45.勉強会
某日、村山警備裏事務所。
事務仕事などするはずのない真希が事務所でペンを持ち、書物に相対していた。
「…龍香さ~ん!わからないです!」
「なんでこんなもんもわかんねえんだ馬鹿」
そう、彼女は高校生の教育内容を教わっていた。数学、理科系の基礎科目を龍香が、政治経済などの文系科目を龍二が担当し彼女に勉強を教えている。
「英語は教えないのねそう言えば」
「お前いりゃ十分だろうが。戦えない分その手の貢献はちゃんとしやがれ」
しかし、龍二と真希には共通の疑問がある。高校生までの水準であれば高い学力を保っていた龍二はともかく、龍香は真希と同じく高校には入学すらしていない。にも関わらず彼女は殆ど迷いなく真希に数学や物理などの学問を教えており理解度もそれなりに高いのである。
「そういえば気になってたんすけど、なんで姐さんってちゃんと高校生の学問とかちゃんと教えられるんすか?」
「バカに会社の社長なんて務まるかよ、表側の警備会社をちゃんと運営するのに金回りの法律覚えなきゃできねえだろうが。それに銃刀法とか麻薬取締法みたいな私らがちゃんと覚えてねえと面倒事になる法律だってある、必要あったから一門出る前に一二年で全部独学で勉強して覚えたんだよ。それに今更言っても仕方ねえから言わねえだけで中学時代は常に学年上位層だったからな」
「ええ?それじゃ有名だったんじゃ」
「有名だったぞ。ろくに学校も行かねえのにちゃんと勉強はできてたから何かとやっかまれて絡まれてたがな」
「どうしてたんすか?」
「中二の時にクラスで一番偉そうにしてたカスの爪全部剝いでやったらそれ以降一度も絡まれなくなった。喧嘩の必須技だろうよ一番偉そうなやつをぶっ叩くなんぞ」
真顔で普通の人間が言っていれば冷笑されるようなことを言う龍香であったが、この人なら実際にやったのだろうと納得してしまう。それに、中学時代の彼女は既に暴行どころか殺人まで犯している。
「というか高校まではエリートコースだったお前がなんで私より数学できないんだよ。本来ちゃんとある程度学問修めてるお前が全科目教えりゃいいんだぞ」
「言い返せないっすねえ、俺が知りたいっすよ」
一方で、ドリルと睨み合いを続ける真希は時間が来ると匙を投げてしまう。
彼女は勉強が苦手であった。
「わかんないですよ〜!」
「...まだまだ時間かかりそうだなこりゃあ。」
時間まで考えることを放棄しなかったため、そこまで厳しく怒ることはしなかったが覚えの悪さには頭を抱えるのであった。




