ベッドと術書
「しかし、いきなり渡されてもなあ........」
流石に肉には飽きたという事で、久しぶりにあの本から実体化した魚料理を食べた後、俺はオーガとシャトーと別れ、自室に戻った。
ベッドに半身だけ入り、先程渡された「幻獣術伝」を眺める。
........にしても分厚いな。いくらなんでも分厚過ぎはしないか?しかも、これが後2冊あると言っていたな。
やはり、歴史が長いとこうなるのだろうか。
「少し、見てみるか。」
幸いにも古典文字には覚えがある。読むことに支障はないと踏み、ゆっくりと表紙を開いた。
数ページめくると、目次らしきものがあり、防御術、回復術、と大きな字で書かれていた。
どうやらこれはたくさんあるうちの防御と回復の術に特化したものらしい。シャトーもこれが分かっていて渡したのだろう。
つまり、守れるだけ守れと。そう言いたいのだろうか。
「........まあ、俺にはうってつけなんだが。」
攻撃なら現状、というか、恐らくオーガがこの森で最強だろう。俺が手出しをしなくても何とかなる。
しかし、防御、主に味方のとなると、いくらオーガが威力減衰魔術を併用したところでいつかは防ぎきれなくなる時が来るだろう。
しかも、あの魔狼の時のように、感情に任せていたり、突発的な時に併用できるか、と言われると怪しい部分がある。
つまり、防御魔法は覚えるだけ損はない、という事になる。
早速防御術のページを開くと、一ページに3つほど、術の名前、効果、魔導書の作成方法などがまとめられていた。
これは便利だな。普通の術書は名前と材料ぐらいしか載っていないが、効果までわかるのは有難い。
「........物理攻撃も、魔術攻撃も防げる術なんて、あったりしないだろうか。」
今の俺に求められているのはオーガの破壊の完全防御だ。「鉄壁の砦」や「闘技場」の上位の物があればいいが、できれば一つで両方防げるものが欲しい。
無口頭を練習したところで時間のずれは発生してしまう。万が一の時にどちらかが間に合いませんでした、では恐らく森の崩壊は避けられない。
「そんな術、簡単にあるわけが........」
しかし、俺も未だかつて聞いたことが無いし使っている人も見たことが無い。かの有名な王国治安部隊の術師隊ですら、二つに分かれて発動している。
いくら「幻獣術伝」とは言えそんなものがあるのだろうか。それとも、人間との開きすぎている威力のために存在してしまうのだろうか。
「........ん?」
ふとあるページの術に目を止めると、そこには「物理、魔術の無効化」と書かれていた。
やっぱりあるのか、この世界には。存在してしまうんだな、そんな魔術が。
すぐに魔術の名前を確認すると、「炎鳥の翼」と書かれていた。
どうやら、最初に覚えるべきは、この魔術のようだ。