25.力比べ
ある日。裏事務所では三人が腕相撲を行っていた。
「ふんだるぁー!ガハハ俺最強ー!!」
「そりゃああんた男な上に用心棒なんだから私と真希よりは強いでしょうよ…」
いきがる龍二と惨敗し意気消沈している真希、結果が見えてながらも一応勝負したシェリルの3人が事務所で盛りあがっていた。部屋で寝転がり休んでいた龍香が部屋から出てきた。自身の信頼に影響のないところではとことんいい加減な彼女らしく、黒いシャツ1枚で下は下着を履いているのみで短パンも履いていなかった。
「うるせえなお前ら。二徹して眠いから寝かせろ」
「あ、姐さん申し訳な...ってなんつー格好で出てきてんすか!服着てください!」
「あー?パンツなんか見られたって布地減るわけじゃねえだろ。とにかくもう少し静かにやれ。私は眠いんだ。」
「龍香さんも腕相撲しませんか?」
「あー明日付き合ってやる。とにかく寝かせろ。これ以上引き止めたら腕ぶち折るからな。」
特に恥ずかしげもなく部屋に戻っていき、部屋に鍵がかかる。
「あー目に毒だ。この事務所に男いるっての忘れてねえか姐さん」
「まぁでも下着は付けてるだけマシじゃないかな?夏にエアコン壊れたか何かで起こしに行ったら全裸で寝てたことあったし」
「まぁ確かにこんな暴力団関係の事務所で男が1人ってのも中々珍しいわよねえ。気にしたこと無かったけれどよくよく考えたらかなり珍しい環境にいるわね」
どのみち、当の仕事を振る龍香が寝ている以上現在の持ち仕事を雑務含めて終えている三人は電話がかからない限りやることはない。腕相撲に飽きた三人は適当にボードゲームを行い夜には眠りについた。
翌日。特に電話もかかってこず、普段通り時間に四人は起きてきた。
「腕相撲やるんですか?」
「あー眠いから適当に付き合ってやるって言ったやつか。やってやるけど龍二だけな。」
2人が全く歯が立たなかった大男のみ対戦が許され、最初に提案した真希の顔には疑問符が浮かぶ。しかし、対戦光景を見て、すぐさま納得することとなった。
「んぎぎぎぎぎぎ」
「お前ちゃんとトレーニングしてんのかよ。喧嘩が仕事なんだからもう少しちゃんとやれや」
相手の大男に苦言を呈すとさっさと倒し切り、遊びは終わりとばかりに普段自分が座る椅子に戻る。華奢な見た目とは反した凄まじい腕力に真希もシェリルも目を丸くしていた。
「りゅ、龍香さん?接待してもらいました?」
「あー?ガチに決まってんだろ。刀だって軽かねえんだぞ、多少は腕の力なくてどうすんだ。んで龍二はてめえ私に負けててどうすんだ。もう少しトレーニングしろ。」
言われてみて龍香が刀を振るう姿を見たことがある二人は二人とも納得する。言われてみれば龍香はそれなりに重量のある打刀を自在に操る、それどころか相手の回避をも許さない圧倒的な速度での抜刀速度をもってして直接的に戦う際も相手を圧倒している。
「でも、女性ですよね?」
「お前は馬鹿か。信頼を得るには腕か頭が冴えてることがマストなんだよ。そこにタマついてるかついてねえかなんか関係あるか。」
自身の腕で三人の社員に一定の信頼を置かせているその女の言う言葉には、特に自身で仕事を得ているわけではない真希には重く響くものだった。




