若者とリベンジ
「............あ、バレたか?」
大雨の翌日、目を覚ますと隣にシャトー(燭台)がいた。顔が無いから分からないが、多分ニヤニヤしていると思う。
「バレバレだ。」
「やーなに、オーガの部屋行ったら見当たらんくてな。そこにあった燭台に移って見たら、仲良さそうに寝てるじゃないか。」
それで眺めていたと。
俺はちらりと横を見た。落ち着いたのか人間の姿に戻ったオーガが枕を抱いたまますやすやと眠っていた。
うん、まあ......眺めたくなる気持ちもわからんでもないが。
「悪いなあリリス坊。オーガの奴、突然来ただろう?」
「ああ。最初はお前だと思ったんだが。」
かなり突然だったぞ。それに着た途端に人のベッドに潜り込んだし。
「オーガはああ見えてまだ子供だからな。雷の類は怖いんだ。また邪魔するかもしれないぜ。」
2000歳か。なるほどな。少し人間みたいなところもあるんだな。
「............?」
起きたみたいだぞ。オーガが。
「お、起きたかオーガ!」
「おきた..........」
寝起きに「起きた」と言うのは初めて見たんだが。
「よく寝れたかー?」
「ん!」
そうか、なら良かった。
「じゃ、朝ごはんだな!それが終わったら......そうだ、久々に魔術の練習と行こうか!」
落雷を伴う豪雨の被害確認が先じゃないのか?
「あさごはん!」
練習の方にツッコまないんだな......
「やっぱり魚、どうにかしてたくさん取れるようにしないとなあ......」
やはり一度魚を挟んですぐにまた肉、では飽きたらしく、オーガが珍しく食欲がない。と言っても、大きな塊5個ぐらいは食べたが。
「そうだな。栄養も偏るし、あまりよくない。」
多分それを気にするのは俺だけで、オーガには関係ないんだろうな。シャトーはまず食べないし。
「なにか、効率的な魔術はないか?」
「白水蛇」と言うぐらいだから、水に関係のあるものも多いはずだ。魚も水に中に住んでいるんだし、役に立つものが一つや二つあってもおかしくないだろう。
「うーん..........そうだなあ......確かまだ、3つしか教えてなかったよなあ。」
いや、5つ教わったぞ。「激流」、「砕岩流」、「赤眼」、「白鱗」、「昇り竜」だ。
「シャトー、ご!」
オーガが保護者に向かって指を五本、ぱっと突き出した。
「そーだったそーだった。やっぱり若者は記憶力がいいなあ!」
若者ねえ......
「使えそうなのは......『砕岩流』は強すぎるし、『赤眼』は場所がわかるだけで捕まえられないし......」
あまり魔術に頼りたくはないが、そんなこと言っている場合ではないぐらい肉に飽きてきた。し、体も重くなった気がする。少し多めに捕って日干しなりなんなりにしておかないと、毎日釣り(素潜り)で潰れてしまう。
すると、シャトーが何かを思いついた。
「後は........あ、アレは使えそうだな。」
アレ?
「オーガはどう思う?」
理解できない俺を置いて、シャトーはオーガに聞いた。
「ん........ん?」
理解できてないじゃないか。
「ま、まあ、物は試しだ。取り敢えず、川、行ってみようぜ!」
「かわ、行く!」
そうだな。
ってなると思うか?雨上がりの川だぞ?それも豪雨だぞ?水位が上がってるに決まってるじゃないか。この二人の頭の中に「危険」の言葉はないのか?
「いや、川に行くのはちょっと待った方が......」
だめだ。聞いてない。せめて浮遊魔術はすぐに使えるようにしておこう。
あの大河の前で役に立つかは分からないが。
今度こそ魚釣りすると思います