限界と回復
「さあさあリリス坊!やってやろうぜ!」
自分はやらないくせに嫌にハイテンションだな。
「オーガもがんばる!」
オーガは結界破らない程度に頼む。
「......よし。」
俺は眼前にある水竜と炎鳥を交互に見た。まずは先制攻撃をしたほうがいいのか?それとも様子を窺った方が......?
「......まあ、やってみるか。」
取り敢えず俺は竜に炎鳥を攻撃させた。
「グエッ......?」
俺の意思によって動く竜は、すぐさま炎鳥に絡み付き、その体を切り裂いた。
流石、水だけあって姿かたちが自在に変えられるんだな。これは少なからず炎鳥にもダメージがあるのか?
「リリスぼー!そいつ、回復できるからなー!気を付けろよー!」
シャトーの言葉に炎鳥を見ると、確かに傷が消えていた。それどころか、明らかに怒らせたらしく、攻撃の態勢を取り始めた。
そういうことは先に言え。
「......っ盾!」
「オーガ、相殺してやれ!」
魔力を炎に変えているのか、温度が一気に高くなった。俺は竜を盾に変え、オーガはさらに被害が出そうな形で応戦した。
「うわっ!......すごいな。」
炎鳥の攻撃は囂々と音を立てながら、展開した盾によって弾かれ、オーガの炎によって無力化した。
「とんでもないなあ!負けることはないが、結界がもつかどうかだな。」
そんなヤワな結界を張らないでくれ。
「負けることはない、と言うのは?」
「力的にはオレ達が勝っている。だが炎鳥は回復持ちだ。何かこう、決定的なやつを与えるか、回復をどうにかしないと持久戦になっちまう。そうすると結界にダメージが蓄積してだな......」
「......『咆哮』っ!」
会話中もお構いなし、と言わんばかりに炎鳥が咆哮した。反射神経が鍛えられそうだ。
「まあ、壊れちまうんだ。何とかして短期決戦に持ち込めないか?」
結界が壊れるのはまずいな。燃えやすい物しかない森に炎が降り注ぐのは想像もしたくない。
短期決戦に持ち込むには、あの回復を何とかしなければならない。この間にもオーガが溢れんばかりの炎をお見舞いしてるが、同属性で相性が悪いのか、ほとんど回復されている。このままちまちま削っていたら、確かに結界も壊れそうだ。
「この竜が魔術を撃てれば、かなりの攻撃力が期待できるのだがな.....」
こいつは水神の一部だけあって魔力も俺をはるかに上回っている。こいつに俺が使っている魔術が使わせることができれば、威力は期待できる。
「ふむ.....なんか憑依できそうなやつはないか?闇魔術とか、黄泉魔術とか.....医療系であるんじゃないか?」
俺も自分が知っている魔術をできる限り探した。なにかこう、人を操れる魔術はなかったか?
シャトーが言ったように医術魔術の中にあるかもしれないと必死で考えた。
「......あ。」
「あったのか?!」
俺の頭に一つ、該当する魔術が浮かんだ。
ただ、その魔術は強い魔力の塊に効くかどうかは分からない、微妙な代物だった。