魚と労力
「おお~!」
「さかな!」
俺が引き上げた籠の中には大量の魚がぴちぴちと動いていた。
「大漁だな。」
思ったよりも獲れているな。こんな簡単な罠に掛かる物かと心配だったが、杞憂なようだ。
「いっぱい!」
「たくさんいるじゃないか!すごいなリリス坊!」
俺じゃない、この罠がすごいんだ、多分。
「........他の籠もあっただろう?俺の術の解除ぐらいならオーガでもできるはずだ。引き上げて、見てみてくれ。」
「ん!」
仕掛けたのは5つほど。これと同じぐらい入っていればかなりの豊漁だ。焼いて食べてもよし、干物にして保存してもいいだろう。
「さかな!いっぱい!」
早くも引き上げたらしいオーガが、嬉しそうにしている。さっきのと同じぐらいだな。
この罠、使えるな。
「で、これを今から食べるわけか。」
少しの後、3つの籠いっぱいに分けられた魚を見ながらオーガが尻尾を揺らしていた。シャトーも心なしかワクワクしているようだ。
あの本から実体化する魚とは労力が違う。確か、料理人からハンターに転職した知り合いが言っていたな。自分で獲ったものは格別に美味しい、とか。
これもそう言う事になるのだろうか。
「そうだ。生は心配だから、焼いて食べるのはどうだ?残りは干物り燻製なりにすればいい。」
「だから薪か!いいな!素材の味を活かすってやつだな!」
まあ、そう言う事にしておこう。簡単にできるから、とは言わないでおこう。
「じゃあ、早速火を起こして、薪を入れて........いや、火はオーガがもやってるか。」
隣を見ると、オーガが術で火をおこし、既にシャトーが持ってきた枝をくべていた。
「........じゃあ、魚に枝を刺して火の回りにくべるんだ。一応、水で洗うなりしたほうがいい。」
「ん!」
俺たちは適当な数魚を取り出し、細い枝を貫くように刺した。火の回りに軽く石で固定し、固定魔術で倒れないようにすると、魚がパチパチと燃えるのを見ていた。