「龍の森」捜索其の壱
「しかし.....この森はどこまで続いているんだ?」
「はい.....いつまでたってもそれらしきものはありませんよね.....」
周囲を警戒しながら進む6人のハンターは、果てしなく続く木々の間を縫いながら呟いた。
「龍の森」の探索を開始してはや3時間が経過しようとしていたが、低級モンスターの姿しか見えない。
「もっとこう.....高値で売れそうな素材のモンスターとかいないんでしょうか。『宝箱』って言われてるぐらいなのに.....」
魔術師と思しき女性がふとこぼした。
「「『宝箱』?」」
初めて聞いたその言葉に、3人が反応した。
「ほう.....お嬢さんはよく知っているなあ。」
「はい。私達魔術師は、杖やら魔導書やら、強い物には何かと素材が必要ですから......『困ったら龍の森に行け。』とはよく言われたものです。」
熟練の弓使いのハンターはうんうん、と頷いた。
「俺も野原ではなかなか活躍できないからなあ、若い頃は5、6人で向かったものだ。」
「へえ......」
新人の剣使いのハンターが感心していると、ローブを纏ったハンターが新人ハンターの耳元で囁いた。
「ただな、この話には続きがあるんだ。『困ったら龍の森に行け。命の引き換えに、宝のような財宝が手に入るだろう。』ってな。」
「命と......?」
「その続きは.....知りませんでした.....」
剣使いのハンターだけでなく、魔術師の女性も息を呑んだ。
「一体、どういうことですか?」
話を聞いていた盾使いの新人ハンターと、槍使いの新人ハンターも興味津々で聞いた。
「まあ、いずれ分かるさ。」
弓使いのハンターはそう言うと、徐に弓を構え、森の中に向かって放った。
「ギァッ!」
「......!」
矢が放たれた先から断末魔が聞こえ、近付いてみると化け狐のモンスターが横たわっていた。
「こいつは、大手柄だな。この爪、牙......そこそこ高く売れるな。」
「す、すごい......」
新人ハンター一行が感動していると、突然、木々がざわざわと揺れた。
「......ん?」
「今、風の向きが.......」
2人の熟練ハンターが辺りを警戒すると、探知魔術を使った魔術師が叫んだ。
「上です!この森の上空に、何かいます!」
「上?!ここからでは見えないな......開けた場所に行こう。」
「「はい!」」
少し開けた場所に移動した一行は、上を見上げた。青く晴れた空のかなり高い場所に、一つの黒い影が動いていた。
「何が.......いるのでしょうか.......」
「さあな.....ただ、かなり高いところにいる。もし、例の龍だったら.....」
「龍だったら.....?」
「警戒を怠るな。いつでも逃げれるようにしておけ。お嬢さん、防御魔法を。」
「は、はい!」
魔術師が魔法陣を展開すると、黒い影の動きが止まった。
「とま、りましたね。」
「攻撃を仕掛けてくるかもしれないな......相棒。」
弓使いのハンターがそう言うと。ローブを纏ったハンターが、懐から黒い紙を取り出した。
「ああ。『陽炎』。」
ハンターがそう言うと、黒い紙が、フッと消え。ハンターたちの周りを黒い霧が囲んだ。
「これで大丈夫だ。俺たちの姿は見えていない。」
「すごい......!後で、魔導書を教えてくれませんか?!」
魔術師の女性が興奮気味に話しかけると、空を見上げていた剣使いのハンターが突然叫んだ。
「あ、あれ.......!」
5人が見上げると、空の遥か上、黒い影のすぐ近くに、大きな火球が浮んでいた。