気を養うためにその場で仮眠を取り始めた。


その夜、件の店の前。

誠一と凛の2人が張り込みに来ていた。

この街で10年以上組織犯罪対策部の部員として公務にあたっていた誠一は、凛にこの街の暴力団との関わり方を説いていた。

「...あくまで必要悪だと考えてるんですね、警察官なのに」

「必要悪じゃねえ、この世の中悪人しか生きていけない世界と善人しか生きていけない世界の2つがあるんだ。俺達の仕事はその善人の世界を守ることだ」

その話をしている最中。凛が監視に回っていた店の見張りに見つかった。

よりによってスーツスカートの姿であった凛は逃げることもできずすぐさま確保されてしまう。逆らうわけにもいかず、誠一も手を挙げ、大人しくついていく。


「チッ、捕まっちまったか…」

「申し訳ないです」

「捕まっちまったもんは仕方ねえ、どうにかして脱出の方法を…」

と誠一と凛が会話していた時。監禁部屋の外から叫び声が聞こえてきた。どうやら店に上がり込んできた人間がいるようで、その人間に対する武力行使を行っていることが伺える声であった。

しかし、その声はやまない。…相当な手練れが入ってきたことは疑いようがなかった。

やがて、監禁部屋のドアが荒々しく開けられる。鍵などを持たず、力で無理矢理開けたことは明白な音であった。そして入ってきた人間は、桃色のセミロングの髪に赤と青のオッドアイ、そして黒いシャツのスーツジャケット姿の日本刀を左手に持った女。その姿を、誠一が見間違うはずもない。その女は村山龍香だった。

「龍香…」

「あんた、こんなところで女と遊んで何やってやがるんだ?…冗談はまあいい、大方ここのアンポンタン共にその連れの女がスカートなんざ穿いてるせいでまともに動けなくて捕まって一緒に馬鹿正直に監禁されてたってところだろう。…普段のよしみだ、私が今から言う条件をのむなら助けてやる」

「どんな条件だ、って聞くまでもねえだろう。今から行う不法行為を身の安全が確実になるまで全部見逃せってところだろうな」

「察しがよくて助かるな、その通りだ。まあその条件が飲めないなら」

そこで一度言葉を切り、先程まで人を斬っていたことは想像に難くない烏の絵の彫り込まれた刀の半身を抜く。その圧は、殺意を感じぬまでも圧倒的。

「この場であんたらも死ぬだけだ。そうして中途半端に助けてどうにもならなくなった連中を見てきてるんだ、一思いに逝かせてやる。どっちがいいか考えろ」

「このっ」

「やめろ、こいつは逆らってどうにかなる相手じゃない」

凛は異を唱えようとするが、誠一はすぐさま制止し龍香に応える。どの道、彼女を許さないと言ったところでこの場で官憲の力が機能することがないことも無事に助かる手段などないことも誠一にはわかっていた。

「今すぐに二人まとめて斬られるか助けてもらうか考えろって事だろう、考えようがない。いいだろう、助けてくれ」

「物わかりのいい奴で助かる。そうだ、誠一はわかってるだろうがそこの女」

刀を納め、目線は凛には見えない。しかし、それでもわかる。

彼女の目力が、今まで出会ってきた人間のそれを確実に上回る圧倒的な圧を出していることに。

「無事に助かりたいのなら、ここから逃げ出すまで私から絶対に離れるなよ」


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