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童話類

思いを籠めたはなむけを

掲載日:2022/04/10




 新学期が始まった。


 転校した僕はクラスでいろんな子と会話する。

 前の学校のこと、好きな食べ物、苦手な教科、いろんなことを話す。

 この学校のこと、町の特徴、遊ぶところ、いろんなことを教えてもらう。

 新しく知ることだらけのこの町で、新しい家に僕は帰る。


「メールとかパソコンでやり取りできるから」

 そういって別れたものの、やっぱり寂しさは感じている。

「文字や声も良いけど、ちゃんと会って会って会話できたらな……」

 遠い場所にいる友達と連絡を取り合う。

 新しくできた友達からも連絡が来て、目を回すほどに忙しさを覚えた。


 そんな中、部屋の花瓶が目に入る。

 前の学校でもらった花束が、彩り豊かな花々が、僕の気持ちを染め上げる。

「水、足そうかな」

 僕はひとり呟くと、ゆっくりと階段を下りる。


 キッチンでコップに水を汲む。

 コップの水に僕の顔が映る。

 ゆらゆら揺れる水面の波を僕はじっと見つめていた。


「どうしたの?」

「花瓶に水を足そうと思って」

 話しかけてきた母を見て僕は答える。

「大切にしてるのね」

「うん。みんなからもらった花だから」

 またコップに目を戻す。水を少し入れすぎたのか、こぼれそうだ。

 コップに口をつけて水を飲む。


「そうだ!お母さん、携帯貸してよ」

「どうしたの?」

「もらった花を調べてみようかなって。種類とか花言葉とか」

「いいわね。でもほどほどにね」

 母はそう言うと携帯の画面の操作をはじめた。

「どうして?」

 母の言葉と行動がふしぎに思え、質問してみる。


「花言葉にはいろんな意味があるからね。深く調べるとモヤモヤしちゃうよ」

「そうなの?」

「お母さんも経験あるからね」

「そっか。気を付けるよ」

「花はどれもきれいだから、きれいなままで残しても良いのよ」

「うん、わかった」

 僕はそう言って、母から携帯を借りると、コップを持って階段に向かう。


 部屋に戻ると、過敏に水を差す。

 きれいな花を見て、僕も少し和む。

 母の携帯の画面をつける。

 そこには今日の日付と時間、そしてもらった花の写真が表示されていた。

 じっと見ていると、時計が一分先に進んだ。


 僕はそのまま画面を落とす。

(きれいなままで、か)

 空になったコップをと携帯を手に、僕はまた階段を下りていく。


 母を捜すと、庭で米粒サイズの小さな花に水を与えていた。

「お母さん、ありがとう」

 携帯とともに感謝の言葉を、僕は母に返した。

 

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