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乙女の努力

「昨日はひどい雨だったわね、リコ。」

朝日が差し込む窓を見ながら、私はリコにそう言った。


 昨日は稀に見る大雨だった。一部の地域では落雷もあったそうで、兵士が状況を確認している最中とのことだ。


「そういえば、『千里の海』も潮が満ちて大変だったみたいね。」

 国境にある海も、満潮と大雨が重なって高潮になってしまった。被害は甚大になっているそう。


「大規模討伐も間近に控えているのに......」

 最近、国の少し向こうにある「龍の森」と言うところで、不可解な現象が起きている。突然竜巻が発生したり、モンスターの変死体が見つかったり、ハンターが次々と行方不明になったり......


 今までそんなことはなかったから、緊急会議が開かれて、急遽原因特定と討伐が決定したみたい。で、今ギルド長兼治安部隊隊長のなんとか、と言う人が隊長として、大規模討伐の準備をしているの。準備、といっても、人員を集めて、武器を準備、あとは、食料もかしら。取り敢えずいろいろなものを準備して、大人数で調べるみたい。


 それが一週間後に迫っていたのだけれど......この雨では行商人はこれなさそうね。出発が少し伸びるかもしれないわ。



 ......ん?行商人?


「そうだった!」

 忘れてた。行商人の配達品リスト、まだ全部見ていないんだった。昨日の雨で中断したんだ。


「早く、全部確認して、リリス様の無実を......」

 私がリストを出そうとしたとき、ドアがコンコンとノックされた。


「エミリア様。お食事の用意ができました。」

 あ、朝食がまだだったわ。危ない危ない。


「ええ。今行くわ。」

 私はそう返事をしてすぐに大食堂へと向かった。






*******************************



「さあ。気を取り直して、全て見てしまいましょう。」


 朝食及びその他諸々から解放された私は、部屋の鍵をかけ、オルゴールの小箱からお姉様にもらったリストを取り出した。お姉様がたくさん渡してくれたものだから、全て目を通すのにかなり時間がかかった。でもあと2枚。今までの報告書にはリリス様が薬を頼んだ形跡はなかった。


「この2枚に書いていなければ......」


 私は見落としの内容、ゆっくりとリストに目を通し始めた。ない、ない、ない、ない........



 そういえば、リリス様はあまり行商人を使わない。このオルゴール小箱ギリギリはいるぐらいのリストにも、数えるほどしか名前がなかった。時々部屋を留守にしていることがあったけど、もしかして、ご自分の足で薬草を取りに行っていたのかしら。



「............ない、わね。」

 あと一枚。そう思って、最後の一枚に触れると、窓辺で大あくびをしていたリコがこちらへやって来た。


「リコも見てくれるの?」

 リコは肯定するようにニャーと鳴き、私の膝の上に座った。


 なんだか、応援してくれているみたい。


「よし、じゃあ、いくわよ。」

 意を決して最後のリストに目を通した。ゆっくりと、丁寧に。


「ない、ない、ない、ない............」


 半分の時点で名前はない。



「ない、ない、ない....................どこにも、ない!」



 リリス様の名前は遂に出てこなかった。


「やったわ!これで、リリス様の無実に一歩近づいた!」

 王宮に届けてもらうためには、リストに載っていない、という事はあり得ない。そして、報告書にはリリス様は行商人から受け取っていた、と書かれている。



 つまり、矛盾が生じている。



「さ、これで行商人から取り寄せていないことは分かったわ。」

 念のため、リストの写しを取っておこう。それくらいなら、私でも魔術で何とかできるわ。見つかったら大変だから、屋根裏にでも隠していこうかしら。あそこならリリス様と私しか知らないから。



「次は.........リリス様が持っていたという薬草を手に入れないといけないわね。」


 浮かれている場合じゃないわ。証明しないといけないことはまだまだあるのだから。リリス様が持っていた薬草を手に入れる............



 ........................


「............かなり、難しいわね............」


 ............できるのかしら?

総合評価 100 pt 突破しました! 有難い限りです!これからもよろしくお願いします。

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