乙女と盲点
「さて、警備が薄いのは........夜、ね。」
早速、入手した巡回表とにらめっこをしながら私は保管庫への侵入計画を立て始めた。
大規模討伐と言えども、私はそこまで長くはならないと考えている。なんたってオルシア王国の名だたるハンターや、「王の槍」の王国治安部隊が直々の出向いているのだから。
今回は長距離の移動を加味しても掛かって一週間。短ければ5日程で帰ってくるだろう。
「........早めに決行しておきたいのだけれど.....」
出来るだけ安全な時、つまり、3日の間に決行しておきたい。
もちろん、警備は保管庫だけではない。夜となれば、城の中だって見回りが入る。上手く鉢合わせしないような時間帯を割り出して......
「あ、ここならうまく掻い潜れそうね。」
ふと目にしたとある時間帯が、見る限り一番安全だ。見回りは一つ上の階。保管庫の警備は1人。ここしかないわ。
決行日が決まったら、具体的な計画を考えないと。
まずは、上手く保管庫までたどり着く。これは簡単ね。こっそり抜け出すのは子供のころからやっているから慣れているわ。
次に、警備室の隣にある保管庫に忍び込む。
「........あ。」
保管庫って、絶対鍵がかかってるわよね?兵隊はいなくても、鍵がかかってたら入れないじゃない!
考えていなかったわ。今から鍵を盗み出すのは至難の業。当日手配なんて、無謀にもほどがある。
「はあ........どうしましょう........」
想定していなかった事態に頭を抱えた。ここまでは順調だったのに.....
窓から入るのは.....保管庫、窓なんてなかったわ。兵隊から鍵を奪う?そんなこと、どう考えても無理よね。今から内通者を作るのは........絶対無理。
私は思わずため息をついた。
「いっそ透明にでもなれたらいいのに........」
「その願い、私が叶えて差し上げましょうか?」
突然、どこからか声がした。
「........え?」
リコも聞こえたらしくピクリ、と耳を立て、声の主を探し始めた。
「私であれば、叶えられますよ。」
窓の方から同じ声が聞こえ、くるりと窓を見ると、カーテン越しにうっすらと人影が見えた。
この人は、誰?