再生と宝石
「では人の子よ。私が教えるのは『白水蛇』七つの目の術........『泉の守り人』だ。」
あまり見たことのない細い、葉のない木が生える中で、フロウの魔術指導が始まった。
この木はなんだ?王国では見かけなかったな。
「........ん?何か、気になる物でもあったか?」
周りを不思議そうに見回す俺が気になったのか、フロウが不思議そうにこちらを見た。
「あ、いや。その.......この木が、見かけないものだったのもので.....」
俺が、正直に答えると、フロウが、ああ、これか?と、例の木を指した。
「これか?これは竹、というものだ。このあたりにしか生えていないから.....珍しかったか?」
なるほど。このあたりの........いわば浄化された空間にしか生えていなんだな。何かの素材に使えそうだが........聞いたことも無いな。
「そう、なのか。」
「よいだろう?ここに居ると気分が落ち着く。人の子も、気が向いたらここに来るといいぞ?」
それは、どうも。確かにここは落ち着くな。
「........龍の子を待たせてもいかん。『泉の守り人』、だったな。」
........話がいつの間にか逸れていたな。そうだ、魔術だった。
「はい。」
「ふむ........では、今から私が使って見せよう。」
おお。この幻獣はお手本を見せるタイプか。シャトーは多分、火事場の馬鹿力タイプだが、教え方の違い、と言うやつだな。
「まずは........この石だな。」
フロウが懐から取り出したのは、石、と言うよりは小石に近い、何かの欠片だった。
「これをよく見ているといい。では、いくぞ。」
フロウは石を地面に置き、少し離れた。俺も従って少し離れ、石とフロウの様子を交互に伺った。
「........『泉の守り人』。」
フロウが透き通る声で呪文を唱えると、石が僅かに光を帯び、一瞬鋭く輝いた。
「........これは.....!」
次に俺が見たものは、先程の小石ではない、クリスタル上の宝石だった。
「ふふふ。驚いているなあ。」
驚く俺の顔を見たフロウは満足そうだった。
「あの石はもともとは水晶だったんだ。この術は、まあ、再生術、と言ったところか。物だけでなく、怪我だって治せる。人の子は医術に長けていると聞いたから........何かの役に立つだろう。」
再生........回復術のさらに上を行くやつだな。流石幻獣、としか言いようがない。
これは、きっと、というか、すぐに役に立つな。何せあの泉の中の龍王は環境破壊のスペシャリストだから。
「........ありがとうございます。」
そのあと俺は、フロウに促され、いくつかの欠片を見たことのない宝石に変えた後、オーガの元へと戻った。