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【コミカライズ配信中】プレアリス・オンライン ~天使ちゃんは毎日配信中です!~  作者: 旅籠文楽
3章 -

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104/248

104. セイレーンと竜

 


     [12]



 昼食を食べ終えて『プレアリス・オンライン』の世界に戻ると、まだシズ以外は3人ともログアウト状態だった。

 一人暮らしのシズと違い、3人はそれぞれ家族と一緒に昼食を取るだろうから、食事に時間が掛かるのは当然のことだ。


 とりあえず『配信』だけは開始してから、シズは北門の付近でまったりと時間を潰すことにした。

 すぐ目の前にある森都アクラスの北門では、衛士の人達が暇そうにしている。

 元々この都市の北門は、西門や南門に較べると通行者が随分と少ない。

 特に今日は旅客も馬車も殆ど通っていないように見えるから、いつも以上に衛士の人達は暇を持て余しているのだろう。


 それならそれで好都合―――と思い、早速シズは衛士の人に話しかけてみる。

 暇をしているなら、雑談にぐらいは応じて貰えると思ったからだ。


「すみません、ちょっと良いですか?」

「おや―――よくここを通るお嬢さんだよね。一体何のご用かな?」


 相手に顔を知られていることに、内心でシズは驚かされる。

 シズはよく北門を出た先の川沿いで、ヒールベリーの採取や水蛇の討伐を行っているから、確かにこの門を利用する機会は少し多いわけだけれど。

 とはいえ、まさか衛士から顔を覚えられている程とは思わなかった。


 ……まあ、別に顔を知られていても不都合があるわけではない。

 暇を持て余している衛士と会話を交わし、シズは様々な情報を入手する。


 この北門を出た先は『北』にではなく『北西』方向に道が続いており、その先に畜産に力を入れている村落があるということ。

 また、その村落のすぐ近くに『迷宮地(ダンジョン)』がある話などを聞くことができた。


「北東にある島? ああ―――クラーバ島のことだね」

「へー、クラーバ島って言うんですか」

「危険な島でね、船乗り達には結構有名な場所なんだよ」


 この都市の北東にある島についても、訊ねてみると話を聞くことができた。

 現実世界では『マン島』がある位置に存在するあの島は、『クラーバ島』という名前らしくて。船乗り達には『絶対に近づいてはいけない島』としてよく知られている場所らしい。


「危険って、どういうことですか?」

「あの島の近くにはセイレーンって魔物が棲息しているんだけれどね。この魔物が危険の原因で、魅惑の歌で人を惑わすんだよ」

「人を惑わす……?」

「俺も人伝に聞いただけだから詳しくは無いんだが……。船乗りを誘惑する歌で、それを聞いた男連中は自分から海に飛び込んでしまうらしい」

「へー」


 ちなみに衛士の話によると、セイレーンの歌声は男性にしか効果が無いそうだ。

 なので、仮にシズ達が遭遇したとしても、歌自体は脅威とはならなそうだ。


 もちろん歌を抜きにしてもセイレーンが危険な魔物であるようならば、シズ達にとっても恐ろしい存在になるのだろうけれど―――。

 少なくとも『海の日』である今日は、沿岸部や近海に『魔物が出現しない』ことが明確にゲームの運営側から告知(アナウンス)されているわけだから。

 そうした危険は、一切考慮しなくても大丈夫だろう。


(……ちょっとだけ、会ってみたい気もするけどね)


 おそらくセイレーンと会うことは無い事実を、少しだけシズは残念にも思う。

 ファンタジー小説などで『セイレーン』は、その歌声の綺麗さに見合うぐらい、容貌的にも美人な女性として描かれていることが多いからだ。


 綺麗な女性とは、ちょっとお近づきになってみたかった気もする。

 たとえ―――それが『魔物』であるとしてもだ。


「ちなみに『クラーバ島』は、竜が住む島としても知られているな」

「え、そうなんですか?」

「ああ、有名な話だよ。セイレーンの歌が聞こえないように、島から離れた場所を運行する船からも、竜達が島に離着陸している姿が時折見えるそうだ。

 ―――まあ、具体的にどのぐらいの数の竜が棲んでるのかは、誰も知らないんだけれどな。何しろセイレーンが怖くて、近づけやしないんだから」


 そう言って、おかしそうに衛士の男性は笑ってみせる。


《これはイズミちゃんのフラグ回収ですね》

《良かったですね、お姉さま! 死に戻りはしやすそうですよ!》


(うーん……)


 セイレーンといい竜といい―――強力な魔物が跋扈している『クラーバ島』は、おそらく現在のシズ達が行くにはまだ早すぎる(・・・・)場所なのだろう。

 きっと本来は、もっとレベルを沢山上げてから向かうような所なのだ。


 とはいえ―――今日は沿岸部や近海に『魔物が出現しない』と保証されているのだから、竜が住む島も沿岸部だけに絞れば、探索は可能かもしれない。

 死ぬなら死ぬで構わないけれど。せめて現地ならではの植物素材などを、少しでも回収してから『死に戻り』したいものだ。


 衛士の人と他愛もない話を続けていると、程なくユーリ達が再びログインしてきたので、北門の前で合流する。

 それから改めて北門を通行して、『浮遊』で東側へ移動して海岸に出た。


《水着生着替えのお時間ですわ!》

《録画の準備はバッチリでしてよ!》


「いや、まあ……着替えるけどさあ……」


 シズは【瞬間装備変更】の効果を利用して、その場で瞬時に水着へと着替える。

 一瞬のことなので、視聴者からは何も見えていない筈なのだけれど……。

 生着替えだとか録画だとか、色々言われていたせいなのか。何だかちょっとだけ気恥ずかしいものがあった。


《お姉さまのスラリとしたお腹、あぁ……魅惑的ですわ》

《ほっぺたですりすりしたいです!》

《何その素敵なサービス! お幾らですか!》


「あら、駄目ですわよ? お姉さまのお腹にすりすりして良いのは、わたくし達の特権なのですから」

「ええ、そうですね。こればかりは譲れません」

「当然です」


 ここぞとばかりに、シズのお腹に頬を寄せてくる3人。

 気恥ずかしさと擽ったさに耐えきれず、慌ててシズは3人から距離を取った。


「もう……。いいから、とりあえずストレッチをしよう?」

「そうですね、大切なことです」


 海岸で全員水着に着替えた後に、入念に準備運動を行う。

 これから遠泳するのを思うと、ここは疎かにはできないところだ。


「じゃあ、のんびり行ってみようか」

「はい、シズ姉様」


 身体が温まった辺りで、シズ達は再び海へと繰り出した。

 陽光で温められているせいなのか、水温は午前中よりもずっと温かい。


 ―――と、そう思えていたのは束の間のことで。

 4人で手を繋ぎながら10分ほど泳いで、沖合まで出ると。その辺りの海水は、昼過ぎのこの時間帯でもしっかり冷たいものだった。

 とはいえ夏場の暑気の中では、冷たい水の方が嬉しくもある。


『少し波が出て来ましたね』


 パーティチャットに切り替えて、ユーリがそう告げる。

 沿岸部に近い辺りは、穏やかで落ち着いた海だったのだけれど。沖合ともなるとやはり状況が変わってくるようだ。


 とはいえ〈水泳〉スキルのランクが『5』まで上がっているシズ達にとっては、多少の波など苦にもならない。

 海面で波が起こっていようと、海中に数メートルも潜れば静かなものだ。

 両足を適度に動かしているだけでスイスイと泳げてしまうし、息継ぎは20分に1度行えば良いから、滅多に海面へ顔を出す必要も無かった。


『お姉さま、お姉さま』

『……うん? どうしたの、プラム?』

『お姉さまの身体に、抱き付きながら泳いでも構いませんか?』

『別にいいけど……』


 シズがそう答えると、嬉しそうにプラムが背中に抱き付いてきた。

 更にユーリが正面側からシズの身体に抱き付いてきて、イズミもまたシズの脇腹の辺りに抱き付いてくる。

 脚をゆっくり動かすだけでもスイスイ泳ぐことができるから、3人に引っ付かれても特に移動面での問題は無いわけだけれど。

 とはいえ、何と言うか―――ちょっとこれは幸せ過ぎる時間のような気がして、自然と顔がにやけてしまった。


『シズ姉様のお腹、すべすべです』

『あら、お姉さまは背中だってすべすべですわよ?』

『うふふ♡ シズお姉さまは胸元だってすべすべです♡』

『……うん。とりあえずユーリちゃんは、その指をやめてね?』


 ビキニトップスの内側に、こっそり指を侵入させてくるユーリを窘める。

 それほど露出が強いものではないから、しっかり胸元を隠してくれるビキニではあるけれど。流石に水着の内側を直接触られるのは、シズとしても恥ずかしいものがあった。


『……あとで私の水着の中に、好きなだけシズお姉さまの手を入れて下さって構いませんから。それが交換条件と言うことで、許して頂けませんか?』

『駄目』

『むう、残念です……』


 シズは頑なに拒むと、ようやくユーリは指を入れるのをやめてくれた。


 お願いだから―――そういう心が思いっきり揺れるような交換条件を、急に提示してくるのは止めて欲しいと。

 シズは内心の動揺を必死で抑えながら、本心からそう思っていた。





 

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お読み下さりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙い
[気になる点] 配信してる状態で水着の内側とか出来ないモードになってると思うのですが…。 [一言] 配信してなきゃ全裸水泳でも可能かもしれないけど配信切ったって様子なかったよね。 パーティーメンバー以…
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