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【コミカライズ配信中】プレアリス・オンライン ~天使ちゃんは毎日配信中です!~  作者: 旅籠文楽
3章 -

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79. 王城探訪(前)

 


     *



 午前中は森都アクラス北側の森でヒールベリーやトモロベリー、カムンハーブなどを採取しながら過ごした。

 素材は幾らあっても嬉しいけれど。都市北部の森はレベル1~2の魔物しか出てこないから、経験値やスキルポイントの面ではあまり美味しくない。

 もちろんスケルトン達が成長することもないので、午後からは別の所へ向かおうということになった。


 一旦ゲームからログアウトして、雫は昼食の準備をする。

 ゲームを遊んでいる最中は判らなかったけれど。今日は朝から引き続き、昼間も夏らしからぬ涼しさが続いているようだ。

 こういう日は何だか、温かいものが恋しくなる。


(グラタンでも作ろっかな)


 冷蔵庫に牛乳があるのを確認してから、雫はそう決めた。

 オートミールをベースにすれば、グラタンひとつで充分な満腹感が得られるし、お腹にも良い。焼くのに10分ほど掛かるけれど、作るの自体は簡単だ。


 牛乳と水を2対1で混ぜて、後はコンソメと塩で適当に調味する。

 その中にオートミールと冷凍のカットタマネギを投入し、電子レンジに掛ける。


 数分ほど待つと、充分に熱が通って全体的にとろみが強く仕上がる。これを耐熱のグラタン皿に均等に敷き詰めて、表面にチーズを散らす。

 めんどくさいので予熱なんてしない。オーブントースターで適当に、7分ぐらい焼くことにする。それで足りなければ焼き足せば良いのだ。


(コーンスープな気分かなー)


 電気ケトルにお湯を沸かして、インスタントのコーンスープを作る。

 いつも通りサラダストックを取り分けて、先にスープとサラダだけをちびちびと食べていると、程なくしてグラタンが焼き上がった。


「……ん、良い感じ」


 オートミールをベースに作ったグラタンは、通常のものとは風味が結構違うけれど。これはこれで、わりとアリだと思える味だ。

 実は雫は、自宅に常備している割に、オートミール自体はあまり好きではない。

 割とみんな、お湯で戻しただけで食べたりするらしいけれど……そういう食べ方だと、もう率直に『不味(まず)い』としか雫には思えいからだ。


 それでも、グラタンにすれば美味しく食べられる。

 グラタン1皿で100gも消費しないから、あまり減らないのが難点だけれど。オートミールは日持ちする食材なので消費を急ぐ必要はない。


「ごちそうさまでした」


 後で楽に洗えるように、グラタン皿はぬるま湯に浸けておく。

 食後の腹ごなしも兼ねて、10分ほどストレッチで軽く身体を解してから。雫は寝室でVRヘッドセットを装着してから横になり、『プレアリス・オンライン』の世界へと再び旅立った。


 ―――ログインした地点は、森都アクラスの北門の内側。

 フレンド一覧を確認してみると、まだユーリ達は誰もログインしていなかった。

 彼女達は家族と一緒に昼食を摂るだろうから、一人暮らしのシズと違い、すぐに済むようなものでもないだろう。


(そういえば、午前中は結局『配信』をしなかったね……)


 今更そのことに気づき、慌ててシズは『配信』をオンにする。

 どうにも、他にやることがあると忘れちゃうんだよね……。


《今日の配信きちゃー‼》

《もう12時半ですよ姐御!》

《ねぼすけさんか? ねぼすけさんなのか?》

《冷房のよく効いた部屋で二度寝したんだよね?》


「いやごめん、午前中は『配信』するのすっかり忘れてて」


《ですよね》

《いつも通りですね》

《知ってた》

《配信が無い時点で察してた》

《正直判ってて訊いたところある》


「わーお、私の信用ゼロだぁ……」


 にべもない視聴者からのコメントを受けて、シズはがくりと項垂れる。

 まあ、これだけ何度も『配信』を忘れていれば、そりゃ信用も落ちるよね……。


《今日は何をするん?》


「とりあえず、ユーリちゃん達がまだ昼食に行ってるからね。何するかはみんなが帰ってきてから考えるつもり」


《じゃあ生産タイムですか?》

《休日もお勤めご苦労様です!》

《暇があると会社に行かないと不安になるんですねわかります》


「社畜扱いやめて。うーん、たぶん生産するほどじゃないんだよねえ……」


 視聴者と雑談しながら霊薬の生産をしていれば、何時間でも潰すことができるけれど。たぶんユーリ達はあと30分ぐらいでまたログインするだろう。

 30分だけ生産するというのも駄目では無いけれど。細かい時間の使い途なら、もっと他に何かありそうだ。


《襲撃先の集落がどこかは、もう確認した?》


「あ、そういえばしてないや。神殿で確認できるんだっけ?」


 そういえば『魔軍侵攻』イベントのことなんて、すっかり忘れていた。

 襲撃予定先の集落付近に棲息する魔物は、強力な個体に入れ替わるらしいから。それがどこなのかは、ちゃんと把握しておいたほうが良いだろう。


《神殿か政庁で確認できるね》

《大都市なら王城でも確認できるよ》


「おー。お城は近づいたことさえないし、折角だし行ってみよっかな」


《軍需物資を募集してるから、何を必要としてるか確認するといいよ》

《納品で貢献度が稼げるよ。俺も武器納品ちょっとだけやった》


「そっか、納品ができるんだっけ」


 国営施設の『錬金術師ギルド』は、普段からよく利用してるわけだし。この国に多少の恩返しぐらいはしておきたいところだ。

 午前中は戦闘をイズミとスケルトン達に任せて、シズは採取しつつ霊薬の生産をひたすら行っていたから。手持ちの霊薬在庫はそれなりに補充できている。

 一定量は手元に確保しておきたいけれど……。それとは別に200本ぐらいなら霊薬を納品に回しても問題無さそうだ。


 森都アクラスは都市の中心部や西側が『森の都市』の雰囲気であるのに対し、海に面した都市東側は『港湾都市』らしい雰囲気の街並みとなっている。

 そしてファトランド王国の城は、その2種類の街並みのちょうど中間地点あたりに聳え立つ。

 都市内のどこからも見える建物だから、そこに城があることはもちろんシズも知っていたけれど。

 残念ながら、都市の東側には全く用事が無いものだから。シズは城の近くに足を運んだことさえ、一度も無かった。


 中央広場からのんびり5分ほど歩くと、すぐに王城の近くへと辿り着く。

 王城の敷地は分厚く高い防壁で囲まれており、正面の門には20人ぐらいの衛兵の人達が歩哨に立ち、護りを固めていた。

 流石は国の要人が居る場所だけあって、警護が手厚いようだ。


(こんな警備が厚いところに、入れるものなのかな……?)


 いかにも『関係者以外立入禁止』な雰囲気を感じて、シズは内心でそう思う。

 とはいえ、このまま突っ立っていても仕方がない。

 意を決してシズは城門のすぐ近くまで向かい、衛兵の人に話しかけてみた。


「―――あの、すみません。魔物の襲撃と霊薬の納品について聞きたくて、お城を訪ねてきたのですが」

「身分証は何かお持ちですか?」

「身分証……『錬金術師ギルド』のギルドカードで構いませんか?」

「はい、構いません。確認させて頂きますね」


 衛兵の人は、10秒ほど掛けてしっかりギルドカードを確認したあと。


「シズさんですね、確認致しました。どうぞお通り下さい。詳しい話は王城敷地内にいる文官を捕まえて、訊ねてみると良いでしょう」


 ―――拍子抜けするほど、あっさり通して貰うことができた。

 こんなので、お城のセキュリティは大丈夫なんだろうか。





 

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お読み下さりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 視聴者の恋人いっぱい居るんだから、視聴者はシズが今誰と冒険してるのかも分かってるはず。 四人の邪魔したく無い気持ちはあるだろうけど、一言「配信は……」と、メッセージ送れば良いんじゃな…
[良い点] 割とみんなにポンの子扱いされてて笑うww [一言] ポンコツだから庇護欲をそそるけど本人は攻めキャラ?なんだよねぇ…… 冷静に考えると錬金術士ってどこでも爆発起こせる怖い存在だな
[良い点] 更新乙い
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