表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カノジョは、別れさせ屋。  作者: 原田孝之
1/19

プロローグ

本作は別れさせ屋という仕事を題材としておりますが、すべてフィクションであり、現実では学生が依頼することは基本できません。

また、グレーな職種であることは否定できず、色々な面から利用についても推奨することはできません。

その辺りを念頭に置き、あくまでも物語上の話として楽しんでいただけるよう切にお願い申し上げます。


 世の中には、二種類の人間がいる。


 それはたぶん、誰しもがどこかで聞いた文言で、誰しもが一度は考えたことあるテーマだと思う。


 勉強のできる奴とか、できない奴とか。

 運動のできる奴とか、できない奴とか。


 陽キャだとか、陰キャだとか。


 大抵はその後、努力で人は変われると続く。まるっきり嘘ってことはないんだろう。けれど、本当にそれだけか? とときどき言い返したくなる。


 その最たる例が、顔面偏差値だ。

 だってそうだろう。そうじゃなきゃ、ただしイケメンに限るなんて言葉、生まれないだろうに。


 道を踏み外したのは、そんなことを考えだしてからだった。


 陽キャに憧れたのは小学生まで。いつしか陰キャの誇りを忘れ、斜に構えながら「陽キャなんて死ねばいい」なんて尖っていた中学時代も終わってしまった。


 そして気づけば、すべてを諦めて無気力になっていた。


 最初は一軍に混ざりながら、ときには二軍、三軍にからむ一、五軍。それがいつしか、誰からも相手にされない半端者だ。


 一軍には「キョロ充ぼっち」と馬鹿にされ、二軍、三軍には「おこぼれを狙うハイエナ」と馬鹿にされている。

 それを知っていて、けど変えられなかったのはちっぽけなプライドだ。

 それがいつしか、染みついた汚れのようにこびりつくだけなのだとしても。


 陽キャでも、陰キャでもない。


 コミュ力もない、友達もいない、彼女もいない。

 将来の夢なんて欠片もなければ、趣味もなくて、ついでに期待されることもない。

 やらなきゃいけないこともなくて、やりたいこともない。


 なくて、なしで、ないない尽くしで。


 そんなキングオブ底辺、カスの中のカス――「無キャ」が、自分、筵田喜一郎に冠された称号だ。


 だから、その少女に声をかけられたとき、喜一郎はとっさに反応できなかった。

 いつもなら「あ、ああ。邪魔したな」とそそくさ退散するのに。

 その少女は、隣の幼馴染ではなく、こちらを見ながら恥ずかしそうに目を伏せたのだから。


「え、えっと。その、なんか、用?」


 ああ、馬鹿かオレは。そんな風に毒付くのも一瞬だ。

 少女の黒髪が春風にあおられる。

 それだけで、彼女から目が離せなくなった。


「あの」


 震える彼女の膝をみて緊張感が高まる。

 唾を飲み込んだ音でさえ、今はシンバルのように鳴り響く。

 意を決したように、少女はきつく結ばれていた唇を開いた。


「筵田くん。私と、付き合ってくれませんか」


 何かが始まるんだと、期待した。

 それこそ、大きな間違いだというのに。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ