リンゴと名案
「にしてもまあ........肉ばっかりだな。」
シャトーがオレと話している間に完成した燻製を見ながら心なしか落ち込んだ声でつぶやいた。
あんたは食べないだろ。どちらかと言うとオーガが落ち込むべきなんだが。
流石に俺も飽きてきたんだがな。しかも今日は魚を釣るつもりだったのにな。どうしてこうなったんだか、肉が大量だ。
「ま、取れてしまったものは仕方がないな!食堂に運ぼうぜ!」
倉庫から持ってきてオーガが増やした籠に入れた燻製を俺が持つ一輪車に運びながら籠になったシャトーが空元気を出すと、オーガが何かを持ってこちらにやって来た。
「りりす、シャトー! りんご!」
「ん?どうした?」
よく見ると、手にはリンゴがたくさん入った籠を持っていた。どうやら燻製を作る合間にほぼジャングルと化したリンゴ園にから採って来たらしい。
が、明らかに色が違った。
「オーガ、これは........?」
「りんご!やいた!」
オーガが元気よく答えると、はい、と一つ俺に渡した。
「お、焼きリンゴか?」
自分は食べないシャトーも興味をそそられたらしく、籠ごとちらりとこちらを見た。危ないから、そこにある本にしてくれ。
「........食べても?」
「ん!」
どうやら食べてもらいたいらしく、そわそわと待っている。食べない理由は特にないので、一口、口に運んだ。
「これは、美味しいな。」
「!!」
焼きリンゴは食べたことがあるが。オーガにしてはいい感じの焼き具合だ。あとは、土の栄養の問題だろうか、随分と美味しく感じた。
「おいしい?」
「ああ。」
その答えが嬉しかったのか、オーガの尻尾がいつになく揺れた。
「ほー、良さそうじゃないか。食後の甘味にちょうどいいな。」
それを見ていたシャトーも、明暗、とばかりに賛同した。
リンゴも大量にあるからな、こういう使い方もいいだろう。あと、確か肉とリンゴを一緒に焼くのもいいかもしれない。
調理の幅が広がったな。
「よし、これで全部だな!」
食堂に運び終わった俺たちは、椅子に座って先程のリンゴの続きを食べた。やはり、食料には困らないが、そのうち本格的に肉に飽きてくるだろうな。何とかして魚を捕る必要があるんだが........釣り竿は作れない。釣り経験はない。現状素潜り頼りというところが心もとない。罠でも仕掛ければうまく捕れるかもしれないが......
ふと周りを見ると、周囲には隙間の小さい木製の籠が転がっていた。
「........いい方法があった。」
「?」
「どうした?リリス坊。」
突然しゃべりだした俺に二人が不審そうに反応した。
これなら、魚が効率的に捕れるかもしれない。俺は、籠を見ながら満足げに笑った。