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【コミカライズ配信中】プレアリス・オンライン ~天使ちゃんは毎日配信中です!~  作者: 旅籠文楽
3章 -

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232/248

232. 天空で上質な菓子を

 


     *



+----+

【レディバード防衛戦】


 △勝利条件:制限時間まで耐えきる、または敵指揮官の撃破

 ▽敗北条件:レディバードの人口が『80%』未満になる


-

▲侵攻/魔軍指揮官 - バンシー Lv.46


 魔物数:6882体

 士気 :


▲防衛/連合王国軍指揮官 - ヘルム・ビスコーテ Lv.25


 兵士数:5030人

 士気 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★★★

 物資量:☆☆☆☆☆☆☆☆


▲天擁陣営


 参加プレイヤー数:4114人

 最大戦力クラン :『天使ちゃん親衛隊』/1968人


□小都市 - レディバード


 生存人口:11305人

 敗北条件:人口が『9088人』未満になる


+----+




 シズ達が夕食休憩から復帰して約1時間後、22時30分現在の『戦況情報』を確認してみたところ、状況はこのような感じになっていた。

 魔軍の士気はとうとう『ゼロ』へと追い込まれ、その数も7000を切る数値にまで減らされている。それとは対照的に、連合王国軍の兵士は1人も減っていないため、数の優位が覆るのは時間の問題だろう。


 魔物の数が減ったことで、魔軍の司令官を務めるバンシーのレベルも『46』にまで減少している。

 現在のクランメンバーのレベルが大体40前後であることを考えると、そろそろボスに正面から挑んでも『普通に勝てる』可能性が充分に見込めるところだ。

 クラン『天使ちゃん親衛隊』の仲間には、戦意旺盛な人達が多い。チャンスさえあればボスが布陣する場所へと食い込み、その討伐を狙う人達が出てきそうだ。


「時間的にも、そろそろ決着をつけたいところですね」

「ん、そうだね……」


 ユーリの言葉に、シズは頷きながら答える。

 そろそろプレイヤーの人達が、ゲームからログアウトし始める時間帯だからだ。


 実際、もうプレイヤーの数は徐々に減り始めている。

 1時間ぐらい前に『戦況情報』を確認した時点で、確か4400人ぐらいだった筈だから、もう300人ぐらいはログアウトしてしまっているのだ。

 時計が23時、24時といった時間に差し掛かれば、ログアウトするプレイヤーはより多くなっていくことだろう。


 まあ、『魔軍侵攻』イベント自体は明日も続くので、別に今夜のうちに決着をつける必要は、無いと言えば無いんだけれど―――。

 とはいえ、ここまで魔軍を追い込んでいる状況なのに、決着が明日までお預けになるというのも……。なんだか納得いかないものがある。

 やはり可能なら今夜のうちに敵司令官のバンシーを討伐して気持ちよく就寝するというのが、最も理想的な一日の締め括りだろう。


「シズお姉さま、下から……」

「お?」


 そんなことを考えていたシズの思考を、ユーリの言葉が引き戻す。

 見てみると、地上から1体の大きな緑竜がシズたちのほうへ飛んできていた。

 もちろん、その姿はシズもよく知っているものだ。


「カーラ、どうしたの」

『戦いの終わりぐらいは、恋人の傍で見守ろうかと思ってのう』


 そう告げてディアスカーラは、シズのすぐ隣で竜から人の姿になってみせた。

 『人化(レガ)』だ。竜でなくなると同時に、空から落下するんじゃないかと―――そう思い、一瞬シズは凄く焦ったんだけれど。カーラは人の姿となっても、平然とその場に浮いていることができるようだった。

 どうやら竜の飛行能力は、人の姿でも利用できるらしい。


「もう戦闘には参加しなくていいの?」

「よいよい。シズの仲間たちと共に暴れるのは楽しかったが、本来の儂はそれほど好戦的な竜でもないしの。

 ああ―――もしシズが儂に騎乗して攻撃に出たいなら、喜んで付き合うが?」

「私はそういうのはいいかなあ」


 ディアの言葉を聞いて、思わずシズは苦笑する。

 竜の背に載って戦う、というのに少しロマンを感じるものはあるけれど。とはいえクラン全体の回復役を担うシズに、それほどの暇は無いだろう。


「残念。シズと共に突撃するのも面白そうだったのじゃが」

「ここに居るのなら、私と一緒にお菓子でも食べる?」

「食べる!」


 甘いものに目がないディアスカーラが、当然のように即答した。

 シズとしてもひとりで延々とクッキーなどを齧り続けるより、付き合ってくれる相手が居るほうが有難いので、これは嬉しいことだ。

 インベントリからいつものジャムサンドクッキーを取り出そうとして。ふとシズは、あることを思い出す。


「そういえば―――ちょうど、良いものを貰ってたっけ」

「いいもの?」

「うん。絶対カーラにも気に入って貰えると思う」


 クッキーの代わりにインベントリから取り出したのは、ひとつの紙袋。

 これは防衛戦のためにソレット村へと移動する前に、森都アクラスで立ち寄った菓子店の店主から『来月から販売する商品の試作品』として受け取ったもの。


 中身はアップルパイ、ドーナツ、フロランティーヌという3種類の焼き菓子。更に言えばドーナツの半分はチョコレートでコーティングされている。

 どれも普段購入しているクッキーやサブレに比べて、明らかに上質な菓子ばかりなので、きっとディアスカーラにも気に入って貰えることだろう。


 とりあえず8つにカットされたアップルパイを一切れ取り出すと、それを目の当たりにしたディアスカーラの目がとろんと蕩けた。

 どうやら一瞬で、この菓子の美味しさを嗅ぎ分けたらしい。


「おお……なんという美しさよ。これはもはや菓子である前に、芸術品のひとつと言っても良かろう。……ほ、本当に、食べて良いのか?」

「どうぞどうぞ。それなりにお代わりもあるよー」

「な、なんという僥倖……!」


 アップルパイを受け取り、手づかみで少しずつ齧るディアスカーラ。

 その度に彼女の表情に、満面の笑みが浮かぶのがなんとも可愛らしい。


(〈調理〉だけでなく〈製菓〉も覚えようかなあ……)


 あまりに幸せそうなその顔を見ていて、ふとシズはそんなことを思った。

 〈製菓〉のスキルは、スキルポイントさえ消費すればいつでも修得できる状態にある。ディアスカーラを喜ばせることができる菓子を作れるなら、修得する意味が充分にありそうな気がした。





 

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お読み下さりありがとうございました。

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