小雨と説明
「あめ、あめ♪あーめっ♪」
窓の近くでオーガが鼻歌を歌いながらうきうきと尻尾を揺らしている。
今日は、雨。この間のようなひどい物ではなく、しとしとと降っているくらいだ。
ドラゴンと言うのは、蛇やトカゲに近いような体をしているから.....雷は嫌いと言えど、やはり雨自体は好きなのだろうか。
「オーガの奴、随分うれしそうだな!これぐらいの雨だと気分が上がるぜ!」
あんたは自分がずぶ濡れになるんだがな。それでも嬉しいか?
「ま、とにかく、今日は外には出られないから、炎鳥を倒すための作戦を立てるんだろ?」
ああ、そうだった。そのために広間に集まったんだったな。
「.....そうだ。」
「じゃあ、まずは炎鳥の簡単な説明からだな!」
シャトー(鎧)は俺の前にガチャリ、と音を立てて立ち上がると、小さな魔方陣を展開した。
「いいか。これが炎鳥だ。ほら、大きい鳥だろ?」
シャトーが展開した魔法陣には、炎鳥、と思われるミニチュアの鳥が浮かび上がった。
「は、はあ.....」
これだけ見せられても大きさは分からないのだが.....
「これでも50分の一スケールだぜ?」
そう言う事なら........かなり大きいな。鳥、というかもはや飛行船ではなかろうか。
「色は......黒、なのか?」
俺が見る限り炎鳥は黒色というか、橙赤交じりの黒、と言った感じだ。炎、というぐらいだから、もうちょっと、こう、真っ赤なものだと思っていたのだが、幻獣は名前によらないのか?
「そうだぜ?炎、って言ったって、赤とは限らないぞ?ほら、あのウルフだって、黒っぽかっただろ?」
そう言われてみれば、そうだが。
「ま、これが炎鳥だ。で、こいつの攻撃なんだがな、主な攻撃は炎だ。」
そりゃそうだ。氷です!とか言われてもこちらが困る。
「口から炎を吐くんだぜ!それも魔術入りのな!一度発火したら暫く消えないんだ!」
この森って、幻獣とかモンスターとかに関わらず魔術を使ってくるんだな。ハンターたちがよく行く郊外だと大体は脳筋で突っ込んでくるだけだと聞くが。
「あとは翼を使った突撃だ!すごいんだぜ!モンスターの数十匹なら余裕で吹っ飛ばせるんだ!」
なんかテンションが高くないか?手(?)を振り回すからガシャガシャいってるぞ?
「........その話によるなら、どうやら空中戦になりそうだな。となると、どうにかして空へと飛ぶ方法が必要か?」
それほど大きいのなら、地面に引きずり落とすのも大変だろう。不利にはなるが、空へと飛んだほうがいいのではないか?何か該当する術は持っていただろうか........
「リリス坊、それなら心配いらないぜ!なんたってな......」
シャトーが何かを続けようとしたとき、突然それを遮る声がした。
「オーガ、そら、とべる!ひ、だせる!」
いつの間にか近くへ来ていたのか、オレの目の前に、現れた。
ち、近い、少し、近いぞ?
それに、少し怒ってないか?なにか、怒らせるようなことをしたか?
「オーガ、おおきい!」
「こらこらオーガ。リリス坊が困ってるぞ?」
シャトーの声に、むう、と不服そうな顔をしつつもオーガが俺から少し離れた。
「ははーん、さてはヤキモチだな?」
シャトーが(恐らく)ニヤニヤしながら呟いた。
ヤキモチ?幻獣の王が?
「炎鳥の事ばっかり話してただろ?」
まさか........いや、それしか話していないな。
「取られると思ったんじゃないのか?」
いや、いくら何でも通常形態で火を吹く奴はごめんだな。こちらの幻獣の王の方が100倍いい。そんなことは天地がひっくり返っても無いだろう。
俺はまだなお頬を膨らませているオーガを見た。
にしても、オーガにもこんな一面があったとはな。