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【コミカライズ配信中】プレアリス・オンライン ~天使ちゃんは毎日配信中です!~  作者: 旅籠文楽
3章 -

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109/248

109. ドラゴンの恋人

 


     *



 夕食を終えた後、再び『プレアリス・オンライン』の世界にログインする。

 時刻は19時30分を過ぎた頃。ユーリ達が夕食を終えて戻ってくるまでには、まだあと30分ぐらいは掛かるだろう。


(とりあえず、今のうちに出来るだけ採取しておこうかな……)


 今日という日を過ぎれば、多分もうこの島へは来られない。

 もちろんセイレーンが倒せるようになれば、普通に来るのも可能だろうけれど。おそらくそれは、かなり先の話になると思う。


 ―――セイレーンは、何かの神話にさえ登場するような魔物だ。

 シズ達が最近レベル上げのために戦っている『ゴブリン』などとは、較べものにならないほど強力な魔物であることは、何となく想像がついた。


 というわけで夕食前に引き続き、エストハーブを片っ端から採取していく。

 エストハーブにしてもライフプルーンにしても、現時点でそれらの素材を用いる調合レシピは、何も所有していないわけだけれど。

 とはいえ、遠からず必要になる素材だと判っている以上は、少しでも多く確保しておきたい気持ちがあった。


『おかえり、シズ。精が出るのう』

「ああ―――ただいま、ディア」


 多分、シズの頭上に浮かび、煌々と光を帯びている『天使の輪(ヘイロー)』が、夜が更けた今となっては非常に目立つからだろう。

 採取を開始して間もないうちに、すぐにディアスカーラがシズの姿を発見して、話しかけてきた。


 ディアスカーラには一度ログアウトで別れる際に、シズ達が『天擁(プレイア)』であることを既に告げてある。

 この世界で天擁は『現れたり消えたりする存在』として、広く認知されている。

 だから自身が天擁であることさえ明かしておけば、ログアウトして一時的に姿を消していても、そのことをNPCから訝しく思われることはまず無い。


『シズ以外の3人はまだ戻って来ておらぬのか?』

「あー……。彼女達が戻るには、あと30分ぐらい掛かると思う」

『ふむ、そういうものなのか……。ひとりきりで採取というのも少々寂しかろう。良ければ儂も手伝っても構わぬか?』

「あ、うん。それはもちろん嬉しいけれど―――」


 エストハーブは地面から直接生えている薬草で、サイズも比較的小さいものだ。

 このサイズの素材を、竜の中でも特に大きな巨体を持つディアスカーラが採取するというのは、なかなか難しいのでは無いだろうか。


 シズがそう思っていると。突然、ディアスカーラの身体が一瞬だけ白く輝いて。

 光が収まると―――彼女の身体が、人間と同じものへと変わっていた。


「へ……?」


 思わずシズは、その場で目を(しばたた)かせる。

 先程まであった竜の巨体はどこへ消えたのか―――今シズの目の前にいるのは、ユーリ達と同じぐらい小柄な体躯をした、緑の髪をもつ1人の少女だけだ。


 頭部から角が2本生えている辺りだけは、ちょっと竜っぽいけれど。

 その特徴を除けば、本当に人族(アースリング)のそれと何ら変わらない姿にしか見えない。


「くふふ、驚いたか? この島の竜達はほぼ全員が『人化(レガ)』できるのじゃ」

「……レガ(・・)?」

「む、知らぬのも無理ないのう。『人化(レガ)』とは文字通り、人族に近い姿を取る術法のことじゃな。竜に限らず、高位の存在であれば用いる者は少なくない」


 『レガ』という単語を聞いただけで、頭の中に『人化』という漢字が自然と思い浮かぶ。おそらく、何らかのゲーム的な補佐(サポート)によるものだろうか。


 また、いつの間にかディアスカーラの声が頭の中に直接届くものではなく、普通に耳から聞こえるものへと変化していた。

 どうやら『人化(レガ)』で人間の姿になれば、人間と同じように喋れるらしい。


「どうかの? こちらの姿なら、外見もシズの好みじゃろうか?」

「……と、とりあえず、何か着ない?」


 人の姿で目の前に迫ってきたディアスカーラに、シズはちょっと狼狽する。

 彼女が何ひとつ衣服を身につけていないからだ。

 いやまあ、竜の時に衣服を身に付けていた筈も無いのだから、そのまま人の姿に変身したなら、全裸なのは当たり前かもしれないけれど―――。


「ふむ? 別に儂は、自らの身体に恥ずべきところなど無いが?」

「綺麗過ぎて私が欲情しちゃうから、隠して欲しいかな」

「む。そ、そうか……。そういうことなら、し、仕方ないのう……」


 シズの返答を受けて、ディアスカーラは判りやすく顔を赤らめてみせた。

 強気な性格なのかと思っていたが、どうやら受けに回ると弱い性分らしい。

 そういうところも―――シズはただ、可愛らしいと思ってしまうわけだけれど。


(ま、まだ配信してなくて、良かった……)


 今のディアスカーラの姿を『配信』で視聴者達の目に晒さないで済んだことに、シズは内心でほっとする。

 女の子の身体を、相手の許可もなく第3者の目に晒すようなことは許されない。

 それに何より―――シズ自身がそれを嫌だと思うからだ。


 もちろんシズが使用している機材は『配信』を実行中に限り、通常の製品同様に規制や制限が掛かるはずだから。その場合、ディアスカーラの身体は『謎の光』で保護され、視聴者からは見えなくなっていた筈だけれど―――。

 保護があろうと無かろうと。女の子の際どい姿を無闇に見世物にしてしまうような真似は、同性を愛するシズからすれば断じて望まざることだ。


 ディアスカーラには、シズが持つ予備の服を着て貰うことにした。

 これは以前平日の採取時に、雨で服が濡れたのに着替えを何も持っていなかったのを反省して、後日購入しておいたものだ。

 ディアスカーラは頭部に2本の角が生えているので、その角でシャツが破けてしまわないように、シズも少しだけ彼女の着替えを手伝う。


「おお―――。これは、なかなか儂、カワイイのではないか?」

「うん、とっても可愛いよ。よく似合ってる」

「くふふ、そうじゃろう! 嬉しいのう、嬉しいのう!」


 賞賛の言葉に、素直に喜色満面の笑みを浮かべてみせるディアスカーラ。

 そういうところも、本当に可愛らしい。ユーリ達3人の、誰とも違う性格をしているのも、すっかり彼女に惹かれている魅力のひとつだろうか。


 ディアスカーラに渡した服は、ノースリーブのシフォンブラウスとショート丈のフレアスカート。今の季節を考慮して、どちらも夏物の比較的薄手のものだ。

 ……脇が見えているノースリーブブラウスや、膝上丈のスカートが、どうしても今だけはとても扇情的な衣装に見えてしまうのが困る。


 何しろ―――ディアスカーラは、この服の中に下着を何も付けていないのだ。

 折角服を着て貰ったのに、相変わらずちょっと直視しづらいものがあった。


「シズよ。この服は貰ってしまっても良いのか?」

「うん、それで良ければ貰って欲しいかな」

「ありがとう、友よ。―――これは礼をせねばならぬのう」


 ディアスカーラは、そう告げながらくすりと微笑んでみせる。


「いやいや、礼なんかいらないよ。卵も沢山貰っちゃったわけだし」

「それは毎日出るゴミを押しつけただけじゃ。感謝に値するようなことではない」


 その言葉を聞いて、自分達が産んだ卵を、何の躊躇もなく『ゴミ』と言い捨ててみせるディアスカーラの物言いに、思わずシズは苦笑してしまう。

 とはいえ、彼女は卵のことを『望むと望まざるとに拘わらず』産み出される物だと言っていたから。当事者からすると、その程度の認識なのかもしれないが。


「……お?」


 唐突に、視界内に1つのウィンドウが開いて、シズは驚く。

 そのウィンドウには『フレンドの登録申請』と書かれていた。


 どうやら目の前にいるディアスカーラから送られてきたものらしい。

 無論、ディアスカーラと『フレンド』になるのに否やがあろう筈も無い。シズは迷うことなく、すぐに意志操作により『受諾』を選択した。




+----+

 ▲ディアスカーラ(星白)と相互に『フレンド』になりました。

+----+




 視界の隅に表示させたログウィンドウに、無事ディアスカーラと『フレンド』になれたことが記述される。

 そのメッセージを見たシズは、まず何より(竜も『星白(エンピース)』に含まれるのか)と、たった今知った事実に驚かされていた。

 今までずっと、人族(アースリング)のNPCを『星白(エンピース)』と呼ぶと思っていたからだ。


「ふふ……。竜からフレンドを申し込まれても、一切迷うことなく受諾するとは。シズは本当に変わった人族(アースリング)じゃのう」

「私は同性の子が好きな性分だからね。可愛い女の子とフレンドになれるなんて、嬉しいことでしかないし」

「くふふ……! シズは本当に面白いのう!」




+----+

 ▲『ディアスカーラ』があなたとの関係に『恋人』を選択しています。

  こちらからも同じ設定を行うと、正式に『恋人』関係になります。


 ▲フレンドのディアスカーラ(星白)と『恋人』の関係になりました。

+----+




 ディアスカーラから関係を『恋人』に選択されたので、シズからも迷うことなく彼女との関係を『恋人』に選び返す。

 数秒の間も置かず関係が成立したことに、ディアスカーラは一瞬だけ驚いた顔をしてみせたけれど。

 すぐにいつもの調子に戻り、くふふと愉快げに笑ってみせた。


「流石じゃのう。『恋人』の関係になることにさえ、一切躊躇せぬか。

 ―――では、これから『恋人』としてもよろしく頼むぞ、シズ」

「ん。よろしくね、ディア」


 ディアスカーラが差し出して来た右手を、シズはすぐに握り返す。

 結構強い力で握られたものだから、地味に痛く―――は無いけれど。強固に手が圧迫されているような感覚があった。

 5秒ぐらい経って手が離れても、まだ少しじんじんと右手が痺れている。


「儂らは基本的にこの島から殆ど出ることなく生活しておるが、別に出てはならぬという決まりがあるわけではない。実際、青竜などは偶に出掛けておるしな。

 無論『恋人』から呼ばれれば、隣島まで足を運ぶぐらいは何でもないことじゃ。再びこの島を訪れたい時には、いつでも儂に声を掛けるが良い。人族(アースリング)を4人背に乗せるぐらいは、儂の体躯にとっては何でもないことじゃからのう」

「おお……。それは凄く助かるけれど、良いの?」

「うむ。まあ、多少の手土産でも用意してくれると嬉しいがの」

「んー、手土産ねえ。『甘い物』と『可愛い服』の、どっちが良い?」

「是非両方頼む!」

「あはっ。オッケー、了解」


 服だけでなく甘い物にも興味があるようなので、MP回復用に常備しているイチゴジャムクッキーを渡すと、ディアスカーラはそれを嬉しそうに囓ってみせた。

 このクッキーは森都アクラスの商店で『200gita』で売っているものだ。

 1箱にイチゴジャムを挟んだクッキーが50枚入っているものなので、クッキー1枚当たりの単価はたったの『4gita』になる。


 そんな安価な甘味でも、この島の自然の中で暮らすディアスカーラにとっては、好ましいものであるらしく。なんとも幸せそうな表情でクッキーを囓る少女の顔を見ているだけで、自然とシズの顔も綻んでしまう。

 彼女はクッキーを食べるのに忙しく、採取は全然手伝ってくれなかったけれど。可愛らしい姿が至近距離で見られたので、無論シズに不満など無かった。


 この後―――クッキーの礼としてディアスカーラは、また泳いで帰るのは大変だろうと、シズ達4人を森都アクラスの近くまで送ることを提案してくれた。

 何らかの方法で『死に戻り』するつもりだったから、その提案はとても有難いものだ。シズは感謝を述べて、その申し出を受けることにする。


 というわけで、ユーリ達3人が夕食を終えてログインして来た後、再び竜の姿に戻ったディアスカーラの背に乗って、森都アクラスの近くまで送って貰った。

 竜が都市の近くに着陸すると、住人の人達が大騒ぎになりそうな気がしたから。ディアスカーラとは、都市近くの上空で別れることにした。

 高所から安全に地上に降りるだけなら、聖翼種(テミュス)であるシズの能力で問題なく可能だからだ。


 別れ際に「乗せてくれたお礼に、後でクッキーを1箱メールで送っておくね」と告げると。竜の姿のままでもはっきりと判るぐらい、ディアスカーラはとても嬉しそうにしていた。

 その無垢な笑顔をみていると―――何だか、運送代金を『200gita』の物だけで支払うのは、ちょっと申し訳無い気がしてきたから。

 後でクッキー以外にも、幾つか甘い物を見繕って送ろうと思う。





 

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VRゲームジャンルの四半期ランキングで3位に入っておりました。

偏にいつもご支援下さいます、皆様のお陰です。ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] いまの段階で手に入りにくい素材が大量に……(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
[一言] ドンマイ視聴者!
[良い点] いっぱい食べる君が好き。 甘いもの食べてニッコリする娘っていいよね… そして竜と躊躇いもせずフレ&恋人設定するシズ姉様すげぇ。
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