24. 空も飛べるはず
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シズ
白耀族の聖翼種/能力倍率合計【120%】
〔操具師〕- Lv.3 【65%】
〔錬金術師〕- Lv.1 【55%】
HP: 13 / 22
MP: 38 / 38
[筋力] 6 (5)
[強靱] 8 (7)
[敏捷] 31 (26)
[知恵] 31 (26)
[魅力] 7 (6)
[加護] 33 (28)
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◆異能
《操具術》《特性吸収》《落下制御》《呪詛無効》《天使の輪》
◇スキル - 84 pts.
〈☆効能伝播Ⅰ〉〈○服薬術Ⅰ〉〈○食養術Ⅰ〉
〈☆錬金素材感知Ⅰ〉〈○植物採取Ⅰ〉
〈☆聖翼種の浮遊能力Ⅰ〉
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レベルアップ後のステータスはこんな感じになった。
今回、新たに修得したのは〈☆聖翼種の浮遊能力〉というスキルだ。
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〈☆聖翼種の浮遊能力Ⅰ〉
最大で『6秒』まで空中をゆっくり浮遊できる。
一度着地すると『120秒』は再浮遊ができない。
この効果は手を繋いでいる相手にも適用される。(最大2名まで)
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せっかく背中に翼がある種族なんだから、このスキルにはシズも最初から興味を持っていたのだ。
『6秒』というとても短い間だけでも、空を飛べるのには夢があるし―――。
それに、あるいは今なら。普通に役立つかもしれないと思ったのだ。
スキルポイントの余剰は『84』と、思ったより多い。
これは多分、最初にカムンハーブを採取した際に『初めての採取』の実績が獲得できたのが大きいんだろう。
例によって〔スキルポイント:20〕の報酬が貰えているので、魔物の討伐でちびちび貯めた分と合わせて、そこそこの量になったわけだ。
これなら天擁神殿で受注したクエストを達成できれば、その報酬を加えて問題なく〈○初級霊薬調合〉のスキルも修得できるだろう。
「ユーリちゃんにちょっと、お願いがあるんだけれど」
「承知致しました、シズお姉さま。何をすればよろしいですか?」
シズが問いかけた言葉に、ユーリがそう即答してくる。
まさか内容を訊かれもせずに、即承諾されるとは思っていたかったものだから。この対応には、却ってシズのほうが驚かされた。
「えっと……新しく修得したスキルの実験にちょっと付き合って欲しいんだけど、いいかな? 失敗したら、川の中に落ちちゃうかもだけど……」
海側から1~2kmぐらい歩いてきたけれど、この辺りはまだまだ下流。
川の水深はシズの腰の深さぐらいまであるものの、流れ自体は大して速くない。
これならもし川に落ちても溺れたりせず、自力での脱出は可能だと思う。
《女の子2人の濡れ透けが期待できる。そう、最新ゲームならね》
《お願いします。実験に失敗して下さい。お願いします》
《水もしたたるお姉さまが見たいです!》
「なんで視聴者が敵なの……」
「よく判りませんが、何でもお付き合いさせて頂きます。もしシズお姉さまがお望み下さいますなら、一緒に入水自殺しても構いませんわ♡」
「ユーリちゃんはユーリちゃんで、愛が重いよ……」
思わずシズは、頬の端を引き攣らせる。
女の子は好きだけれど。生憎シズに、そこまで重い愛の持ち合わせはなかった。
《これが噂に名高い百合心中か》
《てぇてえ》
《てぇてぇ……》
《我々も尊死にて続かねばならぬ》
相変わらず、妖精が読み上げるコメントは意味が判らないけれど。これに関してはもう、気にしたら負けだと思っている。
休憩を終えたシズ達は、川縁の岩から立ち上がる。
ユーリと一緒に河川の水際ぎりぎりの位置に立ち並び、それからシズは何も言わずに、隣に立つユーリと手を繋いだ。
わざわざ言葉にせずとも、彼女が許してくれるのは判っているからだ。
「ユーリちゃん。これから暫くの間、私と手を離さないでね」
「絶対離しません♡」
「うひっ」
自身の指と指との間に、するりと指先が入り込んできた感触がくすぐったくて、思わずシズの口から声が漏れ出た。
ユーリが繋いでいる手を、指先まで絡めてきたのだ。
これは―――いわゆる『恋人つなぎ』というヤツではないだろうか。
いや、確かにこれなら、うっかり手が離れてしまうことも無いだろうけれど。
「それじゃ、始めるね」
「わ、わ、わ……!」
重力の桎梏から解き放たれ、2人の身体がふわりと宙に浮き上がる。
この展開は予想していなかったのか、流石にユーリも驚いていた。
スキルによる浮遊は、歩くよりは少し速い程度の―――大体ジョギングぐらいの速度で、ふよふよと空中を移動する。
6秒間の浮遊で河川上を飛びながら高度を稼ぎ、『6秒』が経過して浮遊効果が終了した後には、そこから《落下制御》の異能でゆっくり降下しながら移動することで、更に距離を伸ばす。
そうしてシズ達は全く濡れることなく、河川を飛び越えるのに成功した。
《これは完全に天使の所業》
《その可愛い羽は飾りじゃなかったのか》
《さすおね!》
《さすてん!》
「び、びっくりしました。まさか飛べるなんて……それも、私も一緒に……」
「ふふ、驚かせてごめんね?」
浮上に6秒と降下に15秒で、合計してもたった20秒ぐらいの飛行だけれど。
それでも楽しんで貰えたようで、ユーリは楽しげに表情を綻ばせてみせた。
「というわけで、ここからは折り返しながら、川のこっち側を探索しない?」
「ああ―――なるほど、そのために川を越えられたわけですね」
得心したようにユーリが頷く。
川の近くに生えていたヒールベリーは、感知スキルに引っかかった分は全て採取しながら移動してきたから、もう川のあちら側にはあまり残っていない筈だ。
だからここからは、川のこちら側―――つまり対岸側にある分のヒールベリーを採取しながら、また都市北門の近くまで戻ろうというわけだ。
「そうですね、本日の狩猟目標は既に達成しておりますし、そうしましょう」
「遅くならない内に都市に戻って、今日の生産もやっておかないといけないしね」
「デイリークエストは報酬が美味しいですから、無視できないですよね……」
それから再び採取をしたり魔物を討伐したりしながら、今度は川沿いを東に。
ユーリと色んな話を交わしながら2時間ほど掛けて海の近くまで到達したなら、そこから再び川を渡って南下し、森都アクラスの都市内へと帰還した。
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