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桃髪の暗殺者  作者: 村山龍香
#4 赤髪の技術屋
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10.偽りの貨幣と赤髪の女

某日、如月神社。

本殿の中では神の領域にあるまじき行為が行われていた。

「6の目だ。日頃の行いの天罰だ早く振れ龍香」

「どの口で私にバチ当たるとか言ってんだ。バチが当たるのはお前だろこんな所で賭博とかよ。...456だ。5000円張ってるから親のお前の2倍払いで1万円。成程、神は見てるかもしれねえな」

「がァァァ!なんだよなんだよふざけてやがんな」

龍香と桜花は賽子賭博、チンチロリンをやっていた。ルールが簡潔、2人でやればお互い大体損も得もしない結果になるこの賭博は賭博好きの2人としては揉め事にもならず好んでいる。しかし、今日は龍香が優勢であった。

そんな中、外国人の女が走りながら境内に入り込む。走って一等であるならば福が訪れるなどとも神社では謳っておらず、参拝客にも見えなかった。大体、如月神社は外国人が観光で来るような神社でもない。

「参拝客が珍しく来てるみたいだな。相手してやれよ」

「参拝客が駆け込みながら来るような神社かよここが。賽子一個ずつ振って目で負けた方が行こうぜ」

そしてお互いに賽子を投じる。龍香が5、桜花が3。

「チッ、行ってくるか。あー営業時間外だよ。ノンビジネスアワーズとか言ったほうがいいか?」

「Help me!I'm being chased!」

「日本語喋れボケ!わかる訳ねえだろうが!」

巫女とは到底思えない乱雑な喋り口で外国人の女に対応する桜花の怒りはその女からすぐさま別の方角へ行く。響き渡る銃声は、本殿にいる女たちを怒らせるには十分なものであった。

「やめろやめろ!この神社は普通の神社じゃないんだ!もう取り返しがつかねえぞ!」

銃声の方角から男の内の1人が発砲した男を止めようとしていたようだが、男の言う通りすでに遅い。寝かせていた黒烏を龍香から即座に受け取った桜花が既に抜刀し、龍香も闇烏の布を解いていた。

「神聖な本殿に何鉛玉ぶち込んでやがんだタコ助どもがァァァ!!ぶっ殺すぞゴラァ!!」

「桜花!どけ!お前も風穴開くぞ!」

怒りながらも冷静に桜花は導線をずらす、ずれたその上に龍香はまず拳銃で相手の拳銃の持ち手を冷静に狙う。一点の誤りもなく全て当たり、拳銃を持つ男を無力化した。

「あの辻斬りまでいやがるのかよ…!待ってくれ!今赤髪の女が入ってきただろ!そいつの身柄を寄越してくれればいいんだ!」

止めた男が二人に対してそういうが、勿論事情を飲み込む前に喧嘩を売られた二人が応じるはずもない。

「銃弾ぶち込んでなきゃ話聞いてやってもよかったんだけどなァ?」

「あんなナメた真似しといてはいそうですかで通用するかってんだよ!!」

当然の如く二人の怒りを買い更に攻撃される。

「ああ、ダメだ!帰るぞ!このままじゃ皆殺しにされる!」

二人の怒りを収めることを放棄した男たちは引き下がった。怒り心頭で本殿に桜花達が戻ると、喧嘩を売られたわけではないがこれまた怒り心頭で待ち構えていた人間が一人いた。

「桜花!ここで酒を飲むなって何度言ったらわかるんだ!!」

「あっ、いや巫女長これは」

「しかもお前更にここで博打までしてやがったな!!後で覚えとけよ!!」

そこで一度切ると、銃声は聞こえていたらしく龍香に今度は向きなおす。

「で、銃声が聞こえたから来て見りゃ本殿にも傷が入ってるし石畳にも血が着いた。修繕代は誰もちだい?」

「血が着いてるのは私の落ち度だから石畳の清掃は真希と私で責任持ってやるよ。それまでは立入禁止にしといてくれ。で、本殿の傷はそこの赤髪に請求してくれ。火種はそいつだ。」


そうすると、座布団が四つ並べられ赤髪の女、龍香、桜花、舞花の四人が円を囲むように座る。

「…申し訳ないわね。ここの修繕費は責任もって払うわ」

「日本語喋れるじゃねえか。」

「慌ててたから世界的には一番通じる人間の多い英語を選んだんだけど失敗だったわ。最初から日本語使うべきだった。私の名前はシェリル=コンスタンティウス。一応日本人の血も1/4は入ってる所謂クォーターって奴ね。」

龍香が核心を鋭く突く。面倒事は嫌いな彼女らしく、直接的な聞き方だった。

「聞きたいことは色々あるがとりあえずこれだ。お前、堅気の人間じゃねえだろ。ここが反社とつるんでる神社で武器を持ってたり巫女が荒事に慣れてたりするのを知らねえで警察を無視してここに来るわけがねえ。真っ当な人間なら神社なんか寄らず交番に行くはずだ。それにお前、肩がけの鞄かけてる訳でもねえのに服の左肩が随分低いな。拳銃持ってやがんだろ。おまけに銃撃戦になってもうちらが刀抜いてもひとつも驚かねえし。物損も起こしてんだし隠し事しねえで全部吐きな。ポリ公なんかに何正直に言ったって言わねえからよ。」

「まだほとんど喋ってないのに随分勘がいいのね。まぁええ、その通りよ。私は中東やアメリカのマフィア、日本で言うところのヤクザをしてるわ。...してたか。ちょっとコミュニティのクソ野郎に偽札をばらまいたりとか頼まれてね。一般の世界に影響の出るマフィアなんて三流もいい所じゃない?意見が食い違って偽札のデータ全部持ち逃げしたらこうなっちゃってね。データ持ってる私が日本の奴らの支部に追われてるってわけ。」

「私らのことも知らねえ下っ端ならそんなたいした組じゃねえな。あんた多分技術屋だろう、そんなのを雇い直せず目の色変えて追っかけるレベルならうちの事務所の人間だけで何とかなるだろう...商談は事務所でしよう、一緒に来い。あれだけ痛い目見て直ぐに追いかけてくることは無いだろう。」

「おう龍香!私も」

そういう桜花を舞花が逃すわけが無い。

「桜花、逃がすと思ってるか?別にお務めでなきゃ何も言わないけどお務めの最中に賭博とはいい度胸だ。ちーとばかし灸を据えてやるから今日は覚悟しろよ」

「待って今日3万も負けてんだ!そんなのあんまりだ舞花!」

「うるさい!神聖な本殿で酒飲んで賭博してるからだ!とりあえず地下室来い!」

「龍香ァ〜助けてくれ〜!!」

勿論、乗ったとはいえ自業自得であることは龍香には分かっている。自分の体の3分の2ほどの姉に引きずられていく桜花を冷たく見送るだけであった。

「お前助けても一文の足しにもならねえだろうが。公私混同をこれを機に改めんだな。」


「で、連れてきたってわけですか。お前さん、いくら出せる?」

「米ドルでもいいかしら?一人頭2万ドルでどう?」

そういうシェリルと名乗った女に嘘はない。即金で6万ドルを用意し、真希と龍二を驚かせる。

「日本円の方が話は早いんだが持ってないのか?」

「最低限しか持ってないわ。日本で永住するつもりないし、今の為替相場なら米ドルの方が貴女達的には収益になるんじゃないかしら。手数料かかるしそんな一気には取り替えられないけれど。」

本当に6万ドルの札束を出すが、龍香は制止する。

「いや、4万ドルでいい。こいつらの分の賃金とるのは気が引けるから4万ドルだ。で、その上で私の出す条件を飲むなら奴らの撃退を引き受けてやる。」

「条件とは?」

「簡単だ。うちで働け。6万ドルもあっさり出せるような裏の技術屋ならあそこまで血眼になることも頷ける。それに私らも基本的には表の人間に悪影響が出るような稼業はしない。お互いにとって悪くないだろう」

「へえ。いいけれど。待遇はどうなるのかしら」

「こいつらと同額の給料だ。個人的な仕事は私のピンハネなしで全額持って行っていい。偽装書類は手前で作れ。どうせ不法入国と米基地だかなんか経由したインチキ調達の銃の不法所持だろ。それができんならビザのでっち上げ位できるだろう。」

6万ドル以上に龍香の話題転換の方向に二人は驚きを隠せなかった。急に来た客を雇い入れることを提案し、自分の利益を捨ててその女の身の安全を守ることを了承する。事務所の人間が龍香含めて3人ともサイバーセキュリティに強くないことやそう言った人材を裏社会のはぐれ者から求めていたのが事実だとしても、いくらなんでも急すぎるし何より龍香本人への利益が乏しすぎるおかしな話であった。

「どういうつもりなんですか?」

「ああ?あいつ雇い入れる話か?そりゃおかしいと思うよな、あんなわけわかんねえ突然来たハッカー急に雇うなんてな。猫が来たと思ったら女狐だったから引き入れちまった方がいいって話だよ、簡単だ。」

そういうと龍香は話を一度切り、煙草に火をつける。

「実は龍一さんがどこから出かわからねえ滅茶苦茶高精度な偽札の出所を知りたがっている。表の世界に流出すると裏の物価に関わるからな。その生産者はたまたまうちが知っていてたまたまそれを頼まれたうちの技術員だった。そこに表の世界で偽札をばらまこうとした馬糞野郎が火中の栗を拾いに飛び込んで大火傷、その謝礼を私は貰う。…どうだ?こんな偶然で儲かったら恩は返せるし最高じゃねえか?もちろん私がもらう報酬額はドル換算3万ドル以上。」

そんな馬鹿な、と思う真希であったがその真希を後ろ目に龍香は携帯を取り出し電話をかける。彼女が自分から電話をかける相手などそうはいない。

『龍香か、お前から電話をかけてくるとは珍しいな』

「龍一さん、そちらで探してる偽札の出所掴みましたよ。私らの事も知らない場末の輩片づけたら久々に一門の事務所でお話ししましょう」

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