海と真実
「ここは...川........いや、河?」
しばらく歩いた先には、川と言うには広すぎる川が広がっていた。
「?川だぞ?」
いや、これは河だろ。百歩譲って三途の川並みの広さなんだが。
「まー水の流れが速いからなあ。結構広くなっちまったけどな!」
そうだな。ここは上流のはずなんだが、もう下流ぐらいの広さがあるな。
「下の方は言ったことが無いんだが、結構広くなってるんじゃないか?」
これもしかして、あれか?俺のいた国の国境にある海か?いや、海じゃないか。
「ああ、多分な。」
広すぎて「千里の海」って呼ばれてるんだが........
「じゃあ、その辺の岩にでも座って、魚を捕るか!あ、オーガはあんまり遠くまで行くなよー?」
「ちかく!」
あ、そうか。オーガは素潜り派か。で、シャトーは銛だったな。
「リリス坊はそれ、どうやって使うんだ?」
これか?これはだな、
「............まあ、垂らして使うんじゃないか?」
俺も詳しい事は知らない。多分、形状的に水に垂らして、魚がかかったら引く感じでいいと思うが。
「ほーん....」
そんな不思議そうな目(?)で見られても、俺も知らないんだ。
「釣りは俺も初めてなんだが........まあ、何とかなるだろう。」
「何とかならなかったらオレとオーガで何とかするから気にすんなよ!最悪魔術で何とかすればいいしな!」
分かった。じゃあ、気楽にやるからな。頼んだぞ。
「とれた!さかな!」
暫くしたのち、オーガが口に魚をくわえながらこちらへ戻ってきた。水を張ったシャトーが持ってきたバケツに、オーガがぽいっと中に入れた。
「これで3匹目だな。今のところどれも食べられそうだが........」
「さかな、いっぱい?」
そうだな。燻製やら日干しにすれば持つし、あればあるだけいいだろう。
ただ問題が1つある。
「や~、なかなか当たらんな。リリス坊はどうだ?」
「こっちも無理だ。全く食いつかない........」
今のところ戦力が素潜りのオーガのみという事だ。俺も含め、こちらはまるで戦力になっていない。俺は餌を付けていないところが問題なんだろうが、シャトーは何が問題なのか全く銛が当たらない。
「オレはまあ、技術的な問題として........リリス坊は何か餌を持ってこなかったのか?」
嫌だ。俺も虫やミミズは好きじゃない。できることなら触りたくない。
「いや、まあ、手ごろなものが無くてだな。」
「でもどうする?これじゃあ日がかげるまでに10匹吊れればいい方じゃないか?」
それはまずいな。10匹だったらオーガが一瞬で食べきってしまう。いや、でも、ミミズは触りたくない。絶対に嫌だ。
「そもそも魚って何を食べるんだ?水?石?」
だと嬉しいんだがな。
そのうちミミズにたどり着きやしないかと様子を窺っていると、オーガが何かを思いついたらしく、ぽん、と手を打った。
「さかな!」
「ん?」
「どうしたオーガ?」
「さかな、さかなたべる!」
さかな、さかな........?
「なるほどなオーガ!そう言う事か!」
流石な保護者は分かったらしく、銛をブンブンと振り回した。危ない、危ないから。
「魚を釣るために魚を餌にするってことか!」
なるほど、そう言う事か。
よかった。俺が想像していた正解にたどり着かなくて。