オルシア王国、ギルド館前広場にて。
「へ~、龍の森大規模討伐、か。」
「久しぶりじゃないか?大規模討伐。確か、前回は3か月前だったろ?沼地みたいな場所だったけか。」
オルシア王国のギルドの館の前に張り出された紙を見た二人の男が言った。一人は後ろに弓を背負い、もう一人はローブを纏い、マフラーで口元を隠している。
「龍の森って言えば、最近やたらとハンターがこぞって向かっては消息不明になってるんだろう?そいつらの捜索か。」
「あとは........新種のモンスターが発生したとかしてないとかで、それの解明も兼ねているんだろうな。」
二人は熟練のハンターらしく、冷静に分析した。
「なあ、龍の森って、確か、黒いドラゴンが住んでるんだろう?あの、何十年か前にこの国に襲来してきたっていう........」
二人の話を聞いていた新米のハンターが声をかけた。いかにもハンターらしい大剣を携え、近くには行動を共にしていると思しき数人の仲間がいた。
「ああ。よく知っているな。随分と前の話なんだが........」
「大規模討伐の時に聞いたんだ。今はもう全く聞かないけど。」
新人のハンターは褒められて嬉しかったのか、少し誇らしげに言った。
「そうだなあ。あの襲来以降、森の奥にあるという巣穴に戻って出てきていない。」
弓を背負ったハンターは壮年の頃を懐古した。空に覆いかぶさる大きな黒い龍。咆哮し炎を吐くその姿は、まさしく魔王の姿だった。
「そいつの調査も兼ねているとかいないとか、な。」
「そうなのか?そんなことはどこにも........」
新人のハンターは張り出された触書を隅から隅まで眺めた。先ほど熟練のハンターが言っていた2つの理由は書かれているが、ドラゴンの事などはどこにも書かれていない。首をひねるハンターに、ローブを纏ったハンターが笑った。
「そんな事、書くと思うか?一応勝利したことになってるんだ。」
「じゃあ、どうして........?」
「ここを見ろ。」
ローブを纏ったハンターが指さす先を見ると、討伐隊の隊長の名が書かれていた。
「ガルーン・コーブズ。例の襲来の時の防衛隊の隊長だった。」
「あの時はひどい負け戦だったな。」
もう一人のハンターも苦笑いした。
「え、じゃあ、もしそのドラゴンに遭遇したら........?」
「こっそりと、ということも、考えているのかもしれんなあ。」
2人のハンターはニヤリと笑った。
「どうする?この大規模討伐。参加するか?」
「!も、勿論だ。」
「そうか。では、私達もともに参ろう。始めたばかりだ。心もとないだろう?」
参加する。と言ったものの少し不安げな表情をしていた新人のハンターたちは、安堵の表情を浮かべた。
「では、申請してくるとしよう。」
「ああ。」
そう言って、ハンターたちは広場から姿を消した。
大規模討伐の準備は着々と進んでいる。