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雑さと変身


「よし、リリス坊!準備はいいか?」

 燻製は案の定食べ尽くされ、腹ごしらえは上々のオーガと共に、魔導書としてふわふわ浮くシャトーを連れ、城の外に出た。


「俺は、大丈夫だ。」

「オーガ、だいじょうぶ!」



「よし、じゃあ、確認な!」

 シャトーはそう言うと、朝食時に考えた“作戦”を発表した。


「まず、オーガに乗って空.......城からかなり離れた場所に行く。」

「ん!しろ、はなれる!」 

 うん、これが一番重要だ。万が一城を焼き尽くされたらたまったものじゃない。


「んで、なるべく大きい火の玉を出す!」

「ん!ひ、だす!」


 これは、炎鳥を誘き出すためのものだ。どうやら炎鳥はより大きな火に向かって飛んでくるらしい。だから、炎鳥に負けないぐらいの大きな火の玉を、十分注意を払ったうえでオーガに出してもらう。


「そして、炎鳥が来たら、すぐに球形の結界を張る。ま、これはオレがやるぜ!」

 これでも魔術師のはしくれだぞ?とシャトーが自信ありげに言った。こればかりは、現状シャトーを信じるしかない。多分、俺では役に立たないからだ。



「そしたら、リリス坊の出番だ!さっき覚えたばっかりの、『水神の使者』を使う。」

 それは俺の仕事だ。せっかく教えてもらったんだ、有効に使わなくてはならない。


「で、もし炎鳥が叫んできたら、すぐに『魔狼の咆哮』で相殺する!」


 これはかなり雑だと思うのだが。超人(お前たち)は平気かもしれないが、俺は大丈夫なのだろうか。


 一応遮音壁も準備しておこう。


「まあ、後はそれなりに、な!」

「ん!」

「.......うん?」


 かなり心配だ。俺もオーガも水属性の術を持っているとはいえ、炎鳥に敵うかどうかわ分からない。最悪全てを消し去る術でも使って、再戦をするのもありかもしれない。




「じゃあ、早速出発だ!オーガ!」

 人の話を聞いていたのかよく分からないが。行き当たりばったりが過ぎる作戦を抱えながら、俺たちは「炎鳥」討伐へ向かうことになった。


 まずは空へと上昇すべく、シャトーがオーガに声をかけた。オーガはん!と言うと、くるりと後ろを向き、俺に言った。


「りりす、のる!せなか、のる!」

「ささ、乗ってくれ!」


 

 いや、俺はてっきりオーガが龍に変身してから乗ると思っていたのだが?まさかの人間態で乗るのか?


「え.......いや、その.......」

「ん!のる!」


 拒否権はなさそうだな。


 仕方なく、俺は仮にも自分よりも小さい見た目のオーガの背中におぶさる形で乗った。


「オーガ、大丈夫か?」

 さすがにそこまで重くはないと思うのだが.......


「ん!だいじょぶ!」

 ならよかった。.......のか?この絵面はよくないのでは?


「りりす、つかまる!」

「.......!あ、ああ。」


 オーガに言われたとおりに、オーガにしっかりと掴まると、オーガはそのまま走り出した。


「.......え?」

 作戦通り、城と反対方向へまっすぐに走り出すと、木々の間を抜け、少し開けた場所に出た。


「とぶ!」

「いっけえー!オーガ!」


 後ろからシャトーの声援も聞こえる中、オーガは、開けた場所の中央程まで走ると、勢いよく地面を蹴った。


「いや、そんな事で飛べるわけ.......」


 すると、オーガと俺の体はどんどん上昇していき、その間にオーガの体は少しづつ変化していった。


 まずは手が、足が、胴体が、顔が、大きさが変化していき、遂には俺が操っていた白竜よりも少し小さな、黒い龍となった。



「.......そんな風に変身するんだな。幻獣って。」

 俺のつぶやきは、オーガの翼が風を切る音でいともたやすくかき消された。

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