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感情と拳


「うおー・・・・」

「みず......」


 轟音と共に炎鳥の頭上に降り注いだ水は、一瞬のうちに炎鳥の姿を隠した。


「『滝つぼ』....じゃなくて、滝だろこれは......」


 当然のようにオーガと俺がいた場所も水で満たされ、間一髪逃れた俺達は、呆然とするしかなかった。


 暫くして魔術の効果消滅と共に水が消えた後には、少し薄くなった結界と、最下層まで押しつぶされた炎鳥がいた。


「......リリス坊、ナイスチョイスだったな。だが、もーう少しだけ穏やかなやつを使ってくれないか?」


 「滝つぼ」(これ)も十分穏やかなのだが?これ以上抑えるととんでもなく平和なものになるぞ?


「......分かった、が、水系統は元々回復が主だ。数少ない攻撃魔術はかなり凶暴なものが......」


「とり、しゃべった!!」


 俺がシャトーと話していると、オーガが慌てて叫んだ。


 慌てて下に目をやると、やっと意識を取り戻した炎鳥が目に見えるほどの禍々しい殺意を纏いながらこちらを睨みつけていた。



 ......誰だって怒るよな。突然頭から水をかけられたら。いや、落とされたら。



「......あいつ、なんで怒ってるんだ?」


 お前、さては人の心が無いな?



「....怒ってるぞ。」

「はね、たたんだ!つよいの!」


 どうやら、羽で体を包むようにしているらしい。そして、つよいの、という事は......


「強い?どういう意味だオーガ?」


 いそいそと大きな魔方陣を出したオーガに向かって無機物(シャトー)が声をかけたが、オーガはそれどころではないようだ。その間にも炎鳥は全ての殺意を魔術に込めたかのようなどす黒い炎を纏っていた。



「......シャトー......これは、命の危険がある。」


 オーガの代わりに俺は水の魔導書をめくりながら答えた。




「大体の人を怒らせた時の拳は......一番痛い。」


 もはやどす黒い炎の塊となった炎鳥は、明らかにこちらに向かって攻撃しようとしていた。





「それを先に言ってくれ!!」


 やっと理解したシャトーが、慌てて結界を強化し要としたと同時に、炎鳥が溢れんばかりの黒い炎を吹きだした。



「ん!」

「『赤眼』!..『蜃気楼』!『海の守護者』!『白鱗』!『遥かな......っ!」


 オーガの張った魔法陣と共に、俺が唱えた術が次々と発動する最中、俺の視界は黒い炎で埋め尽くされた。

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