重ね技と疑問
「あっ........!」
「なるほどなあ........」
魔法陣を重ねられた炎は、小さな火となった。
「これは........威力減衰魔術か?」
「ん!」
「つまり........オーガはこれをつかって自分で自分の術を弱くしたってことか?」
シャトーの問いかけに、オーガは大きく頷いた。
なるほど。オーガクラスとなれば威力減衰魔術も相当なものになるだろう。この手の術は通常高火力の敵と戦うときに使うのもだが、勿論自分に使えないことも無い。オーガはそれを自分の魔術に使って威力を抑えたんだな。
「確かに、普通の魔術を制御するよりもその手の魔術はコントロールが簡単だからな。」
結果として被害が出てないんだ。通常魔術は後々制御すればいいだろう。
「オーガやるじゃないか!........ところで、どうしてそれをリリス坊から教わったんだ?」
「ん!」
シャトーに俺も気になっていたことを聞かれたオーガは、周囲に張り巡らされた「闘技場」と「鉄の砦」を指さした。
「ふたつ、ちがう!」
..............「闘技場」は魔術を、「鉄壁の砦」は物理的な防御を、だったな。二つ重ねれば、相反するものができると、そう言う事か?
「りりす、ありがと!」
「..............ああ。」
こんな笑顔で言われると、悪い気はしない。それに相手は、龍王だ。国王陛下に礼を言われたようなものだ。
「ところで、どうして、さっきの『魔狼の咆哮』は『闘技場』じゃあ防げなかったんだ?傷は一つもなかったんだが........」
3人で狩り尽くしたモンスターから素材をいただき、肉を燻製にしているときに、ふと俺はシャトーに尋ねた。
オーガはパチパチと燃える火を見ながら、せっせと薪を足している。
「それはだな........簡単に言うと、その魔術の力不足だ。」
魔術の?俺ではなく?
「魔術の力不足、というのは........?」
俺が訝し気に聞くと、シャトーはこんな質問をした。
「ときにリリス坊よ。それは、『闘技場』だったな?」
「ああ。」
俺の、というか王国の中でも中でも一番の魔術防御術だ。
「それは、リリス坊の中だとどの位の立ち位置だ?」
「これは........10段階中9だな。ほぼ10に近い。」
10、と言わないのは、多分魔導書集「白水蛇」が一番強いから。次が「魔狼の咆哮」だろう。
「よく聞けよリリス坊。その『闘技場』はな、オレ達の世界では、マイナス10ぐらいしかないんだ。」
........マイナス1でもなくマイナスなのか?じゃあ、この世界ではどうなっているんだ?