対策と万が一
「まあ、だな。オレ達にはオーガがいるだろう?だから、空へは行ける。」
オーガのヤキモチ(?)が収まったところで、シャトーが喋り出した。
そいうえば、これって普通の人間が見たら鎧が喋ってるんだよなあ。しかも年季ものの。
俺もよくこんなものに耐性がついたなあ。
「問題はそれからだな。空はどこへでも行けちゃうからなあ........」
それだな。狭いところに追い込めば行動が制限できるかもしれないが、空、となると、ほぼ無限大に行動可能だ。正攻法で行くと明らかにこちらが不利だ。
「........障壁を張るのはどうだ?変形性のある物を張ればこちらも動きを制限されないはずだ。」
オーガの大きさにもよるが、な。
「障壁か!それはいい考えだな!」
「かべ?」
窓の外を見に戻ったと思ってきたオーガが再び会話に入った。
「そうだ。空に壁を張って、炎鳥を動きにくくするんだ。オーガはいいヤツを持っていたか?」
俺は多分そのモンスターのクラスだと役に立たないぞ。そもそもその防御壁を手に入れるために炎鳥が必要なんだ。
「んー‥‥‥‥‥ん!ある!」
「よし!でかしたぞオーガ!じゃあ、オーガがリリス坊を乗せて空に行ったらまずはそいつを使うんだ。あ、威力減衰は必要ないからな。」
「ん!」
そうだな。万が一のことを考えると、威力減衰は無いほうがいいかもしれない。
「で、その後に効きそうな術を使う、と。」
炎なら、水か?
「みず!オーガある!」
「........」
なにか、言いたげだな。シャトー。
「いや、できれば........リリス坊にやってもらいたいな。万が一のことを考えて。」
万が一、にはいろいろな意味が含まれていそうだが........オーガなら、自分の障壁を自分で壊すぐらいならやりそうだよな。
「まんがいち?」
「いや、な、オーガ。リリス坊にも強くなってもらわないと困るだろ?な?」
「りりす、つよくなる!」
「そう言う事だ。な?」
おいおい保護者。今はぐらかしたよな。
「という訳だリリス坊。なにか適任なヤツを持ってないか?」
盛大に話を逸らしたな。
「ある、と言えればいいんだがな........」
そもそも攻撃魔術を覚えていないから系統攻撃魔術なんて論外だ。ましてや水なんて。植物魔術ならいくつかあるが、一瞬で燃やされて終わりだろう。
「りりす、もってない?」
「そうか........」
俺の答えを聞いたシャトーは、うーん、と暫く考えると、そうだ、と何かを閃いた。
「リリス坊、今『白水蛇』、どこまで行った?」
「白水蛇」か?確か、フロウに2つ教えてもらったから、8個だな。
「ああ、えっと、『神の目』までだ。」
それを聞いたシャトーはいつもより興奮した様子で言った。
「そうか!そこまで言ったか!でかしたぞフロウ!」
........そこまで喜ぶか?
「........それが、何か関係があるのか?」
「関係大ありだ!今すぐにでも........いや、今日は無理か。じゃあ、明日、明日にでも教えてやる!」
何をだ?さっぱりついていけないのだが........
「あの、一体何を........?」
俺が困惑して聞くと、シャトーは(多分)元気よく答えた。
「『白水蛇』9つ目の魔術、『水神の使者』だ!」