「龍の森」捜索其の陸
「あ、治安部隊の皆さんが動き出したみたいですよ?!」
先程の偵察の後、木陰に隠れて態勢を立て直していた6人は、明らかに激しくなった空を見上げた。
「これは......こんなことろで隠れていたんじゃあ、後からあることないこと言われそうだな...」
弓使いのハンターはため息をつくと、木陰から顔を出した。
「だがな相棒、自分の命も惜しくないか?どうせ攻撃しても当たらないんだ。」
ローブを纏ったハンターは、「陽炎」、と呟くと、再び認識阻害の魔術を掛けた。
「これで、大抵の人間には見えない。このまま様子を窺ってもいいんじゃないか?俺たちはまだしも、この子たちにはまだ将来があるんだ。」
「だがな......このまま不名誉な臆病者として死ぬ可能性もあるんだ。だったら、最後に派手に散ってみないか?」
老練のハンター同士の静かな争いに、3人の新人ハンターは黙ってみている他なかった。
「相棒、そう言うことは、その矢が当たってから言うんだな。」
ローブを纏ったハンターが苦笑しながら言うと、当の本人である弓使いも、気が付いたかのように笑った。
「ふ、.......それもそうだな。」
この二人も勝てない相手に挑むほど馬鹿ではない。そもそも隠密が得意な2人である。攻撃が当たらなければ、ただ己の居場所を晒すだけである。
「俺も少し生き急ぎすぎたようだ。」
弓使いはそう言うと、「陽炎」を包むように緑色のベールを展開した
「『木の葉は森へ』.......これでいいだろう?相棒。」
ローブを纏った相棒は、彼が最高級の隠蔽術を使ったことを確かめると、固唾を飲んで見守っていた4人のハンターに声をかけた。
「もう安心だ。後は見物といこう、若者よ。仲間内で語って見ろ?暫く英雄になれるぞ?」
「.......確かに、今行けばただの無駄死にですね。」
「防御魔術も施しておきます。」
術師と盾使いが答えると、空の様子を窺っていた剣使いが、一つの影を捕らえた。
「..あれは......ガルーン様?」
「ほう?」
その言葉に5人が空を見上げると、先程弓使いが上昇したよりも少し上に、この場所で最強ともいえるハンターにして今回の討伐隊の隊長、「銀槍」ガルーンが、大きな鷲の上に立ち、槍を構えていた。
次回の更新は当方の都合で2~3週間後になりそうです。
暫くお待ちください。