200. 何が楽しくて視聴してるんだろ……?
昨日はお休みさせて頂きました。申し訳ありません。
何だか昨日からまた暑くなりましたね……。
それ以降はちゃんと錬金特性を注入しながら、霊薬の調合を行う。
連続使用によって本領を発揮する霊薬である以上、その強みを活かすためには、数を揃えておく必要があるからだ。
プルーフェアを40本×4ライン体制で生産していく作業は、なかなか忙しい。
材料を水球の中に投入して、ただ調合を行うだけなら楽なのだけれど。錬金特性の注入を行うなら、調合中にも手を入れる必要が生じる。
当然ながら水球を4つ浮かべて、4ライン並行して調合を行う場合には、それぞれの水球ごとに錬金特性を注入しなければならなくなるから。各水球の魔力状態を注意深く監視しながら、適切かつ効率的に作業を行わなければならないのだ。
とはいえ、流石に錬金特性の注入にも慣れているから。現在では作業をミスして霊薬の品質を損なうようなことも無い。
なのでシズは霊薬の調合を行いながらも、視界内に自身のステータスウィンドウを表示させて、色々と思い悩む。
作業の傍らに支障なく考え事ができるのは、マルチタスクの良いところだ。
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シズ
白耀族の聖翼種/能力倍率合計【600%】
〔操具師〕- Lv.43 【337%】
〔錬金術師〕- Lv.28 【216%】
〔白百合の天使〕- Lv.19 【47%】
HP: 286 / 286
MP: 527 / 527
[筋力] 30+50 (5)
[強靱] 42+61 (7)
[敏捷] 336+78 (56)
[知恵] 336+69 (56)
[魅力] 72+50 (12)
[加護] 336+36 (56)
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◆異能
《操具術》《特性吸収》《特性超吸収》《落下制御》
《呪詛無効》《呪具浄化》《天使の輪》《天翔る翼》
《調合の妙》《調合の匠》《盟約の主Ⅱ》
《星白の友好者》《恋人送還》《精霊の主》
◇スキル - 2008 pts. / 得意化:4回 伝授修得:1回
〈☆操具収納Ⅱ〉〈☆武器強化術Ⅲ〉〈☆防具強化術Ⅰ〉
〈☆機械操作Ⅰ〉〈☆効能伝播Ⅰ〉〈○服薬術Ⅱ〉〈○食養術Ⅱ〉
〈○罠察知Ⅰ〉〈☆宝箱感知Ⅰ〉
〈☆アルカ鍍金Ⅹ〉〈☆エンハート鍍金Ⅰ〉〈☆特性注入術Ⅹ〉
〈☆特性改変Ⅹ〉【☆特性魔術Ⅹ】
〈☆造金術Ⅲ〉〈☆錬金素材感知Ⅰ〉〈○初級霊薬調合Ⅹ〉
〈○中級霊薬調合Ⅹ〉〈○植物採取Ⅹ〉〈☆効率採取Ⅹ〉
〈○素材収納Ⅲ〉〈○生産品収納Ⅰ〉
【○伐採Ⅰ】【○鉱石採掘Ⅰ】
〈●精霊扶養Ⅰ〉〈●調理Ⅴ〉〈水泳Ⅹ〉
〈☆天使は皆のためにⅩ〉〈☆皆は天使のためにⅢ〉
〈☆口移しⅩ〉
〈☆聖翼種の浮遊能力Ⅹ〉〈☆聖翼種の飛行能力Ⅰ〉
◇魔術・魔法
【☆罠解析】【☆罠回収】【☆錠操作】
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現在のシズの戦闘職―――〔操具師〕のレベルは『43』まで上がっている。
以前より大幅に成長しているのは、『氷結の迷宮』のボスモンスターであるアイスタイタンを狩りまくったことで、経験値を荒稼ぎできたのが大きい。
お陰で生産職の〔錬金術師〕とは、かなりレベル差が開いてしまった。
霊薬の調合は毎日やっているし、昔よりも霊薬を一度に大量に、かつ高速に生産できるようになっているので、こちらも成長していないわけでは無いのだけれど。
レベルアップの恩恵やデイリークエストの達成により、一時は枯渇しかけていたスキルポイントも、現在は2000点を超える数値にまで回復している。
『魔軍侵攻』の開始前にスキルを修得できるのは、これが最後の機会になるだろうから。大事に使うべきポイントなのだとは思うけれど―――。
(……今のうちに修得しておかないと、忘れちゃうからなあ)
そう思い、シズはまず【罠設置】の魔術を修得した。
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【☆罠設置】 ⊿操具魔術
依存能力値:[知恵]
消費MP :100
冷却時間 :20秒
『トラップリスト』に回収されている罠を消費して
視界内の任意の地点に罠を設置する。
罠の形状や発動条件は術者の意思である程度変更できる。
自身が設置した罠は、距離や未発動・発動済に拘わらず
【罠回収】の魔術でいつでも回収し、再利用できる。
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この魔術は『氷結の迷宮』の地下2階で、ウンディーネ達が棲んでいた水槽内の宝箱から『毒水の罠』を回収した際に、新たに修得できるようになったものだ。
その時はスキルポイントが枯渇していたので、修得できなかったけれど……。
今までの経験上からシズは、新たに修得可能になったスキルなどを『修得しないまま放置』すると、かなりの確率で存在ごと忘れてしまうことが判っている。
おそらくはこの【罠設置】の魔術も、今のうちに修得しておかないと、遠からず忘れてしまうだろう。
なので今回の『魔軍侵攻』イベントでは、まず役に立つことは無いだろうと思いつつも。まだ存在を覚えている現時点で、修得しないわけにはいかなかった。
幸い、この魔術も修得時に消費するスキルポイントは『100』だけで済むようなので、大した負担ではない。
他には―――大幅なレベルアップで能力値が大きく増えた結果、[敏捷]や[知恵]、[加護]の能力値がそれぞれ『300』を超えているようなので、これらの能力値に条件が設定されているスキルを伸ばすのが良いだろうか。
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〈☆エンハート鍍金Ⅰ〉
『アルカ鍍金』が施されている装備品に、同じ錬金特性を
重ねて付与することで、その効果を更に高めることができる。
付与効果が『2倍』になり、持続日数も『1日』延長される。
鍍金の成功率が『1%』向上する。
このスキルのランクアップには[敏捷]が『300』必要になる。
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〈☆造金術Ⅲ〉
金属の鉱石から無駄なく、高純度のインゴットを錬金できる。
インゴット作成に必要な鉱石数を少しだけ減らすことができる。
鉱石から作成したインゴットの品質値が『9』増加する。
このスキルのランクアップには[知恵]が『200』必要になる。
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〈☆聖翼種の飛行能力Ⅰ〉
地上から『浮遊』を行うと『1分間』飛行モードとなり
空中を飛ぶ際に速度を『2倍』まで出せるようになる。
飛行モード終了後は通常の『浮遊』状態に切り替わる。
近くのパーティメンバーは『飛行』や『浮遊』の実行中に
手を繋いでいなくても一緒に飛べるようになる。
このスキルのランクアップには[加護]が『300』必要になる。
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現在シズが修得しているスキルの中で、ランクアップに能力値条件が設定されているものはこの3つ。
この他にも、修得に『600』の能力値条件が設定されているスキルが幾つかあるけれど。そちらはまだ当分は条件が満たせそうに無いので除外する。
〈エンハート鍍金〉と〈聖翼種の飛行能力〉の2つは、スキルランクを『2』に成長させた時点で、ランクアップに必要な能力値が『400』に更新されたため、1つだけしかランクは伸ばせなかった。
一方で〈造金術〉のほうはランクを上げる毎に要求能力値が『50』ずつ増加するようなので、スキルランクを『6』まで伸ばすことができた。
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〈☆エンハート鍍金Ⅱ〉
『アルカ鍍金』が施されている装備品に、同じ錬金特性を
重ねて付与することで、その効果を更に高めることができる。
付与効果が『3倍』になり、持続日数も『2日』延長される。
鍍金の成功率が『2%』向上する。
このスキルのランクアップには[敏捷]が『400』必要になる。
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〈☆造金術Ⅵ〉
金属の鉱石から無駄なく、高純度のインゴットを錬金できる。
複数のインゴットから合金のインゴットを錬金できる。
インゴット作成に必要な鉱石数を減らすことができる。
錬金したインゴットの品質値が『9』増加する。
このスキルのランクアップには[知恵]が『350』必要になる。
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〈☆聖翼種の飛行能力Ⅱ〉
地上から『浮遊』を行うと『2分間』飛行モードとなり
空中を飛ぶ際に速度を『2倍』まで出せるようになる。
飛行モード終了後は通常の『浮遊』状態に切り替わる。
近くのパーティメンバーは『飛行』や『浮遊』の実行中に
手を繋いでいなくても一緒に飛べるようになる。
このスキルのランクアップには[加護]が『400』必要になる。
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現在のタイミングで〈聖翼種の飛行能力〉のスキルを成長させられたのは、なかなか嬉しいかもしれない。
一度に『飛行』可能な時間が増えればそれだけ、今夜ソレット村まで移動する際に要する時間を短縮できるからだ。
他の2つ―――〈エンハート鍍金〉と〈造金術〉は正直、今スキルランクを伸ばす意味はあまり無いかもしれない。
まあ、前者は防衛戦に参加する人達の装備強化に、一応活用できなくも無いだろうけれど。後者に関しては完全に生産系のスキルなので、防衛戦で役立つようなものではないだろう。
……それでも、こうして覚えているタイミングで伸ばしておかなければ、存在を忘れそうな気がするから。結局はポイントを使ってしまうのだけれど。
(せめて残りは、防衛戦で使えそうなスキルに割り振ろう……)
【罠設置】の魔術の修得も含め、ここまでに『600』を消費したので、残りのスキルポイントは『1300』。
これだけあれば、とりあえずスキル1つは最大ランクまで成長させられる。
さて、どのスキルを伸ばそうか―――とシズが考えていると。
不意に『シズお姉さま』と、頭の中に直接呼びかけてくる声があった。
パーティチャットによるものだ。もちろんそれが誰からの言葉なのか、シズにはすぐに判別できた。
『ユーリ、どうしたの?』
『違いましたらごめんなさい。その、シズお姉さまが……『配信』を開始するのを忘れておられるのではないかと思いまして』
『………! うわ、ホントだ!?』
何気にシズは『配信』をオンにするのを、忘れることが少なくない。
『強化遠征』のイベント中は、生産中以外はほぼ常に誰かと行動を共にしていたので、シズが忘れていてもすぐに周りが教えてくれたのだけれど。
今日みたいに生産ばかりしている時には、どうしても失念しやすいのだ。
(ラギさんに、後で謝っておこう……)
そう思いながら、シズは『配信』機能をオンにする。
一応ラギが言うには、月に『60時間』ほど配信を行って貰えれば文句はない、とのことらしいから。1日に2時間もやれば大丈夫なのだろうけれど。
それでも、高価なVRヘッドセットを貰ってしまった以上は、なるべく多くの時間で『配信』を行っておきたいとも思う。
『ありがとう、ユーリ。完全に忘れてた』
『ふふ。私もそうですが、皆様きっと視聴を楽しみにしておられますから、気をつけてくださいね』
そう告げて、ユーリからのパーティチャットは途絶える。
《配信キマシタワー!》
《キマシタワー!》
《あっ、いつもの職場ですね。お疲れ様です!》
《休日出勤ヨシ!》
《天使ちゃん、ごきげんよう!》
《どうせ配信開始するの忘れてたんですよね? わかります》
―――同時に、入れ替わりで視聴者から沢山のコメントが寄せられてきた。
視聴者数は長らく確認していないけれど……。どんな時間に『配信』を開始した場合でも、即座に沢山のコメントが寄せられるから。多分ユーリの言う通り、楽しみにしてくれている人は案外少なくないのだろう。
(私の配信を見て、一体何が楽しいのかなあ……?)
コメントを寄せてくれた視聴者の人達と他愛もない会話を交わしながら、シズは内心でそう思う。
生憎とシズには、今までに特定の『配信』を何度も視聴する、ということをした経験がない。
だから自分のように、特に何か面白いことを言えるわけでもない人間の『配信』を楽しみにしてくれている人達の気持ちが、いまいち判らなかった。
シズが行う『配信』は、戦闘と生産がほぼ全てを占めているけれど。シズが戦闘中に果たす役割は主に『仲間のHPやMPの回復』なので、そこに派手さはない。
銃やクロスボウを使って戦ったりもするけれど、それだって普通に射撃を行うだけの地味なものだ。
様々な攻撃スキルを駆使して戦う人が行う『配信』のほうが、よっぽど見応えがあるだろう。
生産に至っては、戦闘以上に地味だ。
生産職に〔錬金術師〕を選択したプレイヤーとして、それなりの腕前に達している自信はあるけれど。『工房』に籠もって延々と霊薬を調合し続けている『配信』を眺めて、一体何が楽しいのかはまるで理解できない。
調合中は割と暇だから、よく視聴者の人と様々な雑談を交わしたりはしているけれど……。大して面白いトークができるわけでもない高校生女子の雑談を聞いて、それで楽しめる人がいるとも思えなかった。
にも拘わらず―――シズが『配信』を開始すれば、まるで待っていてくれたかのように、即座に視聴を始めてコメントを送ってくれる人が結構居てくれて。
そのことを純粋に嬉しいとは思いながらも。どうにもシズは、内心で首を傾げずにはいられないのだった。
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お読み下さりありがとうございました。




