頑張りと雨
「こうして........こうか。」
オーガに言われた通り、小さめの魚を針金の先に刺した。
「じゃ、やってみてくれよリリス坊。多分何にもないよりマシじゃないか?
」
「つる!」
本当は生きてるように見せなければならないんだとは思うが、何分釣り初心者三人衆だから、やり方を知らない。
「じゃあ、行くぞ?」
シャトー(銛)とオーガ(狼)が見守る中、俺はそっと糸を水に入れた。
「............これで釣れなかったらどうする?」
「.......そんなこと、今日も肉になるだけだ。」
「りんご!」
リンゴは摂れる栄養が根本的に違うんだが。
すると、それまで全く動かなかった釣り竿がピクリと動いた。
「お、きたんじゃないか?」
「さかな!」
本当ににくるものなんだな。餌付けただけで。
「慎重に急いで揚げろよ!」
いや、矛盾してるんだが。
ただ言っていることは半分正しいので、急いで竿を引っ張り上げた。
「お!魚だ!」
「おおきいの!」
針金の先には、先程付けた餌用の魚よりも二回りほど大きい魚が食いついていた。
「....釣れるんだな。」
「リリス坊、バケツの中に入れないと!」
そうだったそうだった。
針から魚を外し、すぐにバケツに入れた。明らかに大きい魚だ。今までとは違う。
「大きいな~。これだけあればオーガも足りるんじゃないか?」
そうだな。
「じゃあ、後2匹....?いや、4匹ぐらい欲しいな。」
「餌の魚は足りるか?」
後....
「いや、他は全て餌にするにはもったいないぐらいの大きさだ。」
さっき使ったのはオーガが一番最初に捕った小さな魚だ。2匹目と3匹目はオーガも慣れたらしく、そこそこ大きな魚だった。
「え、じゃあ、どうする?」
こっちが聞きたいくらいだ。
「取り敢えず今日の分はあるから、後は素潜りでとってもいいんじゃないか?」
「オーガ、さかなとる!」
言うが早いか、オーガが水に飛び込んだ。あまり激しく動くと魚が驚いて逃げるぞ.......
「じゃあ、俺たちも頑張るか?」
シャトーが銛を振りながら俺に言った。そうだな無駄だとは思うが、垂らすだけ垂らしておこう。
「いや~結局これだけか~」
陽が沈む少し前、俺たちはバケツの中を覗き込んだ。あの後捕れたのは、オーガが頑張った4匹とシャトーでは役に立たないと踏んだ俺が投げた銛が偶然当たった1匹だった。
「え~つまり、最初の2匹と、餌を付けた1匹、それとこの5匹で.......」
「はち!」
シャトーの横で指折り数えたオーガが元気よく言った。
「8か.....」
持って2日だな。
「まあ、今日の分の食い扶持は確保したわけだし、いいんじゃないか?」
「さかな、たべる!」
ま、そう言う事にしていくか。
「じゃあ、城に帰って焼いて.....」
シャトーが言いかけたとき、突然ぽつりと水が降ってきた。驚いて上を見ると、空は雲に覆われ、ざあざあと雨が降り出した。
「あめ.......」
「突然だなあ............急いで帰るぞ。」
「分かった。......『追い風』。」
あまり魔法は使わない、と決めていたが、風邪をひいては元も子もない。魔法陣を展開し、風を起こした。
間もなく城に到着した俺たちは、城の屋根の下へ避難した。
報われない努力のほうが多いんですよ報われない努力のほうが