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【コミカライズ配信中】プレアリス・オンライン ~天使ちゃんは毎日配信中です!~  作者: 旅籠文楽
3章 -

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207. クランスキル(前)

昨日はダウンしておりました。すみません。

 


     *



「シズお姉さま。お任せ頂きましたクランスキルを、エリカと相談した上で色々と修得しておきましたので、確認して頂けますか?」


 ソレット村内の一角、クラン『天使ちゃん親衛隊』で占有利用して良いと認められた区画に天幕を建て終わった後に。

 その天幕の中でエリカと共に休憩していると、程なく湯気を湛えたティーポットを携えながらユーリがやってきて、そう声を掛けた。


「了解。お茶を淹れてきてくれてありがとね」

「私もちょうど飲みたかったですから。ところで、カップはお持ちですか?」

「うん、あるよ。いま出すね」


 ストレージの中から、シズは受け皿(ソーサー)付きのティーカップを3つ取り出す。

 カップぐらいは全員が持っているだろうから、自分の分を出すだけでも良かったのだけれど。どうせ一緒にお茶を飲むのなら、お揃いのカップで楽しむほうが良いかなと思ったので、お気に入りのものを揃えて出した。


 それぞれのカップにユーリがポットから紅茶を注いでくれると。まるで花開いたかのように、天幕の中に瑞々しい香気が溢れる。

 お茶が好きな人なら、誰もが至福を感じる瞬間だ。

 ゲームの中の世界だというのに―――こういうお茶の『香り』ひとつとっても、現実と全く遜色ないレベルで再現できていることを、改めて凄いなと思う。


「……っと、そうだった。クランスキルの話だよね」


 カップに2口目まで付けたところで。ついお茶に夢中になりそうになっていたのを、慌ててシズは踏みとどまる。

 そんなシズの様子を見て、ユーリはくすりと小さく笑ってみせた。


「はい。いま情報を共有致しますね」


 ユーリがそう告げると同時に、シズの視界一杯を埋め尽くすかのような、巨大なウィンドウが1つ表示された。


 ウィンドウ内に表示されている内容は、全てクランスキルに関するものだ。

 大半のスキルでランクが『10』と表示されていることから察するに、おそらく修得と同時に最大ランクまで一気に成長させたのだろう。


「最初に少し説明させていただきますが。クランスキルはクラン用の『スキルポイント』を消費することで修得できるスキルになります。

 キャラクターが修得するスキルと似たようなものですが、このクラン用のスキルポイントは魔物を討伐したりクエストを達成したりしても、基本的に増えることはありません」

「ん……。じゃあどうやって増やすの?」

「方法は1つだけで、クランのレベルを上げることですね」

「確か『クランストーン』を使えば、レベルを上げられるんだっけ?」

「はい」


 シズが問いかけた言葉に、ユーリが頷く。

 クランは『クランストーン』というアイテムを消費することで、レベルを1つだけ上げることができる。

 このクランストーンは天擁(プレイア)神殿にある『天擁商店』、いわゆる『課金ショップ』で購入することができる。

 また同店で利用できる『ガチャ』の景品としても当たることがあるので、シズもそちらで過去に幾つか手に入れたことがあった。


 クランストーンは普通に購入すると、1個あたり『120Eliza(エリザ)』のお値段がする。

 1Elizaは『10円』に相当するので、120Elizaなら『1200円』だ。

 クランストーンはガチャの『D賞』景品の1つなので、一応『ハズレ』の部類に入るのだけれど。ガチャは30Eliza毎に1回引けるから、当たれば普通に買うよりもだいぶお得に入手できるわけだ。


「クランのレベルって、いま幾つなんだっけ?」

「現時点で『330』だね」

「な、なんだか私の知らない間に、凄く上がってるなあ……」


 エリカが教えてくれた数字を聞いて、思わずシズは苦笑する。

 クランに参加している人なら、誰でもクランストーンを消費することで、自身が所属しているクランのレベルを上げることができる。

 だからシズが知らないうちにクランのレベルが大きく上がっていても、決しておかしくは無いのだ。


 それに『クランストーン』はガチャを引く人なら誰でも入手する可能性があるアイテムだけれど。このアイテムには『所属クランのレベルを上げる』以外に使い道が全く存在しない。

 なので既にクランに所属しているプレイヤーがこのアイテムを手に入れた場合、クランに『寄付』をするつもりで使用してくれることが割とあるらしいのだ。

 一応『マーケット』などに流せば、それなりの値段で売ることができるアイテムではあるから。これは結構太っ腹な行為だったりする。


 以前ユーリから聞いた話によると、特にうちのクランでは『クランストーン』を積極的に使ってくれるメンバーが何故か多いらしい。

 レベルが大幅に上がっているのは、そうした皆の好意のお陰なのだろう。


 ちなみにクランのレベルが上がると、それに応じて所属させることができるメンバー数の上限も『10名』分ずつ拡張されていく。

 現在のレベルは『330』まで上がっているので、これに初期枠の100名分を加えた『3400名』までなら、クランに参加させることができるわけだ。


 実際には『天使ちゃん親衛隊』のメンバー数は『2000名』を少し超えている程度だから……。本当はここまでレベルを上げる必要は、無いと言えば無い。

 まあ、余裕があるのは良いことだと思うけれどね。


「―――スキルの数、多すぎない? これ全部修得したの?」


 視界内に表示されたウィンドウに軽く目を通しながら、シズはそうつぶやく。

 表示されているスキルの量が、あまりに膨大だからだ。

 全部で数十種類ぐらいはありそうに見えるのだけれど……。


「はい、全て修得済みのクランスキルになりますね」

「よ、よくこんなに沢山取れるだけの、スキルポイントがあったねえ……」

「そこはまあ、何しろクランのレベル『330』もりますから」


 ユーリの説明によると、クランスキルはランク毎に『1』点のスキルポイントを支払うだけで簡単に修得できるらしい。なので最大ランクの『10』まで上げたとしても、消費されるスキルポイントは『10』点だけだ。

 クランレベルが『330』もある『天使ちゃん親衛隊』には、そのクランレベルと同じ数値だけの―――つまり『330』点ぶんもスキルポイントがあったから。欲しいと思うスキルは、何でも遠慮なく修得することができたそうだ。


「少し判りやすく分類しますね」


 ユーリがそう告げると。シズの視界に表示されていた巨大なウィンドウが、それよりも小さな幾つかのウィンドウに分離された。

 どうやらスキルの種類ごとに、別々のウィンドウへ纏めてくれたらしい。これなら一通りに目を通すのも、ある程度楽にできそうだ。


「順に解説させて頂きますが―――まずちょっと特殊なスキルが2つあります。

 【招集門設置】と〈クランインベントリ〉です」


 ユーリの言葉に合わせるように、シズの視界の一番左側に表示されていた小さなウィンドウが手前に出て強調表示される。




+----+

 【招集門設置Ⅹ】

   設置可能数:最大で『5箇所』まで

   使用制限:クランのマスター or サブマスター のみ設置可能

        招集門の利用はクランメンバーなら誰でもできる


   任意の地点に『招集門』を設置し、クランメンバーが

   天擁神殿や他の『招集門』から自由に転移できるようにする。

   設置した『招集門』は『48時間』経過後に失われる。


-

 〈クランインベントリⅩ〉

   クランマスターと同じエリアにいるクランメンバーは

   いつでも『クランインベントリ』を利用することができる。

   最大で『200枠』までのアイテムが収納可能。


+----+




「この『招集門』ってのは、さっきユーリが設置してたやつだよね」

「はい、その通りです。シズお姉さまにも見て頂きました通り、見た目は『門』というより『魔法陣』に近いですね。

 基本的にはクランメンバーだけが利用できる『転移門』と考えて頂ければ大丈夫です。『48時間』経つと無くなってしまう、一時的なものではありますが」

「ふむふむ。現状だと設置できるのは私とユーリだけかあ……」


 説明文によれば『招集門』を設置できるのはクランのマスターとサブマスター、つまりシズとユーリの2人だけに限られるらしい。

 とはいえ一度設置すれば、『招集門』の利用自体はクランに参加している人なら誰でも行えるようなので、特に問題も無いだろうか。


「『招集門』は同時に『5箇所』までしか設置できないという制限がありますが、何の労力もコストも必要としませんので、設置自体は気軽に行えます。

 一応『48時間』が経つと無くなってしまいますが……。やろうと思えば定期的に『招集門』を設置しなおして、実質的に効果を永続化するようなことも可能だと思います」

「なるほど、便利だね。……こっちの〈クランインベントリ〉ってのは?」

「クランのマスター、つまりシズお姉さまと同じエリアに居るクランメンバーだけが利用できる、共用の『インベントリ』です。

 誰でも中にアイテムを入れたり、あるいは取り出したりできますので、クラン内でアイテムを融通し合ったりするのに使えると思います」

「おおー、こっちも便利そうだ」


 あとでクランの仲間用に、霊薬(ポーション)を入れておくのが良さそうだ。

 誰でもアクセスできる『インベントリ』なのだから。実質的に『ご自由にお取り下さい』みたいな感じで、霊薬を楽に配布することができるだろう。


「魔物から手に入れた素材で、要らない物を突っ込んでおくのも良さそうだね。

 その素材を必要とする『生産職』の持ち主にきっと届くだろうし」


 エリカが告げたその言葉に(なるほどなー)と感心する。

 要らない魔物素材は売るしかないわけだけれど、どうせ掃討者ギルドなどで買い取ってもらっても、大した金額にはならない。

 それなら、その素材を必要とするクランの仲間に有効活用して貰うほうが、こちらとしても嬉しいというものだ。


 ちなみに〈クランインベントリ〉は利用記録が残るようになっているらしい。

 なので誰がどのアイテムを入れたか、誰が何というアイテムを持ち去ったのかといった情報は、全て後からでも確認できるそうだ。

 もし自分の利益のために、見境なくアイテムを片っ端から持ち出すような人がいる場合は、適宜そういう人物をクランから『除名』することも大事なのだと。

 ユーリとエリカの2人は真面目な顔で、そうシズに教えてくれた。





 

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お読み下さりありがとうございました。

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