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【コミカライズ配信中】プレアリス・オンライン ~天使ちゃんは毎日配信中です!~  作者: 旅籠文楽
3章 -

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231. 足元に罠を置く

 


     [13]



 フォートランド連合王国の小都市、レディバードの周囲には平坦で見晴らしの良い地形ばかりが続いている。

 なので空に浮上して、戦場全体を俯瞰しているシズの視点からは、味方だけでなく魔物側の布陣もよく見えていた。


「―――【罠設置(プロック・コンザン)】」


 敵が密集している場所に向けて、シズはひとつの魔術を行使する。

 【罠設置】は文字通り『罠』を仕掛ける魔術だ。これまでにシズが【罠回収】の魔術で回収しており、『トラップリスト』に名前が記載されている罠なら、好きな位置に再設置することができる。




+----+

【☆罠設置】 ⊿操具魔術


 依存能力値:[知恵]

 消費MP :100

 冷却時間 :20秒


 『トラップリスト』に回収されている罠を消費して

 視界内の任意の地点に罠を設置する。

 罠の形状や発動条件は術者の意思である程度変更できる。

 自身が設置した罠は、距離や未発動・発動済に拘わらず

 【罠回収】の魔術でいつでも回収し、再利用できる。


+----+




 設置するのは『落とし穴』の罠。

 これは援軍として本格参戦する前に、元々レディバードの小都市周辺に仕掛けられていたもの。

 一度使用され、存在が周囲に露見したことで機能を失った罠でも、【罠回収】の魔術を用いれば状態を復元しての再利用が可能だ。


 敵が密集する場所の足元に直接、落とし穴ができたらどうなるか?

 そうだね、一網打尽だね―――とでも言わんばかりに、面白いように陥穽の中へ落ちていく魔物たち。

 穴のサイズは半径4メートルと、そんなに大きくないけれど。魔物が密集している場所に設置すれば、一度に10体前後を落とすことができる。




+----+

落とし穴(平地用)


 【カテゴリ】:陥穽の罠

 【発動条件】:効果範囲内に一定の重量が掛かる

 【効果範囲】:最大で半径4m(地上/平地限定)


 一定の高さから落下させ、尖った木材で串刺しにする罠。

 【罠設置】の魔術で設置すると自動的に周囲の地表に

 溶け込む色合いになり、簡単には露見しなくなる。

 この罠は平地用のものなので、『迷宮地』のような

 構造物の中に再設置することはできない。


+----+




 落とし穴の底には尖った木材が幾つも並んでいるけれど。見た目の凶悪さに反して、その殺傷力は決して高くない。

 いや、たぶんレベルが10ぐらいまでの魔物なら、充分に倒せるぐらいの威力はあるんだろうけれど。戦場に居る魔物はレベルが30近くあるので、流石に罠だけではHPを1~3割削るのが精一杯といったところだ。


 ただしダメージ自体は大したことなくとも、落とし穴には10mぐらいの深さがあるから、そう簡単に這い上がってこれるものでもない。

 これが人間なら、上にいる人達がロープでも垂らしてあげればすぐに救助できるところなんだけれど。魔物はそういう助け合いの行為をしないからね。

 なので『魔物を拘束する』という意味では、落とし穴は充分に役立つものだ。


「―――【強酸雨(アング・ロワー)】!」


 シズが落とし穴を5つ設置し、50体近くもの魔物を拘束した時点で。すぐ隣りにいるユーリがひとつの精霊魔法を唱えた。

 普段の戦闘では殆ど使う機会がない、ちょっと珍しい攻撃魔法になる。


 【強酸雨】は文字通り『強い酸の雨を降らせる』効果がある魔法だ。

 範囲内にいる敵は、降り注ぐ酸により徐々にHPを削られていくことになる。そういうダメージゾーンを作り出す魔法、と考えると判りやすいかもしれない。

 範囲の広さが売りの魔法で、その効果は半径15メートルの円状エリアに及ぶ。また持続時間もそれなりに長く、酸の雨は5分間ぐらい降り続ける。


 広いとは言っても所詮は半径15メートルの範囲攻撃なので、雨から逃れるのは簡単だ。実際、普段の戦闘でこの魔法を使っても、魔物はすぐに効果範囲の外まで逃げてしまうことが多いが。

 それでも―――落とし穴に捕らわれた魔物は、そうはいかない。

 シズが設置した5つの落とし穴全てを効果範囲内に収めて、降り注ぐ酸の雨。

 穴の中の魔物は雨から逃れる術もなく、じりじりとHPを削られていき―――。


「うふふ♡ シズお姉様との共同作業ですね♡」


 その成果を眼下に見たユーリが、妖艶に笑ってみせる。

 落とし穴で捕獲した、およそ50体もの魔物。その全ての個体が、降りしきる酸の雨によるダメージにより、尽く倒されていた。


 倒し切るまでに多少の時間が掛かるとはいえ、50体という数を一網打尽にできる手段があるのは、戦略上小さくない意味を持つ。

 今更ではあるけれど。空から俯瞰するシズ達にも、こうして直接行使できる攻撃手段ができたのは、嬉しいことだと言えた。


「でも、まあ……。蛇足かな?」

「そうですねえ……」


 シズが漏らしたつぶやきに、ユーリも肩を落としつつ同意する。

 魔物を一度に50体も倒せるというのは、決して小さい数ではないけれど。既に戦場の趨勢が決しており、魔物の数は減る一方になりつつある現状を考えると、そこにわざわざシズ達が参加する意味は薄い。

 やはり、この戦場でシズ達に求められているのは、本来の役割―――クランの皆のMPの補給役だったり、部隊の指揮役だったりすることだろう。


 ……というわけで、シズは今まで通り延々と菓子を食べ、ユーリは戦場の指揮に集中することにする。

 あんまり色々やろうとすると、やっぱりどれかが疎かになったりするからね。必要に迫られない限り、攻撃役への参加はもうしなくても良いだろう。

 とりあえず今は【罠設置】の魔法が、攻撃にも問題なく利用できると判っただけで充分かな。


「ユーリ」

「はぁい、シズお姉さま♡」


 いつも通り霊薬の中身を口に含み、身体を抱き寄せたユーリと唇を重ね、彼女の口腔内に少しずつ薬液を流し込んでいく。

 うん、やっぱり〈口移し〉を頑張る方がシズの性には合っている気がした。





 

お読み下さりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] お、久しぶりの更新じゃーん!
[良い点] 復帰おめでとうございます、ご多幸をお祈り申し上げます [一言] 2022 年から私が抱いていた小さな疑問ですが、ユーリ帝国がいつか復活するという希望はありますか、それとも永遠に放棄されたと…
[一言] 待ってました!
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