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【コミカライズ配信中】プレアリス・オンライン ~天使ちゃんは毎日配信中です!~  作者: 旅籠文楽
1章 -

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29. 雑談生産(前)

 


     *



「よーし、じゃあ頑張って沢山作ってこー」


《がんば!》

《天使ちゃんの錬金術はーじまーるよー!》

《戦闘もする。生産もする。「両方」やらなくっちゃあならないってのが『プレアリス・オンライン』のつらいところだな!》


「え、別につらく無いよ? 楽しいよ?」


 ギルド職員のお姉さんが退室したあと、シズが個室の『工房』の中でそう告げると。その言葉に視聴者の人達も応えてくれた。

 お姉さんがすぐ近くで見てくれていること自体は嬉しかったけれど。お姉さんがいると『配信』を見てくれている視聴者からのコメントに、何も返答できないのがちょっともどかしかったから。

 やっとこうして、視聴者に向けて直接会話できるのが嬉しい。


 シズは机の脇にある甕の中に手を入れ、【溶媒球】の生産魔法を唱える。

 そして目の前に浮き上がった水球の中に『インベントリ』から取り出したヒールベリーを1個投入した。


「でも、あれだよねえ……。戦闘ならまだしも、私が黙々と生産しているところなんて、見ていて楽しいものかな……」


 小さく苦笑しながら、シズは妖精に向けて語りかける。


 生産をやっている光景は、良くも悪くも地味なものだ。

 正直、見て楽しいものだとは全く思えないから……本当は一度『配信』を終了してから生産活動を行うべきだったかも知れないと、今更ながらに思う。


《地味な配信も大歓迎ですわ!》

《俺らもそんな、画面に齧り付いて見てるわけじゃないし》

《いま仕事中なんで音声だけ聞いてます》


 そんなシズの懸念とは裏腹に、意外に視聴者の反応は歓迎一色だった。


「そうなんだ? それなら配信する側としても、ちょっと気が楽かも。

 ところで……今日は日曜日だし、もうそろそろ20時だけど。この時間でもまだ仕事中なんだ? 社会人さんって大変なんだねえ……」


《大変なんすよ……でもまだ帰れない……》

《その一言だけでまだまだ働けるわ》

《今日は終電まで頑張るぞい》


「……体調を崩さない程度に、ほどほどにね?」


 どこか悲哀混じりのコメントに、眉を落としながらシズはそう答える。


 もちろん視聴者と会話する傍らでは、並行して生産作業を行う。

 水球を魔力で満たすと、水球の上部にカウントダウンの時計が表示された。

 それを確認してから、シズは先程と同じ〔敏捷増強Ⅰ〕の錬金特性を選択して、水球の中へ少しずつ注入を行っていく。


「私はまだ高1だから、バイトをした経験さえ無いんだよね。だからしっかり働いてる人っていうのは、それだけでとても尊敬できるかな」


惰性(だせい)で働いてるだけなんよ?》

《お金が欲しいだけなんだよなあ……》


「いや、お金は大事でしょ? 立派で胸を張れる理由じゃないのかな」


《やべえ、女子高生の優しさが心にしみる》

《なんだこの子は天使か?》

《↑天使ちゃんだぞ。姿を見たら判るだろ》




+----+

▲アトモスから『¥2000』の投げ銭を受け取りました!

 :天使ちゃんに奉納


▲ロンドから『¥3000』の投げ銭を受け取りました!

 :浄財です

+----+




「なんで急に投げ銭⁉ う、嬉しいけどお金は大事にしようよ……」


 しかも『奉納』とか『浄財』ってどういうことなの。

 見た目が天使のそれなのは認めるけれど。だからといって投げ銭に御利益(ごりやく)的なものを期待されても困るんだけれど……。


 投げ銭に驚いてしまったせいか、少し水球の魔力状態が乱れているのに気付き、慌ててシズはその状態を整え直す。

 このぐらいの乱れなら、品質への影響が出ないことは既に確認済だ。


「よし、後は放置してれば完成だね」


 2単位分の〔敏捷増強Ⅰ〕を注入し終えて、シズは水球から手を離した。

 この行程さえ終えてしまえば、あとは生産完了をただ待っているだけで良い。


《錬金術は難しいって聞くけど、天使ちゃんは簡単に作ってみせるなあ》

《他の錬金術師は「会話しながらは無理だ」って配信切ってたぞ》


「え、そうなんだ?」


《魔力が乱れないよう調整するのが難しいらしい》


 少なくとも今の時点での―――ベリーポーションの生産だけで考えれば、霊薬の調合はシズにとって何ら難しい作業ではない。

 水球内の魔力状態の調整はわりと直感的に操作しやすいから、そんなに難しくは感じないんだけれど……。この辺は個人差があるのかな?


「私、昔から『同時に複数のことをする』のが、割と得意だったりするから。別にみんなと会話しながらでも、調合が難しいとかは思わないかな」


《マルチタスクってやつ?》


「それそれ。体質的な理由なのか何なのか知らないけれど、不思議と得意なんだ。複数の料理を並行して作ったりとか、あとはテレビを見ながら勉強も出来るよ」


《何それ羨ましい》

《それは脳だけじゃなく目もどうなっとんねん》

《マルチタスクは集中力が落ちるって聞くけど?》


「それもよく言われるけれど、人によるんじゃないかな? 別に私は集中力の低下とかを感じたことは無いかなあ。もちろん並行する作業があまりにも多すぎると、無理は出てくるけどね」


《そりゃそうだ》

《じゃあ生産中は今後も雑談オッケーなんですね、やったー!》


「それはもちろんオッケーだけど。生産中のこの地味な様子は、やっぱり見ていて楽しいものには思えないんだけどなあ……」


《天使ちゃんと会話できるだけで、俺達には充分なご褒美です》

《女の子と会話できるとか楽しさしかない》

《シズお姉さまのお話をいっぱい聞きたいですわ!》


「お、おう……。あんまり話すの上手じゃないから、期待しないでね?」


 そんな風に視聴者と会話を交わしていると。不意にシズの頭の中に『ポーン♪』という軽快な音が鳴り響く。

 ―――続けて、シズの身体が一瞬まばゆく光って輝き、いつものファンファーレの音色が頭の中で大きく鳴り響いた。




+----+

▽『ベリーポーション/2個』の霊薬調合が完了しました。

 生産経験値:90/スキルポイント:2


★〔錬金術師〕のレベルが『2』にアップしました!

 任意の能力値の『成長力』を1ポイント増加できます。

 レベルアップボーナスとして〔スキルポイント:100〕を獲得。

+----+




《おめ!》

《おめでとう!》

《流石ですお姉さま!》


「みんなありがとー。思った以上に早かったねえ」


 たった2回生産を行っただけでもうレベルアップしたので、シズは結構びっくりしてしまう。

 戦闘職のレベルが『2』にアップするのも、わりと早かったけれど。生産職がレベルアップはそれ以上に早いものに思えた。





 

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お読み下さりありがとうございました。

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[良い点] 天使かな? 天使だったわ……
[良い点] 更新乙い
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