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【コミカライズ配信中】プレアリス・オンライン ~天使ちゃんは毎日配信中です!~  作者: 旅籠文楽
2章 -

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34. ともだち100人できるかな

 



「こんばんはー」

「あら、シズちゃん。今日もいらっしゃい」


 すぐ目の前にある錬金術師ギルドの建物へと入ると、1階販売店のカウンターに立っていたいつものギルド職員のお姉さんが、笑顔で出迎えてくれた。


「はい、今日も来ちゃいました。ナディアさん、工房は空いてますか?」


 3日前に訊いて、教えてもらったばかりの名前を口にすると。

 職員のお姉さん―――ナディアは嬉しそうに表情を綻ばせて、頷いてみせた。


「ええ、是非使ってちょうだい。どうせ今日も閑散としているからね~」

「いつもガラガラですけど、大丈夫なんですかこのギルド」

「最近、お客さんから品揃えに対するクレームが酷いわね……」


 シズが訊ねた言葉に、ナディアが困った顔をしながら答える。


 星白(エンピース)の人達は身の危険が伴うことを避ける傾向があるため、〔錬金術師〕の生産職を持っていても、霊薬(ポーション)の調合をあまりやりたがらない。

 だから錬金術師ギルドとしては職人に登録して、精力的に霊薬を生産してくれる天擁(プレイア)の存在を心待ちにしていたようなのだけれど。

 残念ながら……ファトランド王国を初期地点として選択したプレイヤーの人数は非常に少ないみたいで。森都アクラスの霊薬は、需要に対する供給量が非常に乏しい状態にあった。


 霊薬が不足しているなら、他の場所で霊薬を買い付けてそれを持ち込めば良いと思うかも知れないけれど。『大都市』に設置されている『転移門』は、物資輸送を目的とした利用がこの世界の神様―――主神によって禁止されているらしい。

 『転移門』は主神の恩寵により設置されているものなので、禁止されている行為を(みだ)りに行えば門を取り上げられる可能性がある。だから各国はその取り決めを固く守っているそうだ。


 主神の怒りを買わないためには、他国で買い付けた霊薬を持ち込むとなれば、陸路や海路で輸送しなければならないわけだけれど―――。

 この世界は魔物が跋扈しているから、その際には護衛雇用費を含めた運送コストが丸ごと価格に上乗せされ、霊薬の市場価格は一気に高騰してしまうことになる。

 そのため他都市からの輸送はあくまでも『最終手段』であって、ギルドとしても本当に窮した場合にしか実行できないんだとか。


「ね、シズちゃん。今日も何本かでも良いから、納品して貰えないかしら?」

「もちろん良いですよ。10本ぐらいで良いですか?」

「助かるわ~。うーん、もうちょっと増やせたりしない?」

「じゃあナディアさんがご褒美にハグしてくれるなら、15本納品します」

「あら、そのぐらいならもちろん良いわよ?」


 追加の報酬をおねだりすると、あっさり了承して貰えた。

 ……うん。是非次回からはこの手で、毎回ハグして貰うことにしよう。


《相手の弱みに付け込み、体での支払いを要求するなんて……》

《流石ですお姉さま! 一度でも体を許させればこっちのものですわ!》


「人聞きが悪すぎる⁉」


 錬金術師ギルド3階にある『工房』の個室に入ったあと、妖精が読み上げたコメントを聞いて、思わずシズは結構大きな声を上げていた。

 『工房』は爆発にも耐えられる頑丈な作りになっているから、室内から大声量で叫んだとしても、外部に音が漏れることが無いのが有難い。


「じゃあ、とりあえずは納品用の霊薬を15本作ろうー」


 そう決めて、シズは〈○素材収納〉の中から大きな水甕を1つ取り出す。

 この甕に入っているのは、森の中を流れる河川から採取した水だ。




+----+

ミヒル河川水/品質[48]


 【カテゴリ】:素材(溶媒)

 【品質劣化】:-1/日


 ミヒル川で採取した水。

 水質は清浄で、そのまま飲用しても問題無い。

 河川水は上流で採取したものほど品質が高くなる。


+----+




 何故わざわざ、貴重な〈○素材収納〉の収納枠を1つ使ってまで河川から採った水を保管しているのかというと。理由は単純で、河川の水のほうが錬金術師ギルドが用意してくれる井戸水よりも『品質』が高いからだ。


 ここ数日間、霊薬の調合を繰り返してみて判ったことだけれど。霊薬の品質は、作成に用いた全ての材料の平均に近い値になる。

 例えばベリーポーションを作るなら、材料は『ヒールベリー』と『水』の2種類だけなので、完成する霊薬の品質値はこの2つの中間値になる。

 但し、実際には修得している〈○初級霊薬調合〉スキルのランクに応じて品質が上がったり、錬金特性を注入する際に魔力状態が乱れることで品質が下がったりもするから、あくまでも目安だけれどね。


 錬金術師ギルドで用意されている井戸水の品質は『40』。

 なので河川で採取した品質が『48』の水を利用すると、完成する霊薬の品質は井戸水を用いた場合より『4』高くなる。

 生産したアイテムの効果は品質の影響を大きく受けるので、この『4』の違いが案外馬鹿にできないのだ。


「―――【溶媒球(カンターダ)】」


 河川水で満たされた甕の中に手を入れて、そこから水球を作り出す。

 〈○初級霊薬調合〉スキルのランクは現在『3』まで成長しているから、一度に取り出される水の量は霊薬6本分だ。

 目の前に浮上した水球の中に、シズは手際良くヒールベリーを3個投入した。


 魔力を注入して素材を確定させ、カウントダウンを開始する。

 錬金特性はいつも通り、ピティから得られる〔敏捷増強Ⅰ〕を注入した。


 ギルドに納品する霊薬は、普通に生産しただけのものでも構わないのだけれど。何かの錬金特性は注入しておく方が、売値は良くなるからね。

 ゆっくり2分ほど掛けて6単位分の〔敏捷増強Ⅰ〕の注入を終えれば、あとは完成をのんびり待つだけで良かった。




+----+

▽『ベリーポーション』6個の霊薬調合が完了しました。

 生産経験値:270/スキルポイント:0


◇デイリークエスト〔生産〕『ベリーポーションの生産』を達成しました!

 報酬:生産経験値250、スキルポイント50

 ランダム報酬:聖水×5

+----+




 生産が完了した後にログウィンドウを確かめてみると、特に意識していなかったのにデイリークエストが達成されていた。

 どうやら好都合なことに、ちょうど『ベリーポーション』を生産するクエストが受注されていたみたいだ。報酬のスキルポイントがとても嬉しい。


 ちなみにログウィンドウを見ての通り、残念ながら現在ではベリーポーションの生産から、シズはスキルポイントを得ることが出来なくなっている。

 これは『1つの生産レシピからスキルポイントが得られるのは100回まで』という制限があるからだ。

 100回分、つまり合計で『100』のスキルポイントを得た時点で、その生産レシピは充分に『熟達』したと見なされ、学びが得られなくなるんだとか。




+----+

ベリーポーション/品質[77]


 【カテゴリ】:霊薬

 【注入特性】:〔敏捷増強Ⅰ〕

 【品質劣化】:-2/日


 【霊薬効果】:HP+38、[敏捷]+5(10分)


 ヒールベリーを主材料に調合した霊薬。

 果実の時ほどでは無いものの、品質が劣化しやすいので注意が必要。

 服用後は『120秒』間、霊薬が服用できない状態になる。

  - 錬金術師〔シズ〕が調合した。(+10%)


+----+




 但しスキルポイントが得られなくなる代わりに、既に『熟達』したレシピの生産を行うと、完成アイテムの品質が向上するメリットがある。

 現時点だとシズが『ベリーポーション』を作ると、品質が本来より『10%』も向上した霊薬が出来上がるのだ。

 もちろん品質が良くなる分だけ霊薬の効果も高くなるから、これはこれで嬉しいことだ。


 今後も『ベリーポーション』の生産を続けていけば、品質が向上する割合を現在の『10%』から更に高めていくことも可能らしい。

 生産の反復練習は、決して無駄にはならないのだ。


「よーし、とりあえず18本分が完成だね」


《お疲れさま!》

《さすおね!》

《今回も良い手際》

《おつ!》

《お疲れさまです》

《おつ!》

《お疲れさまですわ!》


 生産工程を3セット繰り返した後に、シズはそう告げて手を休める。

 これで錬金術師ギルドに納品する15本分は問題無く用意できたわけだ。




+----+

◇配信妖精 Lv.2


 この妖精が表示されているプレイヤーは『ゲームを配信中』です。

 主にこの妖精視点からの映像が、視聴者には届けられます。


 現在の視聴者数:822人

 コメントの読み上げ:オン

 ギフトと投げ銭:共に受け付ける

 視聴者からのメール受信/フレンド登録:共に受け付ける


+----+




 妖精が読み上げる『お疲れさま』のコメントがあまりに多いものだから、確認してみたところ視聴者の人数がもう800人を超えていた。

 こんなに地味な調合作業を視聴して、一体何が楽しいんだろう……。


「―――あ、そうだ。『配信』のレベルが上がったらしくてね。今後はゲーム内で私の配信を見てくれている人が、私のことをフレンドに登録したり、私にメールを送ったりできるようになったらしいよ」


《おお、マジっすか》

《登録してもよろしいんですか、お姉さま!》


「う、うん。私でいいなら、誰でも好きに登録してくれていいよ。

 ―――特に女性からのフレンド登録は大歓迎かな!」


《ヒャッホウ!》

《流石ですお姉さま、ブレない》

《ありがとうございます! ありがとうございます!》

《男ですが登録します! ゆるして!》

《同じく!》

《これで初フレンドがシズお姉さまですわ!》

《天使ちゃんとフレンドに……! もう思い残すことはない!》




+----+

▲『カイゼル』と相互にフレンドになりました。

▲『マリン』と相互にフレンドになりました。

▲『葉室』と相互にフレンドになりました。

▲『プラム』と相互にフレンドになりました。

▲『Vault』と相互にフレンドになりました。

▲『リオネ』と相互にフレンドになりました。

▲『カイン』と相互にフレンドになりました。

▲『ミアス』と相互にフレンドになりました。

▲『雪華』と相互にフレンドになりました。

▲『トモエ』と相互にフレンドになりました。

▲『スヴィトラーナ』と相互にフレンドになりました。

▲『八重』と相互にフレンドになりました。

▲『ブンメイ』と相互にフレンドになりました。

▲『モニカ』と相互にフレンドになりました。

▲『ホタル』と相互にフレンドになりました。

▲『莉緒音』と相互にフレンドになりました。

▲『リビティナ』と相互にフレンドになりました。

▲『クリスタベル』と相互にフレンドになりました。

▲『フレイム』と相互にフレンドになりました。

▲『龍頭』と相互にフレンドになりました。

+----+




「うおおお……!?」


 視界内に表示させているログウィンドウが凄い勢いで流れていくのを目の当たりにして、思わずシズは驚愕の声を上げた。

 つい先程まで、登録されているのがユーリ1人だけだったフレンド欄がどんどん増えていき、すぐに100人以上にまで到達する。




+----+

○実績『合縁奇縁』を獲得しました!

 報酬として〔スキルポイント:100〕を獲得しました。

+----+




 ―――と同時に、実績が1つ手に入った。

 おそらくはフレンドが100人に達した時点で獲得できる実績なのだろう。


 これって普通に取得しようと思うと、結構難しい条件じゃないかな?

 そのぶん貰えるスキルポイントが『100』と多いのは嬉しいところだ。





 

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お読み下さりありがとうございました。

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[良い点] 更新乙い [一言] 都市部でも人の多い所から呼び込みでも…… 人材流出対案は流石にないやろ……
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