幻獣王と石
「オーガ~大丈夫か~?」
塵と砂埃が収まった後、シャトーはそろそろとオーガがいたであろうというところに降りて行った。
シャトーが恐る恐る話しかけると、オーガはふくれっ面でこちらを向いた。
「オーガ、りりすまもる!」
あー、なるほど。さっき言っていたことを忠実に実行したという事か。
「オーガ、つよい!」
そうだな。この場にいる生物の中で恐らく間違いなくお前が一番強い。
「へいき!」
「そうだな~オーガは強いぞ。」
確かに見た感じはかすり傷一つないが......
「ただあんまりやりすぎると、ちょっといろいろまずいからな!こっちの方の威力制御もできるようにしないとな!」
おいさっきと言っていること矛盾してないか?
「ん!」
まあ、俺だっていつでも障壁を張れるわけじゃないし......今のだってひびが入ってしまったしな。防御魔術、練習しておかないと。
「........ん?」
ふとウルフがいた場所に目をやると、小さなものが光っていた。
「どうしたリリス坊?」
「りりす?」
俺がその光っているものに近付くと、シャトーとオーガも後ろから近付いた。
「これ......何か光っていないか?」
「あー……確かに.....」
「ひかる!」
オーガがそっと持ち上げ、物珍しそうにじー、と眺めた。
「シャトー、いし?」
よく見てみると先ほどのウルフの王を呼び寄せた石にも似ていた。まさか、またさらに格上が来るとか言わないだろな。そんなものが来たら俺の防御魔術が機能しなくなるんだが。
「んーっと、ああ、石だ。さっきのとは違うから安心しろ!」
なら良かった。
「じゃあ、これはなんだ?」
俺が聞くと、シャトーは得意げに言った。
「これはな、あのオオカミを倒すと稀に手に入る、『王者の石』だ。」
シャトーがオーガから石をもらい、ほら、と俺に見せた。
最初の物より透き通っているな。そいえば、あのウルフも紫色の毛だったな。という事は、これは時々見かける魔法石、というものか?
「これにあいつの魔力が詰まっていてな、まあ、いわばあいつの魔力の根源だ。魔力が強ければ強いほど透き通っているんだぜ!」
魔法石か。俺たちの国だとあまり見かけないな。そもそも、モンスターを倒したところでほいほいと落ちるものではないし、モンスターが魔力を使い切ると倒しても入手できないからな。
「普通はあいつが魔力を使い切ってから倒すから、こんなに大きい綺麗な石は残らないんだけどな。」
シャトーがちらりと俺が持っている石を飽きずに眺めているオーガを見た。
そうか、今回の場合は魔術なんて使う間もなく瞬殺されたからか。
「まあ、これはありがたく使わせてもらおうぜ、リリス坊!」
「つかう?」
オーガが不思議そうにシャトーを見た。使うとは一体、何に使うんだ?
「シャトー、使う、というのは........?」
俺が訝し気に尋ねると、シャトーは決まっているだろ?と言わんばかりに答えた。
「知らないのかリリス坊?魔法石って言ったら、魔導書一択だぜ!」