30. 雑談生産(後)
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シズ
白耀族の聖翼種/能力倍率合計【125%】
〔操具師〕- Lv.3 【65%】
〔錬金術師〕- Lv.2 【60%】
HP: 22 / 22
MP: 39 / 39
[筋力] 6 (5)
[強靱] 8 (7)
[敏捷] 33 (27)
[知恵] 32 (26)
[魅力] 7 (6)
[加護] 35 (28)
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◆異能
《操具術》《特性吸収》《落下制御》《呪詛無効》《天使の輪》
◇スキル - 56 pts.
〈☆効能伝播Ⅰ〉〈○服薬術Ⅰ〉〈○食養術Ⅰ〉
〈☆錬金素材感知Ⅰ〉〈○初級霊薬調合Ⅱ〉〈○植物採取Ⅰ〉
〈○生産品収納Ⅰ〉
〈☆聖翼種の浮遊能力Ⅰ〉
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レベルアップ後のステータスはこんな感じになった。
HPが1点も増えていないのがちょっと残念だ。森での狩りでは、ゴブリンからダメージを負わされることもあったから。出来ればもう少しHPに余裕が欲しいんだけれど……。
最大HPのために[強靱]を伸ばしたくなる欲望をぐっと堪えて、成長力は今回も[敏捷]へと割り振る。
次回のレベルアップでは[知恵]を伸ばすことになるだろう。
スキルポイントはレベルアップにより得られた分以外にも、デイリークエストや神殿クエストの報酬があったお陰で、『200』点以上貯まっていた。
なので今回は新しくスキルを1つ修得するだけでなく、既存のスキルのランクも1つ伸ばしてみることにした。
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〈○生産品収納Ⅰ〉
自身が生産または加工したアイテムが『5』枠まで収納可能になる。
このスキルで収納しているアイテムは状態が保存される。
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〈○初級霊薬調合Ⅱ〉
錬金術を用いてスキルランクに応じた初級霊薬を生産できる。
初級霊薬を『4個』まで同時に生産できる。
霊薬の生産成功率が『2%』向上する。
生産した霊薬の品質値が『2』増加する。
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前者が新規に修得したもので、後者がランクアップさせたスキルになる。
〈○生産品収納Ⅰ〉は自身の手で生産したアイテムに限り、『インベントリ』とは別の収納領域に『5枠』まで保管できるようになるスキルだ。
このスキルには『アイテムの状態を保存する』効果が付いているので、収納しているアイテムは時間経過による品質劣化を回避できる。
品質が自然劣化しやすい『ベリーポーション』の保管には、うってつけのスキルだと言えた。
もちろん『インベントリ』には『40枠』までのアイテムしか収納しておくことが出来ないから、単純にそれとは別の収納領域が『5枠』増えるのも嬉しい。
魔物から得られた素材や採取した素材、生産した霊薬なんかをどれもこれも収納していると、きっと『40枠』なんてすぐに埋まってしまうだろうしね。
〈○初級霊薬調合Ⅰ〉はランクアップにより〈○初級霊薬調合Ⅱ〉に変化。
これで初級霊薬なら一度に4個まで生産が可能になった。
今までは2個ずつだったので、純粋に生産ペースが倍になったわけだ。
「よっし。レベルアップの作業も済んだし、どんどん作ろう」
《雑談生産の始まりじゃー!》
《カチコミじゃー!》
《タマとったるでー!》
「いや、そんな物騒な要素はどこにも無いからね⁉」
思わず苦笑しながら、妖精の読み上げたコメントにシズはそう答える。
この視聴者みんなのノリの良さは、一体どこから来るんだろう。
とはいえ、お陰でこうして1人で作業していても淋しさを感じることが全く無いわけだから。間違いなくとても有難い存在ではあった。
「よっと」
霊薬を4本分纏めて作るわけなので、水球のサイズは今までの2倍に。
その中にシズはヒールベリーを2個投入する。水が2倍になれば当然、投入する素材も2倍必要になるからね。
「うーん……。生産中の『配信』って、どんなことを何を話せばいいんだろう? 見てくれてる人って、何か私に訊きたいこととかありますか?」
《そんなもん幾らでもありますよ!》
《いつから同性愛者なの?》
「あ、ゲームと関係無い話題なんだね。
そうだね……割と最初の頃からだった気がするかな? 物心付いた時にはもう、お父さんよりお母さんのほうが好きだったし。小学3年生ぐらいの時に初めて好きになった相手も、女の子だったなあ」
《おお……。思ってた以上に純粋培養》
《男は好きにならないの?》
《男性は嫌い?》
「いや、全然嫌いではないよ? 学校でも男子とは普通に友達だし。
でもまあ、好きにはならないかな。私が好きになるのはいつも女の子みたい」
《それ絶対相手の友達男子側は意識してるゾ》
《↑100%報われないとか悲しすぎやろ》
《女の子に取られて負けるなら、悔いはあるまい》
「いやいや、意識とかありえないって。私は美容とかにあんまり気を使うほうじゃないし、服とかも自分で買ったりせず、親が用意してくれたのをそのまま着ている感じだし。学校の成績も運動も、どっちも平均よりはいいかなって程度だよ?」
《そのぐらいの子が一番好かれるんだゾ》
《あんまり高嶺の花過ぎるよりは、そのぐらいの女の子に惹かれるよな》
《それに高校生ぐらいだと、いかにも『美容に気を使ってます!』って子よりは、無頓着な女子のほうが男子も好きだったりする》
《↑わかる。とてもよくわかる》
「そういうものなんだ? ……でも私は、女子に好かれるほうが嬉しいなあ」
《流石ですお姉さま!》
《クラスの男子諸君! 君達に望みはまったく無いぞ! 絶望しろ!》
《男子「あっあっ新たな性癖の扉が開いちゃう」》
《おう男子、こっちの世界に来いよ。楽になれるぞ》
「一体どこの世界なの……」
視聴者が交わす言葉の意味が理解できず、シズは思わず苦笑してしまう。
とはいえ判らないなら判らないなりに、聞いていて楽しいノリの会話だけどね。
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▽『ベリーポーション/4個』の霊薬調合が完了しました。
生産経験値:180/スキルポイント:4
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生産完了までのカウントダウンが終わった後に【魔術瓶封入】の魔法を行使すると、シズの手元に4本の霊薬が出来上がった。
一度に4本ずつ作れるようになったことで、生産ごとに手に入る経験値が2倍に増えているし。また能力値が増えたことで、調合官僚までの所要時間も『6分28秒』から『6分10秒』まで短縮されている。
お陰で生産経験値とスキルポイントがどんどん稼げるのが嬉しい。
このペースなら〔錬金術師〕のレベルが『3』に上がる瞬間も近そうだ。
《ユーリちゃんに好かれてるみたいだけど、付き合わないの?》
《それは俺も思った》
《時代は『シズユー』ですわ!》
《いや、ここは『ユーシズ』で是非!》
「名前の順番に何の意味が……? ユーリちゃんとはもう長い付き合いがあるし、もちろん大好きだけど。でも、恋愛的な意味で『付き合う』ことは無いかな」
《え、なんで?》
《超お似合いなのに》
《年下は駄目なん?》
「年齢は全く気にしないかな。それにユーリちゃんは確かに小学生だけど、彼女と会話してると、むしろ自分のほうこそ子供だと思わされることが多いし……」
《確かにユーリちゃんは超大人びてる》
《小学生にわからされる高校生とか最高》
「私がユーリちゃんと付き合えないのは……。ちょっと言いにくいんだけど、私もユーリちゃんも、揃って『タチ』を自認しているからかな」
《ああ……それは難しいね……》
《カップリング上の問題かあ》
《タチって何?》
《↑女の子を可愛がる側が『タチ』で、可愛がられる側が『ネコ』》
《↑攻めが『タチ』で受けが『ネコ』》
《説明サンクス。なんでみんな当たり前のように知ってるんだ》
《常識》
《常識》
《常識だろ常識的に考えて》
《もはや義務教育レベル》
「いつのまに日本の義務教育はそんなことになったの……」
妖精が読み上げるコメントに、シズは軽く頬を引き攣らせる。
道徳の授業で『性的マイノリティ』についてぐらいなら教えることもあるだろうけれど。流石にそこまで突っ込んだ性的関係の解説はやらないでしょ。
『私はシズお姉さまが付き合って下さるなら、喜んでネコになりますわ♡』
「―――うおっ⁉」
不意に、妖精が読み上げるコメントとは違い、脳内へ直接響いてくる声があったものだから。シズは声を上げて驚いてしまう。
どうやら今のは『パーティチャット』による会話であるらしい。
そういえばユーリとは、今もパーティを組んだままのような気がする。
『ゆ、ユーリちゃん。もしかして『配信』を見てたの?』
『はい♡ 製薬作業をしながら拝見させて頂いております♡』
『おおう……』
つまり、先程ユーリのことを『大好き』だと告げた言葉も、しっかり彼女に聞かれていたわけだ。
……いやまあ、隠すような気持ちではないし。別に聞かれたからといって、それほど気恥ずかしさを覚えるわけでも無いけれど。
《タチとネコ! 何の支障もなくなりましたね!》
《これはもうカップリング成立ですよ》
《おめでとうございます!》
パーティチャットの内容はそのまま配信されるので、ユーリの言葉を受けて俄に視聴者が騒がしくなった。
『うふふ、ありがとうございます♡』
『い、いやいや⁉ 問題はそれだけじゃなく、他にもあるんだよ。ユーリちゃんは確か以前にモノガミーだって言ってたよね?』
『はい、そうですね』
《百合紳士と淑女達よ、教えてくれ。モノガミーとは何だ?》
《↑同時に1人とだけ恋愛して付き合う人のこと》
《↑ちなみに、逆に『同時に複数と付き合う人』を『ポリガミー』と言う》
《サンキュー! だから何でお前らそんな詳しいの……?》
《常識》
《常識》
《常識だろ。日本書紀にもそう書いてある》
マジかよ日本書紀って凄いね―――って、思わず突っ込みそうになるけれど。
違くて。今は外野のコメントは別にどうでも良くって。
『えっと……で、これも前にユーリちゃんには言ったことがあると思うんだけど。私はポリガミーなんだよね。それも相手が女性でさえあれば、わりと誰のことでも好きになっちゃうようなレベルで、気が多い人間なんだよ?』
『はい。確かにそのお話は以前に伺ったことがあります』
『……じゃあ判るでしょ? 私とユーリちゃんじゃ上手くいかないよ』
『私は別に、シズお姉さまの『恋人の1人』程度で構いませんので♡』
『ええ……?』
―――よく判らないけれど、そういうことになった。
ちなみに集中状態が大きく乱れて、シズは霊薬4本の品質をボロボロにした。
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お読み下さりありがとうございました。




