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乙女と魔術師


「突然訪問致しましたご無礼、お許しください。」

 窓の外にいる人影はそう言うと、深く一礼した。


 訪問、っていうより、不法侵入未遂よね?窓が開いてたら、入るつもりだったわよね?


 リコがフー!と威嚇し、窓を睨みつける。


「........貴方は誰なの?場合によっては、兵士を呼ぶわよ?」


 その前に、証拠隠蔽をしてからだけれど。



「わ、(わたくし)は決して怪しい者ではありません!」


 いや、絶対怪しいじゃない。そう言う人が怪しいのよ。


「では、名乗りなさい。私の名前は分かっているはずでして?」


 もうチート(王族の威厳)を使って名乗らせよう。あと、巡回表(これ)は仕舞っておいて.......






「私はサランディア・クルス。オルシア王国魔術師団の名誉団員でございます。」


 サランディア........?聞いたことが無い、名前だわ。名誉団員、ってことは、今は隊員ではない、ってこと?


「そのような方は、私は聞いたことがありませんわ。」


「は、エミリア第六王女様とはあまり出会うことがございませんでしたので。私は専ら皇太子殿下や第一王女殿下の魔術の稽古を致しおりましたので........」


 ああ........私とは世界が違うわね。お兄様やお姉様の師であれば、相当な術師であることは確かだけれど.....



「.....貴方の事は分かりましたわ。それで、何の御用ですの?」


 でもまだ怪しいってことに変わりわないんだから。そもそも用があるなら堂々と来ればいいのに。



「は、実はですね........」


 サランディア、と名乗った(多分)魔術師は、言葉を切った後、思わぬことを口にした。







「私、エミリア第六王女様をお助けするべく、馳せ参じた次第でございます。」


「は........い?」



 一瞬心臓が止まった。私を助けるって、どういうこと?まさか、私がやっていることがばれた?



「私は、エミリア第六王女様がなさっていらっしゃることを存じておりまして。あ、勿論他言は致しておりません。それに、私が知る限り、私しか気が付いておりません。」



 ええ........まさか見も知らない人にばれてたなんて........うまく隠したつもりだったのに.....



「それで、私も今回の件は聊か腑に落ちない点がありまして。実は私もリリス王宮医と交流がありまして、リリス様があのようなことをするはずがないと考えております。」


 あなたもリリス様とお付き合いがあったのね。やっぱり、信じられないわよね。



「そこで、少しでもエミリア第六王女様のお力にと思い、このように密かに参った所存でございます。」




「ふうん........」


 取り敢えず見てくれだけでも余裕ぶっておかないと。


 状況を整理しよう。


 まずこの怪しい人は、私がリリス様の無実を晴らすためにやっていることを全て知っているのね。

 それで、この人もリリス様と交流があって、今回の件は怪しいと思っている。だから私に力を貸しに来た、ってことね。



 どうしたものかしら。この人の話、どこまで信じていいか分からないのよね。私を罠にかけるために来たのかもしれない。

 それにただの不埒者っていう線もまだ消えていないし。


 でも、計画が行き詰まっている今、頼れるものは、頼りたいというのも事実なのよね........



 私が悩んでいると、窓の外の人が、ああ、と口を開いた。


「そろそろ見回りの時間ですね。では、一つだけお教えいたします。エミリア様の杖を持って、『海の月』と唱えてみてください。きっとエミリア様を助けてくれます。解除方法は、もう一度唱えるだけ。物は持てますから、ご安心を。では、失礼致します。」


 そう言い残した人の影は、ふっと消えた。




「........行ってしまったわ。」


 恐る恐る窓の外を見ると、勿論誰もいなかった。



「『海の月』って言ってたわよね........」


 私はたった今使った杖を握りしめ、呪文を唱えた。



 


 その効果を確認した私は、すぐに決行の計画を立て、そのまま昼食の準備ができたと呼びに来た召使に従い、大食堂へと向かった。








 




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