寝坊と水揚げ
「さかな!かわ!」
枕元で大きな声がした。
「リリス坊~!川に行くぞ~!」
そうだった。昨日の夜、明日朝早くに川に様子を見に行くって言ってたな。しかも俺が。つまり、寝坊か。
「りりす!おきる!」
わかったわかった。そんなに叩かなくても起きるから。
「........ああ。起きるぞ。」
俺がゆっくりとベッドから起きると、オーガがいそいそと着替えを持ってきた。よっぽど楽しみなんだな。
「リリス坊、何か持って行ったほうがいいものはないか?」
こっちは食べないくせに楽しそうだな。持って行った方がいい物か。そうだな........
「特にはいらないと思うが、その場で食べるのであれば何かそういう物を持って行ったほうがいいんじゃないか?」
「そうか!だったら薪用の薪でも持ってくか!」
それでいいと思うぞ。俺も少し持って行こう。
あとは、あの本も。
「よーし!出発だ!」
適当な木を持ったシャトーと、特に何も持たないオーガを連れて俺達は河へと向かった。
道自体はそこまで遠くないが、朝靄がかかって足元が見づらい。川辺で足を滑らせないようにしなくては。
それと、何かが聞こえる。
「あ、そうだリリス坊。言い忘れてたが、朝は夜型のモンスターがいろいろいるから、気配を消しとくといいぞ!」
それを先に行って欲しかった。
「........『濃霧』。」
遅いかもしれないし、弱いからバレるかもしれないな。
「ん!」
俺がいつでも魔術を使えるように準備をしていると、隣でオーガが魔法陣を展開した。
「オーガ、かくせる!」
「助かるぜ、オーガ。『濃霧』じゃ絶対無理だからな!」
小さい声で言ったつもりだろうが、十分聞こえているぞ。悪かったな、低級魔術しか使えなくて。
「ま、これから覚えて行けばいいんだ。な!」
雑なフォローをありがとう。
「着いたぞ!」
「かわ!」
その後オーガの絶対的隠蔽力のお陰で隣をヤバそうな黒い影が通ることもあったが、無事に河に到達した。
「罠を仕掛けたのは........そこだったな。」
シャトー(木の枝)が指した先には、確かに俺が仕掛けた罠があった。
「........見てみるか?」
「ん!」
三人で近付き、そっと水面から中の様子を見た。
「ん~‥‥‥‥ん?」
「よく、見えないな。」
日光が差し込んでいないこともあり、なかなか見えない。
「じゃあ、思い切って揚げてみようぜ!いなかったらその時よ!」
まあ、今はそうするしかなさそうだな。
「分かった。じゃあ、いくぞ。」
俺はそっと冷たい水の中に手を伸ばし、籠に触れた。固定のための魔術を解き、籠をゆっくりと持ち上げた。