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14/248

14. 7歳差

 


     [4]



 初めて『錬金術師ギルド』を訪ねたシズは、そこで歓迎してくれたギルド職員の人達から、まずギルド施設の中を案内された。

 錬金術師ギルドは建物の1階と2階が『錬金術』で作られた商品の販売スペースになっていて、3階と4階が工房になっている。

 やはりファトランド王国を初期地点に選んだプレイヤーは少ないようで、ゲーム開始の初日なのに販売スペースでも工房のほうでも、錬金術師ギルド内に他のプレイヤーの姿は全く見られなかった。


 そのせいなのか、ギルド職員の人たちもわりと手持ち無沙汰だったみたいで。

 案内の後には、職員のひとりのお姉さんが付きっきりでシズに指導してくれて、幾つかの『霊薬(ポーション)』の生産を体験させて貰うことが出来た。

 生産時の手順などを覚えることができたので、今後はシズ1人でも初歩的な霊薬なら、問題なく作ることができそうだ。




+----+

▲錬金術師ギルドに『職能証明書』を提出し、職人登録しました。

 以降はギルドの工房をいつでも自由に利用できます。

 また自身が生産したアイテムをギルドで販売できます。


◇チュートリアルクエスト『錬金術師ギルドを訪問する』を達成しました!

 報酬:生産職がレベルアップ、生産レシピ×5


★〔錬金術師〕のレベルが『1』にアップしました!

 任意の能力値の『成長力』を1ポイント増加できます。

 レベルアップボーナスとして〔スキルポイント:100〕を獲得。

 以降は生産で経験値を貯めると〔錬金術師〕のレベルを上げられます。


★『メランポーション』の生産レシピを修得しました。

★『ベリーポーション』の生産レシピを修得しました。

★『マカポーション』の生産レシピを修得しました。

★『集中力ポーション』の生産レシピを修得しました。

★『俊足ポーション』の生産レシピを修得しました。


○実績『初めての生産』を獲得しました!

 報酬として〔スキルポイント:20〕を獲得しました。

+----+




 というわけで、たっぷり1時間半ぐらいの時間を掛けてクエストを達成し、無事に〔錬金術師〕のレベルも『1』へアップした。

 予想していた通りレベルアップ時にスキルポイントが『100点』貰えたので、これを消費して〈○食養術〉のスキルを新たに修得する。

 1点だけ増加できる能力値の『成長力』は、今回も[敏捷]へ割り振った。




+----+

シズ

  白耀(はくよう)族の聖翼種(テミュス)/能力倍率合計【110%】


   〔操具師〕- Lv.1 【55%】

  〔錬金術師〕- Lv.1 【55%】


  HP: 19 / 19

  MP: 34 / 34


  [筋力]  5  (5)

  [強靱]  7  (7)

  [敏捷] 26 (24)


  [知恵] 28 (26)

  [魅力]  6  (6)

  [加護] 30 (28)


-

異能(フィート)


 《操具術》《特性吸収》《落下制御》《呪詛無効》《天使の輪》


◇スキル - 20 pts.


 〈☆効能伝播Ⅰ〉〈○服薬術Ⅰ〉〈○食養術Ⅰ〉


+----+




 というわけで、現在のステータスはこんな感じ。

 相変わらずHPが1点も増えないのがちょっと気になるけれど……。これに関しては、もうすっぱり諦めた方が良いのかも知れない。


 能力値については、シズにとって必要な[敏捷]・[知恵]・[加護]の3つの成長力を、とりあえず全て同じ値に揃えようと思っている。

 現時点では3つの能力値で、特にどれが重要―――みたいなのも判断が付かないからだ。全部揃えて均等に伸ばしておけば、とりあえず困らなさそうだしね。


 スキルについては、次にスキルポイントが『100点』ぶん溜まったら、今度は〈☆錬金素材感知〉のスキルを取得するつもりでいる。

 折角『錬金術師ギルド』で霊薬の作り方を懇切丁寧に教わっても、材料を集めることが出来なければ意味がないからだ。


 一応霊薬の生産素材は、市場で買い集めることも出来るらしいけれど……。

 ギルド職員のお姉さんの話によると、素材は買うと結構いいお値段がするので、魔物と戦えるなら都市の外で自力収集した方が利益を上げやすいらしい。


 〔操具師〕という何かと支出が多そうな職業を選択している以上、シズにとって収入源の確保は最重要課題の1つでもある。

 素材を自力で全部集めれば、生産した霊薬の売上がそのまま利益になる。

 ならば、これを活用しない手はないだろう。


『ユーリちゃん、こっちは終わったよ。そっちはどう?』


 パーティチャットの機能を利用して、シズは離れた場所に居るユーリへ向けて、そう話しかける。

 すると、20秒ほどの間があってから回答が返ってきた。


『ごめんなさい、シズお姉さま。製薬の方法について教わっているのですが、他にプレイヤーの方々がいらっしゃらず、ギルド職員の皆様が暇をしていらしたこともありまして、とても丁寧に教えて下さっておりまして……。

 お待たせしてすみませんが、あと30分ぐらい掛かってしまいそうです』

『ん、判った。適当に街中を見て回ってるし、別に急がないでいいからね』

『はい。終わりましたらご連絡しますので、どうぞ楽しんでいらして下さいませ』


 ユーリの邪魔をするのは本意では無いので、会話は端的に済ませた。

 30分程度の時間を潰すなど、大したことではない。何しろ―――この場所にはシズの知らない景色や物品、住民や生活、そして文化といった様々なものが溢れているのだから。

 異国情緒に触れて楽しんでいれば、時間などあっという間に過ぎることだろう。


 ユーリと合流した後は、都市外に出て魔物を狩る予定になっている。

 狩りを行えば、その収入である程度はお金を補充できる筈だし。いま持っている分のお金は、使い切ってしまっても問題無いだろう。


 そう思い、手持ちの残金『800gita(ギータ)』は全額好きに使って構わないと決めて、シズは都市内の商店や露店を見て回り―――。

 そして目に付いた様々な焼き菓子を買い漁るだけで、そのほぼ全額を使い切ってしまった。


 ―――けれど、それは仕方の無いことだと思う。

 だって、どんなに現実感(リアリティ)が伴う世界であっても、ここは仮想空間(メタバース)なのだ。

 この世界で摂取したカロリーは全て仮想のものだから、現実の身体に反映されることが絶対に無いわけで。

 そう思うと―――甘い菓子はこの世界でこそ食べるべきでは? と、そのように考えてしまうのは、誰でも同じだと思うのだ。


《すぐに食べないの?》


 購入した焼き菓子を全て『インベントリ』に収納するシズを見て、不意に妖精がそんなコメントを読み上げる。


「食べるのはユーリちゃんと一緒がいいからね」


《わかる》

《女の子同士の食べさせっこが見られるんですね? 期待してます!》

《流石はシズお姉さま……。幼女の好感度上げに余念がない……》


「幼女て」


 妖精が告げた言葉に、思わずシズは苦笑する。

 ユーリの容姿は幼いけれど、流石に『幼女』呼ばわりされる程ではない。


 とはいえ―――ユーリの年齢が幾つなのかは、シズも知らない。

 ユーリに限らず、ネット上でしか付き合いがない相手には、マナーのひとつとして現実(リアル)の個人情報などをあまり訊ねないよう努めていたからだ。

 もちろん相手が自分から個人情報などを話してくれる分には、喜んで聞くのだけれど。自分語りが好きなアキやラギとは違い、ユーリはあまり自分からそういうことを話すタイプでもないのだ。


 ユーリの背丈は、シズよりも頭ひとつ分ぐらい低い。

 たぶん具体的な数値で言うと、シズの身長が157cmであるのに対し、ユーリは130cm前後ぐらいだろうか。

 そう考えると……ユーリが小学生ということも、普通に有り得そうには思える。


 但し、ユーリは話し方が随分と大人びていて、普段からとても丁寧な言葉遣いを好むところがある。

 また『リリシア・サロン』ではアキやラギといった大人の女性と、政治や社会問題などに関する難しい話を、積極的に交わしていることも多かった。

 だから、見た目以上に大人びて見えることが多いのも事実で……。その辺も含めて考えると、身長がちょっと低めの中学生、という線も充分に有り得そうだ。


『お待たせしました、シズお姉さま。終わりましたので合流したいのですが、いまどちらにいらっしゃいますでしょうか?』


 シズがそんなことを考えていると、不意にユーリから話しかけられた。

 ちょうど頭の中にイメージしていた相手から話しかけられたものだから、思わずシズはどきりとしてしまう。


『えっと、今は神殿の近くだね。ところでユーリちゃんに、1つ質問してもいい? 答えるのが不都合なら、答えなくて構わないから』

『……何でしょうか? シズお姉さまに隠し立てすることは何もありませんので、どのようなことでも訊いて下さって大丈夫ですが』

『ユーリちゃんって、いま小学生? 中学生?』

『小学生です。初等部の四年ですね』

『………………ってことは、10歳になるのかな?』

『いえ、9歳になります。誕生日がまだ来ていませんので』

『そ、そっかあ……』


 1桁年齢は流石に想定外すぎて、シズは内心でかなり動揺する。

 ユーリとはつい先日『リリシア・サロン』にて、濃厚なディープキスを交わしたばかりなわけだけれど。

 今にして思うと……9歳相手にしてしまったのは、普通にちょっとした『事案』だったのでは無いだろうか。

 いや、もちろんあくまでも仮想空間(メタバース)内での行為なので、法律とか条例に抵触することは無いんだろうけれど。


『シズお姉さまとは6歳差……いえ、6月生まれのお姉さまは既に誕生日を迎えておられますから、現在は7歳差ですよね』

『う、うん。そうだね』


 シズの年齢については、案の定と言うべきか既にユーリは知っていた。

 まあ、特にシズは隠しても居ないので、そこに驚きはない。

 とはいえ流石に誕生月まで覚えているとは、思わなかったけれど。


《これは紛う事なきおねロリ》

《尊い……》

《年齢差百合は至高》

《7歳差とか最高やん……》


 ちなみにパーティ会話は『配信』を見ている人にも聞こえるらしくて、視聴者は大変な盛り上がりを見せていた。

 そもそも、ちょくちょくコメントに出てくる『おねロリ』って単語は、一体どういう意味の言葉なんですか……。





 

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お読み下さりありがとうございました。

誤字報告機能での指摘も、いつも本当にありがとうございます。

(大変遅くなりましたが反映させて頂きました)

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― 新着の感想 ―
[一言] どちらかと言えばロリおねではないだろうか? ロリ優位百合ップルはいいぞ!
[良い点] 更新乙い [一言] おねロリはいいぞ
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