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07. カウントダウン

 


     [1]



 ―――『7月1日』の午前9時52分。

 『プレアリス・オンライン』のサービス開始は、本日の午前10時から。

 遅めの朝食を済ませて準備万端の雫は、早速自室でヘッドセットを装着してからベッドで横になり、機器のスイッチをオンにした。


 没入型(ダイブ・イン)VRヘッドセットは、ユーザーの五感全てを仮想世界(メタバース)内の分身(アバター)へ置き換えてしまうけれど。とはいえ、プレイ中に現実側の身体が『眠る』わけではない。

 身体は覚醒時と同じ状態を保つため、食後すぐにプレイしても特に問題が生じることは無いそうだ。

 ……まあ、プレイ中に身体が一切動かないのは事実なので、あまりゲームにハマりすぎると運動不足には陥りそうだけどね。




   ------------------------

    P.R.E.Alice Online

     - Logged in...

   ------------------------




 キャラクター作成の際に一度見たログイン画面が、再び表示される。

 まだゲーム開始には少し早い時間だけれど、ログイン自体は問題無く行うことができた。


 ログインが完了すると同時に、雫の身体が先日作成したキャラクターの姿(アバター)で再構成される。

 但し、以前とは服だけが違っていて。いかにもファンタジー感のある、民族衣装っぽい衣装を身に着けていた。

 また靴も濃い緑色の、可愛らしいものに変化している。

 革靴のようだけれど、現代の靴と違って靴底(ソール)のクッション性が少なく、少し変わった履き心地がした。


 シズの周囲には、ただ何も無い空間だけがある。

 12畳ぐらいの広さがある、白い壁に包まれた部屋だ。

 天井にはライトが無く、また室内のどこにも照明器具は置かれていないけれど。不思議と部屋の壁や天井、床などが淡い光を放っていて、室内はそれなりの明るさを保っていた。

 ……まあ、仮に光が一切無くて真っ暗だったとしても。この姿(アバター)でなら、頭上に浮かんでいる『天使の輪(ヘイロー)』が照らしてくれるから、困らなそうだけどね。




+----+


 『この場所でもゲーム内機能の【掲示板】がご利用頂けます』


 『ゲーム開始まで残り:421秒』


+----+




 不意に雫の視界内に、2つのウィンドウが表示される。

 大きい方のウィンドウには【掲示板】を機能が利用できる旨が記載されており、小さい方のウィンドウにはゲーム開始までのカウントダウンが表示されていた。

 どうやら【掲示板】機能を利用しながら時間を潰して、この場所でゲーム開始の時間まで待てということらしい。


 ゲーム内機能を利用する為には、そのことを頭の中で『意識』すればいい。

 例えば頭の中で『配信を開始する』ことを意識すれば、いつでも配信機能をオンに切り替えて利用することができる。もちろん配信を終了する時も同様だ。

 ゲーム内機能にどんなものがあるのか、その一覧を確認したい時には『メインメニューを表示』と意識すればいい。そうすれば利用可能な機能の一覧が表示される筈だ。


 早速シズは頭の中で『掲示板を表示』と念じて、視界内にウィンドウを開く。




+----+


 『ゲーム開始が待ちきれない雑談(16080)』

 『ベータの情報を持ち寄るスレ(12706)』

 『自分の戦闘職と生産職を書いていくスレ(6619)』

 『スタート地点どこからにする?(5920)』

 『フレンド募集スレ(1890)』

 『ストリーマー集合(1114)』

 『女子会(833)』

 『敢えて全く関係無いゲームを話をしようぜ(790)』

 『ユトラちゃんのふともも(775)』

 『男が全員女装してくれれば世界は平和になる(763)』

 …


+----+




 すると全部で100個以上はある、スレッドタイトルの一覧が表示された。

 なんだか随分と奇妙なタイトルもあるようだけれど……。そこは見なかったことにしておくのが優しさだろうか。


 ユトラちゃんというのは、キャラクター作成を手伝ってくれたNPCの子だ。

 彼女は修道服に近いデザインの、全身をすっぽり覆い隠すような白い衣装を身に付けていたから、ふとももなんて全く見えなかったと思うのだけれど……。

 世の男性方の逞しい想像力を駆使すれば、あの衣装の中身も見えるのだろうか。

 ……そのスキルは、正直シズもちょっと欲しいなと思った。


 タイトルの後ろに付いている括弧(カッコ)内の数値は、そのスレッドへの書き込みの数を示すものだろうけれど。『女子会』の書き込み数があまり多く無いことから察するに、女性プレイヤーの数は少ないんだろうか。

 まあ、これは単に女性で掲示板へ書き込もうとする人が少ないだけかもしれないので、一概には判断できない。


 ちなみに『ストリーマー』というのは動画配信者のことを指す言葉だ。

 『プレアリス・オンライン』はプレイ中の映像をゲーム内に居るプレイヤーや、ゲーム外の動画サイトに配信する機能を最初から備えているので、ストリーマーにとっては非常に利用しやすいゲームになる。

 もちろん、その配信機能を利用する予定のシズもまた、今日からはストリーマーの1人ということになるだろう。




+----+

1118.シズ


 このゲームで初めてプレイ動画の配信をする予定です。

 ゲームは殆ど遊んだ経験が無い初心者です。

 女の同性愛者です。よろしくお願いします。


+----+




 というわけで、折角の機会だし『ストリーマー集合』のスレッドに、シズも書き込みをしておいた。

 スレッドの冒頭には『今までに動画配信したことのあるゲームタイトルを書いて下さい』とあったけれど。シズは今回が初の配信になる予定なので、挨拶以外には特に書くことがない。

 なので、なんとなく同性愛者なことをカミングアウトしておいた。

 元々ネット上では、特に隠したりもしてないしね。


 書き込みを終えて数秒も経たないうちに、掲示板を表示させていたウィンドウが勝手に閉じられた。

 どうやらもうゲームが始まる時間が来るらしい。

 開始までのカウントダウンの数字が、10、9、8、と減っていき―――。


 カウントが『0』を迎えると同時に、視界にとても大きなウィンドウが1つ表示される。

 そこには『プレアリス・オンライン』ゲーム内の世界地図が表示されており、世界中にある全ての大都市の位置が強調表示され、都市名も併記されていた。

 ウィンドウの下部には『ゲームを開始する都市名を意識して下さい』とある。


 世界地図は公式サイトにも掲載されていたので、事前にユーリと話し合い、ゲームを開始する初期都市をどこにするかは決めてある。


「ファトランド王国でお願いします」


 意識しながら、実際に口に出してそう告げると。

 すぐにシズの視界は真っ白な光に飲み込まれて、何も見えなくなった。





 

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お読み下さりありがとうございました。

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[気になる点] “女の同性愛者です。よろしくお願いします。” 度胸がいい ヒロインとは性格が合わない気がする
[良い点] 更新乙い [一言] 自己紹介レスがレズだけどストレートで草
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