怒りと初犯
「いや~危ない危ない。直ってよかったぜ!」
城に直行したシャトーが、すぐさま修復魔術を唱えて今にも崩れかけていた城壁を直してから数分、シャトーとオーガと俺は、城の大広間でウルフを囲んでいた。
どうやら「怒り」という感情の名のもとに盛大に放たれたラスボスの術は、術こそ障壁で受け止められたが、流石に威力までは消えなかったらしく、ウルフが撃たれた大砲の玉の要領で飛び出し、城の2階部分の壁に穴をあけて大広間に着地したらしい。
とんでもない威力だ。大広間のど真ん中にある、ということは、壁に衝突してもなお威力が衰えなかった、という事になる。
どれだけすごいのだろうか、という事は俺にはわからない。少なくとも俺の知っている魔術師の中にそんなことができる奴はいない。
「オーガ、今度からは気を付けてくれよ。壁と扉だったからいいものの、柱とかだったら目も当てられないからな。」
「ん!きをつける!」
初犯じゃないのか。というか、入り口も壊してたのか。素材の割には腐敗していないとは思ったが。
と、シャトーがくるりとこちらを振り返って俺に囁いた。
「あと、リリス坊。今度いい感じの防御魔術を教えるから、何とか覚えて使えるようになってくれ。」
分かった。こちらとしても住処がなくなるのはいい事じゃない。魔導書があるんだったら、すぐにくれれば覚えるぞ。
「シャトー、りりす?」
オーガが不思議そうにこちらに近付いてきたことに気が付いたシャトーは、くるりとオーガの方を振り返った。
「ん?何でもないぞオーガ。とっとと素材を取って魔導書、作っちまおうぜ!」
「ん!」
言われたとおりに、牙と爪を取り、魔導書創造用の魔法陣の上に並べた。
今回は一冊という事もあり、簡単に終わった。
「これは........『魔狼の咆哮』?」
俺は魔導書に書かれている名前を見ながら、一体どんな魔術だろうと考えを巡らせた。
咆哮という事は、何か広範囲に展開できるのか?それとも、一直線に飛ばすのか........
「ああ。これはかなり強いぜ~。城の中じゃ危ないし、今日はもう暗くなっているから、明日試しにやってみようぜ!」
「あした!」
ふと窓の外を見ると、確かに薄暗くなっていた。そうだな。そのほうが安全だろう。
二人の意見に従い、実践は明日行うことになった。
遅らせながら、この度ユーザー名を変更いたしました。
新萌です。
今後ともよろしくお願いいたします。