魔狼の咆哮
ウルフの遠吠えは森中に響き、木々がビリビリと揺れる。
「おっ、成功か!」
耳は塞がなくてもいいとかいう嘘をつかれた俺は、必死に耳を塞いだ。今度から信用せずに術でも出しておこう。
「成功なのか........?」
「見ろ!モンスターが動きが止まっているだろう?この魔術はそういうやつだ。運がいいと吹っ飛ばせたり気絶させたりできるんだが........」
確かに周りを見ると、近くにいた哀れなモンスターが数匹、木に叩きつけられていた。流石に気絶しているやつはいないな。もう少し魔力を込めたほうがいいのかもしれない。
「........これは、『闘技場』でも防げないのか?」
魔術を範囲外では無効にする「闘技場」を展開しているはずだが、どうやらウルフの声は「闘技場」の外にも広がってるらしい。
「防げないというか........まあ、後から説明するぜっ!それよりも、オーガ!準備はいいだろうな?!」
シャトーがくるりとオーガの方を向くと、オーガが準備万端と言わんばかりに頷いた。
「ん!」
「じゃあ、頼むぞ!くれぐれもやりすぎるなよ!討ち漏らすなよー!」
一体どっちなんだ。
一応障壁をもう一重張った俺も、様子を見ることにした。
オーガはまだ動くことのできないモンスターの頭上に向かって、この前とは違う魔法陣を2つ展開した。
「大丈夫か?壊したりしないか?いや、城とは反対側だから大丈夫なのか?........」
どうやらシャトーは気が付いていないようだ。2つ、という事は合わせ技か?合わせ技に耐えれるかはわからんぞ?
空に展開された魔法陣からは無数の、ではなく、魔法陣の直径と同じ大きさの光線が無慈悲に放たれた。
この前にやつと一緒か。いや、ちょっと威力を抑えたのか?横からではなく上からやったのは、広範囲に攻撃できるからか。どうやらあれは一方方向にしか出せないみたいだな。お決まりの無口頭だからどの術かは分からないが........俺の知っている中だと「突撃」系統か?
「おわった!」
オーガの声に考え事を中断して顔を上げると、確かにオーガの周りには既に倒されたモンスターの残骸があった。見た感じ被害はなさそうだな。地下にも展開させておいたから地形変動も生態系の破壊もなさそうだ。
「終わったか?障壁は........無事みたいだな........?」
急いで辺りを見回したシャトーがほっと息をついた。
確かに今回はヒビがないな「鉄壁の砦」の方もモンスターがそこまで吹っ飛ばされなかったし。
「オーガ、お前、ついに制御できるようになったんだな........!」
なんか声が涙ぐんでるぞ。ここまでずっと制御できなかったのか.....?だったら、どうやって生活していたんだ?
得意そうに胸を張るオーガは、オレの元にトコトコとやって来た。
「どうした?」
「オーガ、りりすのおかげ!」
どうやら俺のお陰で魔術が制御できるようになったと言いたいらしい。
「どういうことなんだ?」
「どうしたどうしたー?」
俺の声に気付いたシャトーもこちらにやって来た。
「ん!」
オーガが、小さな魔方陣を出し、手の上に火、というか炎を出した。
「これを、どうするんだ?」
俺が聞くと、オーガはもう一つ、先程の2つ目の魔方陣を出し、炎の上に重ねた。
投稿大遅刻申し訳ありません