「龍の森」捜索其の捌
「なんだ.........何が起きているんだ......?」
槍が何かを捕らえた直後、突然降って来た黒い炎に危うく燃やされかけ、さらに降って来た大量の雨によってなすすべなく地面に叩きつけられたガルーンは呆然としていた。
耳に届くのはハンターたちの戸惑う声と、炎に触れてしまったものの悲鳴、そして、姿なきモンスターの呻き声も聞こえた。
「どういうことだ......?確かに当たったはずだ.....」
ガルーンには何が起きたのか分からなかった。
ただ一つ言えることは、自分が想像していたこととは違う事が起きているという事だけだった。
「.....いかがいたしましょうか、ガルーン様。こちらにいては危険です。想定外の事態ですので、いったん退いたほうが.....」
「それはだめだ!二度もあやつに負けるなど、このガルーンのプライドが許さぬ。」
退くのは簡単だ。兵士の持つ撤退を知らせる笛を吹き、全軍を森から非難させればいい。緊急事態であるから、理にかなった行為だ。
しかし、ハンターはそれでいいかもしれないが。ガルーンは違う。
あの「銀槍」がまた龍に負けたのだ、と蔑まされるのは目に見えていた。
「たかが雨だ。触れても死なぬ。もう一度、もう一度あやつに攻撃を......」
ガルーンがそう言った時、地面に一筋、銀とも白ともいえぬ色の光が走った。
ガルーンの周りだけではない。他のハンターのたつ場所、否、森全体に次々と光が走り、地面がきらきらと輝いた。
「あの......これ、何なんでしょう?」
その光は、魔術を幾重にも巡らせて必死に水と炎に耐える6人のハンターにも見えた。
「......線、と言うよりは、何かを描いているな。これは......」
弓使いのハンターが光るそれに近付き、目でその線を追った。
「森全体に続いているな..?しかも丸みを帯びている......」
「まさか.........魔法陣か?!」
丸く、やたらと線が多い物。弓使いのハンターの脳裏には、魔法陣しか思い当たる物がなかった。
「魔法陣だって?!こんな大きなものが?」
その言葉にローブを纏ったハンターも反応した。
「確かにそうだが......相棒、確認してくれ。魔法陣だったら、事が事だ。」
相棒に言われたローブを纏ったハンターは、「千眼」、と唱え、森全体を見渡した。
「.........」
「どうした?.........!!」
弓使いのハンターが尋ねようと口を開いた時、今までに聞いたことが無いほどの轟音が、その場にいた6人の耳に届いた。
「まずいっ!........『赤い糸』、『黄昏の道』っ!」
ただならない何かを感じ取った弓使いが、緊急脱出のための呪文を唱え、6人を森の外へと運んだ。
そしてそれは、森が大きな銀白の何かで包まれた瞬間と、ほぼ同時だった。
次回の更新は3週間後になると思います。