26.とある日の境内裏
某日如月神社。
神社の後ろで一人の巫女が仕事の合間、というか掃除をほったらかして煙草を吸っていた。
「なんでこんな汚いんだよ。煙草の一本位あってもバレねえだろ…」
「おい、何掃除サボってんだボケナス」
「み、巫女長!?…なんだよ龍香かよ!ビビらせんな馬鹿!」
舞花に用があって来たらしい龍香が舞花の声真似をして煙草をふかしていた桜花に声をかけ、かなり似ていたためか桜花は反射的に背筋を伸ばしていた。しかし、ここまで驚くとは思っていなかった龍香は面白がるを通り越し目を丸くしてしまう。
「あいつがボケナスなんて言うわけねえだろ。なんでそんなビビってんだ」
「マジで境内にヤニカス捨ててんのバレたら何されっかわかんねえんだからそりゃ驚くよ馬鹿!普段どういう仕置き食らってっか知らねえわけじゃねえだろ?」
「いや、ならやるなよ。仕事終わってからヤニでも博打でもすりゃいいじゃねえか」
「馬鹿野郎!12時間もヤニ吸わねえで耐えれるわけねえだろ!」
「巫女辞めちまえよもう。つーかお前まだマルメンなんてガキが吸うもん吸ってんのか。」
「ラキストなんてくせえだけのもん吸ってる奴にメンソールこき下ろされたくねえよ。しかもなに吸ってんだよお前」
「4時間も煙草吸わねえの耐えれねえもんでな。大体私は舞花に用があって来たのの合間だ。サボって吸ってる奴に言われたかねえな」
そうして、無言のまま何分かが過ぎる。ちょっと一本と言いつつ何本も桜花がしゃがみこんで煙草を吸っていると桜花が恐れていた事態が起きてしまった。
「おーうーかァ?お前掃除してるのに境内にいねえなって思ったら裏で煙草ふかすわ捨てるわ随分やりたい放題だなぁ?」
「み、巫女長!いや、これは龍香が」
「龍香がどうしたんだよバカタレが!しかも落ちてるの全部マルボロじゃないか!あいつはラッキーストライクしか吸わないだろうが!」
「えっ!?」
そういうと舞花の気配を察知してそそくさと煙草を自身が持つポケット灰皿に廃棄していた龍香は社務所に向かっており、あまりの勘の良さと手際の良さにあっけにとられてしまう。
「灰皿ないことを予想しといてポケ灰持つなんて今時の喫煙者の常識だ。歩いて吸うわ地面に捨てるわのカス共のせいで固定灰皿減って困ってんだよ、お前も持っとけ」
「お、お前~!!」
「いいからちょっとこっち来い!お前はちょっと説教だ!」
「うわー!!助けてくれぇー!!」
「だからテメェ助けて何の得があんだよ。やるんならもっとうまくやれっての。」
そうして舞花が桜花を地下室に軟禁した後に用事を済ませて龍香は事務所へ帰って行った。
事務所に戻った龍香は勿論このことをすぐ全員に話す。面白おかしく笑えることは、彼女たちにとっては重要なのだ。
「まあ、ってことがあったんだ」
「相変わらずですね、桜花さん」
「こっちもあっちもデカブツは単細胞なのね。うちのは馬鹿じゃないはずなんだけど」
「あーデカブツで思い出した。おい龍二、お前また私の赤ラキ盗んだだろ。返せっていうかアメスピカートンで買っとけよお前もう」
「あーすんません買っときました」
「それ青ラキじゃねえかボケがよ!」
こちらはこちらで、強烈な蹴りが巨躯の人間に見舞われることになったのだった。




