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白蛇の逆行


「.......なーんにもなくなっちまったな。」

「なんにもない.......」

「こんな更地は初めて見たな.......」

「そうだろう?そうだろう?」


 破壊範囲となっていた森の上から少し外れた空から、フロウの力(?)で空に浮いている俺達は、文字通り更地となった元・龍の森を見下ろした。


 あれほど生えていた木々は言わずもがな、モンスターも、岩も、洞窟も、そして、あれほどてこずっていた炎鳥も、全てが消えていた。


 いつも平気な顔押して超人的な行いをする(いつの間にか人間の姿に戻った)オーガも、今回ばかりは驚いていた。


「.......魔術も破壊の対象なのか.......」

「そうだぞ?ほら、水も、炎も、何も無いだろう?」


 どうやら、存在するものは何であろうと「破壊」するらしい。炎鳥が噴いた炎も、俺が出した水も、その対象だった。



「.......それで、これからどうするんだ?」


 炎鳥は無事に倒したものの、この更地には流石に住めない。それに、恐らくどこかの亜空間にある(シャトー)も戻さなければならない。


 物を壊すという事は、それを直す手段を持っていなければならない、とはよく言うが、果たしてどうだろうか。



「そうだなあ.......まずは、あれの回収だ。」


 フロウはおっとりとした口調で、ほれ、と地面の一点を指さした。



「.......石?この前の、『王者の石』と同じような......いや、色が違う?」


 フロウが指した場所には、いつか魔狼を倒した時に落ちていたものと同じような、透き通るよな赤色をした石が落ちていた。



「これは炎の鳥の力の根源だ。まあ.......『黒炎の石』だな。」


 なるほど。先ほどの「ウロボロス」で炎鳥を倒したから、石だけが残った、という事か?


「『破壊した』ということは、『討伐した』という事だから、石だけが残ったのだろうなあ。他の魔物の物は.......まあ、どこかに吹き飛んだのだろうな。」


 それだけ炎鳥が規格外だった、という事にしておいていいのか?


「人の子が欲する魔術はあれ(黒炎の石)がないといけない。今のうちにとって置いたらどうだ?」



 そういえばそうだったな。炎鳥を討伐することが目的じゃなくて、炎鳥の羽と魔法石を手に入れることが目的だったな。



「.......ん?炎鳥の羽?」


 ちょっと待て、「炎鳥の羽」が必要だったんだよな?で、炎鳥はさっき討伐した、というか、存在自体を葬った、ってことだよな?



 


 じゃあ、もう「炎鳥の羽」って、手に入らなくないか?




「................シャトー、もしくはオーガ。ないとは思うが、『炎鳥の羽』って、持ってないか?」


 まだ望みを捨てるのは早い。シャトーはともかく、物理的に大きいオーガなら、この中で一番炎鳥に近かったオーガなら、羽の一枚ぐらい持っていてもいいかもしれない。




「はね?」

「そうだ。一枚でいい。持っていないか?」


「ん........ん!」


 オーガが自分の服をパタパタと触ると、一枚の赤い羽を差し出した。


「........よかった......オーガ、ありがとう。助かった。」

「!!!」


 無意識に礼の言葉を口にしていたことに気が付いた時には、既に俺はオーガに飛びつかれていた。



「お手柄だな、オーガ!これで、えーと、『炎鳥の翼』ができる!」

 シャトーがいつの間にか取って来た「黒炎の石」をほら、と渡した。 

 

 あんた、今、本なんだろう?どうやって取って来たんだ?




「ふふふ......では、再生の時間(とき)、といこうか。」


 

 俺達のやり取りを笑いながら見ていたフロウが、さて、言うように言った。


「再生?」

「そうだ。『ウロボロス』の前口上.....『死と再生の時間(とき)』とあるだろう?死は既に過ぎ去った。今からは、再生の時間だ。」


 よかった。貴方が再生してくれるんだな。流石にこの規模は俺では無理だと思っていたところだ。



「フロウ、さいせい!」

「頼むぜフロウ!早く(オレ)も戻してくれ!」


 シャトーがこうもあらかさまに焦っているのは珍しいな。


「わかったわかった。......さあ、始めるぞ。戻すのは......炎鳥がこの森に至る前、でよいか?」


 戻す時間まで指定できるのか?まあ、それでいいんじゃないか?それが一番平和だ。


「......頼む。」

「もり、もどす!」

「フロウ、頼むぜ!」






「では......『白蛇の逆行』」



 フロウが呪文を唱えると、森だった更地に銀色の大きな魔法陣が展開され、細長い何匹もの光の蛇が現れた。


 幻想的ともいえるそれは、光を受けて輝きながら、嘗ての俺がよく知る森を紡いでいった。



 

 

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